プロローグ ③
「!?」
バッ! と、高速でスカートの前を押さえる
彼女の顔は、耳先まで真っ赤っかだ。
わたしたちが子供の頃には、わりとよく見た表情。
大きくなってからは、まったく見なくなった表情。
いつもなら、
どうしてだろう? ……いまのわたしが女だから?
「その姿で……破廉恥なことを言わないでください」
抗議してくる──だけ。
顧みてみれば……今朝の
さっきからずっと椅子に座ったまま、まったく動こうとしないのも謎だ。
うかつに立てない理由がある?
さっき
というか、もしやこいつ……女の子には優しいの?
つらつらと気になる項目が脳裏を流れる。
「ああ、もう」
手に取ってみると、ジャージだった。部屋着として、
「それを着てください。中身が最低の愚かものとはいえ……年頃の女性を、いつまでもそんな姿で居させるわけにはいきませんから」
腹が立つほどカッコいい。
女性として扱われてみて、はじめて、妹がモテる理由を実感できた気がする。
「……ありがとう、
顔全体が熱い。はじめての感覚だった。わたしは奇妙な
「じゃあ……お言葉に甘えて」
わたしは、ぶかぶかの寝間着を脱ぎ捨てた。
瞬間、
「なっ──」
驚くべき事態が発生した。
「ななな、なんでここで脱ぐんですか!?」
あの
「な、なんでって……」
わたしはあまりの衝撃に、ぽかんとしてしまう。
「……着替えるために?」
「自分の部屋で着替えてください……!」
「美少女になった自分のはだかを、大きな鏡でじっくり見たいんだけど」
「へ、変態!」
立ち上がった
「出ていってください! いますぐ私の前から消えてください!」
涙目になって、わたしを扉に向かって、グイグイ押してくる。
「ちょ、ちょ、ちょっと……!」
わたしは困惑しきりで、されるがままに────
「「あっ」」
一目で。
わたしたちは、すべてを察した。
いまやわたしも、
「ぁっ……ぁっ……ぁぁ…………」
きっとわたしも、同じような顔で、同じような声を漏らしている。
「……ぅ……ぅ……ぅぅぅ~…………」
視線の先は、制服姿の
妹のスカート、その前部分が、
見たこともないほどに、大きく盛り上がっていた。
わたしは一瞬、ひゅ、と息を
「「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」」
わたしたちにとって、余程のことが続く日々。
その始まりだった。