こちら、終末停滞委員会。2
第1話『転校生、登場!』 ①
俺──
場所はネパール東北部ソル・クンプ郡の、シェルパ(放牧地)に近いとある森。
時間は夜。
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【No.2326『大工のきつつきさん』】──Stage3:『
○性質──
○詳細──アジアヒメキツツキ(キツツキ目キツツキ科)に類似した反現実性の生物。解剖学的には一切の異常を持たないが、高さ3m以上の樹木を
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というわけで俺は一
そのキツツキは中々居心地が良さそうに、俺の
(これが、ライトノベルの主人公になりたかった男の末路かよ?)
俺の人生はこうして終わって──卵からは、
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「ぷはっ」
ででーん! 『任務失敗』の文字が眼前に現れて、俺は息を吹き返す。
「ぎゃあ! 俺の
「どうどう、落ち着いて下さい。
神経拡張ケーブルを脊髄から抜いてくれたのは、メフだった。
「メフ! ああ、良かった! お、俺! 俺の
「
隣ではメフの兄──テル先輩が撮影しながらため息を
「
俺は全身を襲う恐怖と痛みにガクガクと震えていた。
「い、いやだいやだいやだいやだ俺は家じゃない家じゃない家じゃない。あががががががが」
「兄さん。やりかねんというか、もうやっています」
メフの言葉に、テル先輩は、つまらなさそうに
「仕方がない。記憶処理剤を」
メフは、トリガーの付いた注射器を俺の首に当てた。
「はっ。俺は今まで何を?」
俺は気がつけば、真っ白な室内に居た。ここはテル先輩の研究室だろう。
「落ち着いて聞いてください。
「……それって事前に許可取ったの?」
「いいえ。それよりこれ後遺症予防のお薬です。毎晩、眠る前に飲んで下さい」
錠剤の入った袋を7日分渡された。
「また、随分気軽に非人道的過ぎる事してませんか!?」
「一応、先に俺様がシミュレーターを試したんだがなあ」
「兄さんは自己同一性の崩壊に対する耐性が高いですからね」
メフが普通のことのように言う。いや、まず同意も取っていないのに人の記憶を消すな。
「要調整だな。とりあえず、これで
「この三時間で一体何が……──任務完了?」
困惑する俺に、テル先輩は一枚のセキュリティ・カードを投げて寄越した。
「これで貴様も『一枚羽』だよ。──入学おめでとう。ようこそ、
金属製のカードには、不器用な笑みの俺の顔写真と、純白の羽が刻まれていた。
■
樹木騎士団は、
多くの危険な反現実を扱う
(それなのに、全く!)
樹木騎士団の騎士見習い──ファム・ティ・ランは憤然としていた。
1年F組の騒がしい教室で、きっちりと教科書と筆記用具を机の上で準備しながら、背筋を伸ばして
(人倫協会に何度注意勧告を受けるつもりなの、この学園は!)
(もっと終末の管理は厳重化すべきなのに!)
問題が起こる度に、樹木騎士団が呼び出される。その結果、ランはもう48時間もまともに睡眠を取っていない。まあ、
「朝のHRを始めるぞ。席につけー」
1年F組の教師──
「ふわぁー……朝も早よから元気だね、若者たち。おじさんには
白髪交じりのボサついた長髪の教師のコートは、今日も随分と
「はい本日の報告ね。皆さんそれなりに盛り上がって下さい。えー、今日はこのクラスに転入生がやってきました。テンション上げてけー?」
突然の報告に、教室内は
(転入? この時期に?)
季節は6月。1年生である彼らの多くは、4月に中等部から入学してきたばかりだ。転入の時期ではない。真っ白のドアが、ガラガラと開く。
入ってきたのは、傷だらけの少年だった。
「──
それは少し前に第12地区の新聞を
(あ、あれは終末の──)
「──並びに、この子の従者やってます。Lunaです。ご主人ちゃん共々よろー」
バチバチにピアスを開けたジャージメイド服のダウナーお姉さんが、へらっと笑う。
(随分キャラの濃いのが入ってきたなあ)
教室の生徒たちは、心を1つにするのだった。
■
(俺のよく知る、国語とか数学とか歴史・物理・化学なんて授業は無い)
『研究科』にはそういう授業もあるらしい。でも俺が入学した『地上科』はそうじゃない。
(代わりにあるのは、『反現実基礎』『戦闘基礎』『銃痕』『教養』『終末事例』など。地上での実働部隊として必要な知識の授業だ。報告書の書き方なども教えてくれるらしい)
学校と言うより、専門学校に近いかも?
(久しぶりの学校! 俺の夢!
手が震えていた。俺はそれを隠しながら、文房具を取り出す。
「はい、それでは1時限目。『銃痕』の座学を始めるぞー」
田中教諭が教科書を開く。
(どちらにしても、また教室の机に座れるなんて! 感動~~!)
チョークで汚れた黒板! 鉛筆! 真新しい教科書の匂い! 普通の学生みたいだ! 少し前までメキシコの薄暗い地下室に幽閉されていた身としては、感無量すぎる。
「な、なんか転校生、号泣してるんだけど……」
「怖ぁ~~」