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「ねえ、ユヅくん。あなたが好きです」
俺と幼馴染の、十七回を数えた誕生日のこと。
参加していた祭りのイベントで天体望遠鏡を覗き込み〝こと座のベガ〟を瞳に捉えたタイミングで、頭上からそんな声が降ってきた。
世界を明るく色づけていくようなその美しい言葉は、よく知ってる千惺の色を纏っていて。
不意に顔を上げると、その先には耳まで真っ赤にした美しい女の子の姿が一つ。
「もう一度、言いますね」
同じ年の同じ日に、親友同士である両親の元に命を授かり、隣の家に住み、友人より親しく、兄妹より近くで育ってきた俺たちは、どんな時だって一緒にいたし、互いの性別を意識する頃には当然のように惹かれ合っていた。
俺も千惺も、お互い以外は誰も見えていなかった。
あとはどちらかが一歩を踏み出すだけという状況で、先に勇気を振り絞ったのは千惺の方。
「ユヅくんのことが世界で一番好きなんです。私と付き合ってくれませんか?」
今日まで、こいつのいろんな表情を数えきれないくらいたくさん見てきたんだ。
だけど、これほど強い決意を秘めて揺れている千惺の瞳は初めてだった。
驚きで言葉を失っていると、それを拒絶と勘違いしたのか、彼女の顔がくしゃっと歪む。
慌てて手を伸ばし、その柔らかな頰に触れた。
紅潮している肌は強い熱を持ち、触れた先から火傷してしまいそうなほど熱い。
あるいは、俺の指が熱いのか。
きっと、それは俺たちがお互いを想う気持ちの強さにとてもよく似ている。
「──駄目でしょうか?」
消え入りそうな声に愛しさが溢れ、抱きしめたくなる衝動を必死に耐えた。
「駄目だな」
「え?」
「だって、そのセリフは俺から言いたかった」
「それじゃあ」
「俺も千惺のことが好きだ。俺と付き合ってくれるか?」
尋ねると、世界で一番幸せな女の子みたいな顔をした千惺は強く頷いてくれたんだ。
もちろん、「はい」と。
こうして、俺と千惺は彼氏彼女になった、はずだった。
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私が幼馴染の東雲結弦くんに告白しようと決意したのは、十七回目の誕生日のこと。
その夜は、毎年恒例の〝星逢祭り〟でした。
日本でも有数の巨大な公開天文台があるこの町では、七夕の夜に町をあげた大きなお祭りが開催されているのです。
私は、そのお祭りが大好きでした。
普段なら夜に沈んでいるはずの時間でも星が落ちてきたみたいに町はキラキラしていますし、誰もが楽しそうですし、いつもより遅くまでユヅくんと一緒にいても