プロローグ 無能者のモノローグ ②
「僕も大きくなったら、ラディアータみたいな
……という、
ラディアータは、ぽかんとした顔で俺を見ていた。
もちろんスタッフが、それで止まってくれるはずもなく。
ズルズルと引きずられていき、ラディアータが遠ざかっていく。
おそらく俺は『ラディアータと出会えた』という人生で一番の幸運を、そんな感じで使い切ってしまった。
……そんな風に、笑い話の一つになるはずだったのだ。
『……子どもっていうのはすごいね。本当に
ラディアータが
コーチの女性が、不思議そうに声をかける。
『ラディ? どうしたの?』
『ああ、いや。その子を放して』
スタッフたちは
ラディアータは俺の前に立つと、
そして寒々しいほどの美しい顔で問うた。
『私に勝つの? きみが?』
「…………」
俺は完全に固まっていた。
その美しい顔を、直立不動で、じっと見つめる。
『その小さな手で、私を
「……っ!」
俺は必死に、首をブンブンと縦に
何を言われているのかなんて関係なかった。
ただ俺に話しかけているという事実だけで十分だった。
『……じゃあ、私はここで
ラディアータが俺の手を
彼女の手は
手のひらの
それはまるで、
『いいよ。今日から私たちは
ラディアータは、俺の知らない国の言葉で確かにこう言った。
『それまで、私は頂きで待ってる。──〝
俺の
その背中はとても
ラディアータは宣言通り、歴史的な逆転劇により最強の座を
そして史上最年少で頂きへと
──それが6年前のことだ。
俺は約束通り、強い
しかし約束が果たされることはなかった。
俺は
そしてラディアータは──今年、
約束は果たされずとも、まだ物語には続きがある。
これは世界でただ一人、
そして届かぬはずの彼女と