Ⅰ 阿頼耶識 ②
だが、この仕込み刀を見たのは初めてのことだった。
その仕込み刀を
ドームの大型ディスプレイに、ラディアータのアイコンが表示される。
ファンの
テレビ
ラディアータ・ウィッシュ。
この
これからも彼女の伝説は続くものと、
……この世界グランプリの一週間後。
別府駅で降り、観光案内板を見上げていた。
「おおっ……」
町の地図に、所せましと並ぶ温泉マークの数々。
この男、大の温泉好きである。
せっかく温泉街にきたのだし、少しくらい遊んで帰りたかった。
(入学試験が終わって、時間あるかな……)
日帰りではあるが、ちょっと事情があって門限を考えなくていい。
最悪、終電に乗れればオーケーだ。
そう思いながら、入学試験の予定表を開いた。
(入試会場は、バスで30分か……イケそうだな……)
予定表を閉じると、バス停へと向かった。
指定された直通バスは、ぎゅうぎゅう
これに乗る学生たちの制服はバラバラだった。
自分と同じ目的なのだろう。
町中から、温泉の白い湯気が上がっている。
かすかに開いた窓から、
大分県・別府。
温泉の町として長い歴史を持つ。
しかし今は、もう一つ町
「あっ」
受験生の一人が声を上げた。
それを合図に、受験生たちは一斉に同じ方向を見る。
別府の山々を切り開いて建設された、
『
縮めて
そりゃ
その学園前の停留所でバスが
ぞろぞろと受験生が降りていく。
目の前で見上げると、いよいよ学園というよりは
(……よし。行こう)
現代の日本国には、この手の教育機関が三つある。
北海道と、長野。
そして、この大分・別府。
基本的に同じ国営だが、それぞれが独自の教育方針を取っているために校風はかなり
その
『
いやいや学力試験だってありますよ、品性みたいなのも面接で重視しますよ、みたいな言い訳をされても、それらは結局のところ飾りであるというのがもっぱらの
何せこの学園の存在意義はソレなのだから。
まず教室ごとに説明を受けて、
体育館……というよりは、スポーツ用のドームに近い。
観客席があるので、何かしらイベントなどでも使用されるのだろう。
正方形のステージの上で、
形式は、1対1の一本勝負。
負けたから失格ということはなく、自身の『
現代では、これのおかげで
他の受験生に交ざって、待機の列に並ぶ。
試験が始まるのを待ちつつ、
(……俺にとって、最初で最後の聖剣演武だ。絶対に勝つ)
やがて
「受験番号036。出なさい」
番号を呼ばれ、ステージに上がる。
そして相手は──。
「受験番号147。出なさい」
ゆっくりとステージに上がったのは、赤髪の少年であった。
目つきが
やや
その対戦相手を指してヒソヒソ話すものがいる。
「おい……」
「あいつ……」
もしかして有名人なのだろうか。
……と、その赤髪の少年が話しかけてきた。
「よう。やる気満々じゃん」
「…………」
赤髪の少年は「あーあー」と
「おいおい、仲良くしようぜ? もしかしたら同級生になるかもしれねえんだからよ」
「俺はそのつもりはない」
「はあ? てめえ、受かる気ねえのか?」
「…………」
あるいは急に話しかけてきたのは、こちらを油断させるためか?
そう考え、
赤髪の少年は「まあいいや」と笑った。
そして再び、言葉を投げてくる。
「てめえ、ラディアータのことをどう思う?」
「……どうしてそんなことを聞く?」
なぜここでラディアータの名前が出るのか、わからなかった。
赤髪の少年……一見、
彼は大げさに
「そりゃ、てめえが
「どういう意味だ?」
「オレ様と当たった以上、負けるのは決まってる。もし同志なら、てめえが
「大層な自信だな……」
その申し出には興味ないが、ラディアータの名前を出されては返事をしないわけにはいかない。
「ラディアータは尊敬してる。俺の目標だった」
「…………」
「どいつもこいつも、ラディ、ラディか。あの目立ちたがり女に
「……おまえはラディアータのファンじゃないのか?」
赤髪の少年はニッと笑った。
「バカじゃねえの?
「負ける? ラディアータが?」
赤髪の少年は高笑いを上げた。