第一章 ④
「おはようございます」
「おはよう、ルチカちゃん」
何気なく
「いよいよ試験だね。自信はどーお?」
「筆記は自信があります。ただ、実技が……」
「なんで? こないだの
「それだけこの試験のレベルが高い、ということなんだよ」
「そういうことです。例えばほら、あそこにいる赤毛の
そう言ってレオニーが指さした先には、ウェービーな赤いロングヘアをした女の子が一人。立ち方だけで分かる。あの子は相当な使い手だ。
「あの子は?」
「ダニタ=ブラックバーンさんだよ。私やレオニーちゃんと同じく、勇者一行の
「あのレベルの方が受験するのが、この勇者学校の入学試験です。生半可な実力では通過出来ません」
レオニーが言うからには、相当に難しい試験なんだろう。でも、だからって
「ふーん? でも、一番強い勇者になるのはボクだし」
空元気じゃない。強がりでもない。決意のつもりでボクはそう言った。
「へーぇ? 大した自信だなぁ、おい」
ボクの言葉は赤毛の
「お前みたいなちんちくりんが勇者を目指すって? おい、レオニー。コイツに言ってやれよ。ここは子どもの遊び場じゃねえってな」
「ダニタ……」
「子ども
確かにボクとダニタが並んだら、大人と子どもくらい差があるけどさあ!
「体格だって才能の内だろ? オレは小さい
「そうそう。大体、アンタ
ダニタだけでなく、取り巻きらしき子までがボクを馬鹿にしてくる。
「言ってなよ。どう言われようと、ボクは必ず最強の勇者になるんだから」
「……ほざいたなチビ。ざっと見た限り、お前もまあまあやるみたいだが……。試験の前にいっちょ現実を思い知らせてやろうか?」
「やっちゃえ、ダニタさん!」
「ちょっと、やめてください、二人とも!」
ボクらがにらみ合いを始めると、取り巻きちゃんは
「
「お前がな」
ボクとダニタの間に
「
その空気を冷ますように、試験開始の声が
「命拾いしたな、お前」
「キミこそ」
捨て
「ルチカ、あなたねぇ……」
「ダニタさん相手にケンカを売るなんて……」
「売ってきたのはあっちだよ。ボクは売られたら買うだけ」
とはいえ、試験の前に余計な体力を使わずに済んだのは良かった。
「さあ、試験
「……脳天気でいいですね、ルチカは」
「あ、あははは……」
◆◇◆◇◆
(レオニー視点)
筆記試験を終えて講義室を出ました。ノールと食事をとろうと思いながら辺りを歩いていると、中庭でルチカとノールを見つけました。
「お
「お
「お
ノールはいつもと変わらない様子ですが、ルチカはなんだかげっそりした顔でノールに
「その様子だと、ノールは筆記、
「うん。レオニーちゃんも?」
「はい」
「そっか。でも、ルチカちゃんは……」
「無理……文字の海に
目を回しているルチカを見ると、どうやら筆記試験に苦戦したようです。第一印象から座学とは
「しっかりしてください、ルチカ。最強の勇者になるのでしょう?」
「うん……。でも、ボク足切りに
「そんなに難しかったかなあ……?」
「ノールの無自覚な優等生発言が
「あ。ごめん」
ノールは
「いつの間にルチカとそんなに仲良くなったんです、ノール?」
「え?」
「およ? レオニーってばジェラシー?」
「
何だかノールを取られたような気は少ししますけれど、ルチカの言い方には悪意がありすぎます。
「あっははは! ざまあねぇな、最強の勇者さんよ」
「ホントですね!」
「ダニタ……」
完全に意気
「うるさいよ、ダニタ。あっち行って」
「へいへい。こっちもお前なんかにゃ用はねぇよ。じゃあな、落ちこぼれ。おい、行くぞ」
「あ、待ってくださいよ、ダニタさん!」
そんな捨て
「何しに来たんだよ、アイツ……」
「
「そんないいものじゃなかったと思うけど……」
まあ、本当に彼女がルチカのことを
「落ち
「ほ、ほら、ルチカちゃん。起きて?」
「うーん……もうちょっと……」
「起きなさい」
「あだっ!? レオニーは厳しいなあ」
「
やれやれ、などと言いながら
勇者学校の入り口にある
私たち三人も人混みをかきわけて、結果の
(……良かった。受かっていました)
自信がなかったと言うと
「あ、良かった。受かってる……」
「ノールも受かったんですね。おめでとうございます」
「ありがとう。レオニーちゃんも受かったみたいだね。おめでとう」
ノールと
問題は──。
「……」
「ルチカ?」
「見たくない。
ルチカは両目を手で
「レオニー、代わりに見て」