2章 ③
騒動が収まったのは、それから十分後のことだ。
最終的に、怒れる怪物を
「おっ、今度こそ消えた?」
「……はい。……その、よう、ですね……」
なんともシンプルだが……冷やすことで、
ううむ、不思議だ……本当に、ちいさくなると消えるらしい。
消える瞬間とか、どうなってんだろうコレ……?
見せてくれとも言えないし……。聞いたら怒るだろうし……。
「ふぅ……さ、最初から……こうしておけば……」
疲れ切った吐息を漏らす
「ン、ともあれ……ひとまずの対処法がわかったわけだ」
一歩前進だな、と、
「なにか冷やすものを携帯すれば、問題なく学校にも通えるだろう。まぁ、気を付けることは多そうだがな」
「そう、です、ね……そこは、安心しました」
「日中、ワタシはここにいる。なにかあったら来ればいい。念のため、着替えもここでするように。怪しまれないよう適当に理由を作っておくから。トイレもそこにある」
「はい……って……もしかして……
「そりゃ、女子と一緒に着替えさせるわけにはいかんだろ」
ときおり正気に戻るんだよな、この人。
勝手に家族の性別を変えておいて、急にまともなことを言われても反応に困る。
「わ、私と一緒に……着替えることになるじゃないですか!」
「別にいいじゃないか、きょうだいなんだし」
「まったくよくありません! 大嫌いな人と同じ部屋で着替えるなんて──」
そこで、はっ! とした
「私には、大っ嫌いな人がたくさんいますから!」
「……お、おう」
謎の宣言すぎる。
「だいたいですね、
わたしが深く考えるのを防ぐかのように、
「なんでブラジャーを付けていないんですか!」
「持ってないから」
「クッ……!」
完全なる答えを返された
一方、わたしはいたって冷静に、
「足りないものは今日中になんとかすれば、明日からは大丈夫だろう」
「……………………」
なにか言いたげに目を細める
わたしはニヤリと笑みを浮かべ、
「新入生代表の挨拶もバッチリ決めたし──うん、女子高生一日目としては、上出来だったな! フッ、さすがわたし」
「……そ……そ……」
「そ?」
「そんなわけがありますか! あんな破廉恥な姿で壇上に……!」
「い、いやいや……ボタンが外れたのは想定外のトラブルだったし……」
「ブラ付けてないの、全校生徒が気付いてましたからね!」
「……遠くから見られただけだからセーフ?」
「完全にアウトですっ! 体育館のモニターにしっかりアップで映っていました! ノーブラで演説するバカ女だと思われましたよ、きっと!」
アウトかあ……。そういやあったね、大きなモニターが。
「過ぎたことはしょうがないな。切り替えていこう」
「だからそういうところが嫌いだと……ふん……まぁ、
そっぽを向いて帰り支度を始める
そこに
「
「なんですか?」
「
「な……」
ものすごく嫌そうにわたしを見る
そんな妹に、わたしは手を合わせて、
「よろしく頼む!」
「……はぁ。わかりました。一緒に、女性として暮らすにあたって必要なものを準備しましょう」
「同級生の女の子を、二度と……今日のような格好で登校させるわけにはいきませんから」
何年ぶりかわからない、奇妙な状況だった。