1章 ③
それから。
幼く愛らしい容貌ではあるものの、仕事姿からは、デキる女性のオーラがゆらめいている。
「よし。
「…………………………」
「ンン? なぁ、いまさら気づいたんだが……
「……な、なんですか?」
「女から男になったはずなのに、ぜんぜん姿が変わってなくない?」
「…………………………………………」
「実験が失敗していた……性転換が起こっていない……のか? いや……『元の姿に戻せ』とわめいていたしなぁ。だとすると……」
ムムム、と、考え込んでいた姉さんは、ぽんと手を
「元から中性的な見てくれだったから、男になっても変わらんってコト?」
「違います!」
「じゃあなんだよ」
「…………………………」
言い
「ほほう、そんなに言いよどむような状況……なんだか面白そうじゃないか!」
「……明らかに妹の不幸を喜んでいますよね?」
「想定外の結果というのは、ワタシにとって宝箱のようなものだからな。──で?
「……か、下半身に……」
「どのあたりだ? もっと具体的に、でかい声で言ってくれ」
「……ぅぅ」
言えるわけもない。
すまん
口元をふにゃふにゃ波打たせていた
「ここ!」
「えっ?」
「ちんちんが生えちゃったのっ!」
「……そんなえっちな単語を大声で言うなよ」
「くぅ……っ!」
今日だけで
クールな末妹からの意外な発言に、頰を染めつつ、からかっていた
すぐに調子を取り戻すや、
「なる、ほど、な──」
でもって心底
「ふはっ、一部分だけの性転換とは、興味深い結果じゃあないか! やはり実験体におまえを選んで大正解だったようだ!」
「姉さんを喜ばせるためになったわけじゃありません──一刻も早く戻してください!」
「わかっているとも。だが、検査だけはさせてもらうぞ。ワタシの研究欲を満たすため──」
「──もとい、
そういうことになった。
わたしは部屋を出て、
「ふっふっふっふっ…………では、さっそく患部を見せてもらおうか!」
「おいおい、なにを恥ずかしがっているんだ
「………………」
「ン? ワタシか? いまさらこの程度のコトで動揺するわけないだろう──ふっ、大人の女性だからなっ! だいたい男のチンチンなんぞ見慣れている。
むちゃくちゃ聞き捨てならない話をしているな。
どうやら後で
聞き取れない
それがしばし続き、やがて。
「よし……ようやく覚悟を決めたようだな。……だからなんなんだその警告は……まるでワタシがこれから慌てふためくかのように……意味がわからん。大丈夫だと言っているだろう。いいから早く出せ──────エッ?」
一瞬の静寂の後、
「みぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
案の定、
中でなにがあったのかなんて、察するまでもなかった。