一 勇者 ④

 ちっ、とアズマは分かりやすく舌打ちをした。カグヤもいらついた顔でそっぽを向く。

 分かり合えない。この短時間のやり取りで、互いにそれを悟った。カグヤはアズマ達の過激な考えを理解できないし、アズマはカグヤの考えを理解できない。


「そうだな、貴女あなたと今言い争っても仕方がない。全くの時間の無駄だ──」


 冷徹な少年は、身の内の沸騰を表に出す前にとその場を去ろうとした。


「だがいいか、次に会う時は上司と部下だ。今日の発言、せいぜい後悔するんだな」

「へー白昼堂々パワハラですか? 貴方あなたこそ、人事局からのお達しが来るのを楽しみにしていてくださいね?」

人事局ひとを当てにしないと何も言えないのか? 言いたいことがあるなら直接言えばいいだろう」


 あのねー、とサクラが頭を抱えた。


「子供じゃないんだから君達」

「それはあっちのけんに言ってくれ」


 そのまま去っていこうとするアズマを「待ってください」とカグヤは引き留める。


「お名前を伺っていません」

「戦闘兵科特別編成小隊『カローン』隊長アズマ・ユーリ。階級は大尉だ」


 心底面倒そうに伝えた後、アズマは口だけでわらう。


「どうせ短い間だろうが、よろしくな。シノハラ・カグヤ技術中尉」