こちら、終末停滞委員会。2
第2話『noapusa』 ①
その夜、俺は夢を見たんだ。
(ああ、どこだろう。この
ジメジメしていて、歩くたびに足がぐちょりと
「ぐすんっ。ひぐっ」
──大きな真っ白な翼の球体が、泣いていた。
(あれは、なに?)
声を出そうとしたが、音にはならない。
「あなたは」
翼が大きく震えて、左右に開く。
白い翼の中に居たのは、小さなアルビノの少女だ。
「あなたは、わたしが、みえるの?」
(見えるよ。どうして? 君は誰?)
「そう。
真っ白な少女は大きな翼で、俺の頰に触れた。
「信じて。あなたが生まれてきた事は、けっして悲劇ではないという事」
少女は真っ青な目を俺に向けた。俺はその祈りじみた言葉を聞くと、悲しくなった。
(俺、いつかまたここに来るよ)
「だめだよ」
(必ず! また、会いに──)
彼女に手を伸ばした瞬間だった。俺は、目を開いていた。
「はあっ、はあっ、はあっ」
気がつけば、見知った寮の自分の寝床だった。俺は汗だくで、少し泣いていた。
(なんだ。いまの。ゆめ?)
それにしては、悲しすぎた。
「……え?」
俺は、何かを握っていた。それは小さな銃だった。
「これは……俺の銃痕?」
「のあぷさ。……これが、俺の心の形」
☆
私──
「ふふ、了解ですわ? こっち来たらまた連絡してね。うん。はーい、またねー」
ARディスプレイを操作すると、通話を終えました。
「なに? 誰なん?」
隣に座るマギナ・アヴラム先輩が眺めていたのは、第6地区のギラギラとしたネオンの光。色とりどりの光が夜闇を切り裂いて、空に
「こっとんですわ。
「……レア。マジであいつと仲良くなってへん? いや、えーけど。よー通話しとらん?」
こっとん──
「楽しみですわ~♪ 天空競技祭っ! 久々にこっとんに会えるし!」
三大学園の祭典・天空競技祭。その今年の開催学園は第6地区のCorporationsです。
ここ、第6地区は都会的で、天を
「楽しんでばっかもおられんて。ただでさえ、
「私達二人は『臓物マンション』の一件のせいで叱られて肩身狭いですものねえ」
前回、『
「はん。執行部のアホども! ほんっと融通が利かへん連中」
マギナ先輩はぷりぷりと怒っていますけれど、これでもかなりの温情を頂いた方です。一ヶ月の謹慎と、ちょっとした減俸。天空競技祭の警備を手伝いにCorporationsに出向すること。
「でも私は結構ワクワクですわ。第6地区に来れるなんて、旅行気分ですし。知ってます? 先輩。今日から泊まるホテル、有名なカジノに近いそうですわ!」
「はあ……何が楽しくて、
合理主義のCorporationsは──『
官僚主義のカウス・インスティトゥートは──『
成果主義の
……なんて言って、お互いを
「しかし、本当に
窓から見える高いビル群はとても鮮やかで、美しい。Corporationsは多くの学園企業達によって作られた学園企業連合。資本の競争が苛烈で、三大学園の中で最も栄えているのです。
「おっと。ついたみたいやよー」
『お待ちしておりましたー♪』
大きなエントランスの前に立っていたのは、水色の長い髪をヒラヒラと漂わせる、宝石じみた瞳をした女の子でした。彼女はホログラムのように透けていて、私はぎょっとしてしまう。
『私はCorporationsの生徒会長、アメリア・マクビールだよ♡
生徒会長、アメリア・マクビール!? Corporationsで最も重要な人物です。私は少し驚きながらも、淑女なので華麗にご挨拶をしました。
「ごきげんよう、アメリア会長。初めまして」
『あっはっは。そんな全然
(……そういえば)
ここに来る前、カウス・インスティトゥートで開かれたオリエンテーションで説明された、アメリア会長の『
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【
『遍在する』片羽。
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『私は、この街に無限に存在しているんだよ♪』
死してなお愛した街を
『他の子たちはもう来てるよ。お二人様、ご案内~♪』
ふわふわと浮きながら歩く幽霊生徒会長の後ろを、私達は続くのでした。
私達が集められたのは、この学園の64階にある、パーティ会場の広い部屋でした。
『お嬢様方、飲み物をどうぞ!』
なんて言ってグラスをくれたのは、アメリア生徒会長。とは言え先程私達を出迎えてくれた彼女ではなく、
『新しい料理持ってきたよー♡』
『落とし物をしたお客様はいませんかー♡』
会場の中では、沢山の(違う衣装の!)アメリア生徒会長が忙しそうに
「──ふむ。これで
物々しい制服を着た、美しい
「改めて諸君、お会い出来て光栄の極みだよ。私はCorporationsの企業警備隊・隊長。──ケイトリン・アン・オースティンだ。今回の天空競技祭では警備委員会の首長を務める」
今回私達がお呼ばれしたのは、三学園の『学園内警察』の顔合わせです。
天空競技祭中の警備などは主にCorporationsが務めるのですが、カウス・インスティトゥートと