俺の幼馴染がデッッッッかくなりすぎた 1

2‐6.筋トレと家族

 りりさの筋トレのために、りりさの家に誘われてしまった。

 もちろん、子どものころはしょっちゅう、互いの家に遊びに行ったりしていたが――高校生になって、異性の家に行くのはさすがに。

 いや、だけどただの筋トレだし――筋トレで異性のとこに行くって、逆にどういうことだよ。


「ひ、一人でがんばれよ……」

「むーりー! モチベたもてない~! 3回で嫌になる~!」

「わがままだな……」


 そういえば、子どものころ、急用があってプールに行けなくなった日があった。その時もりりさは随分ごねていたっけ。

 基本的には、寂しがりで、わがままで、ちょっと構ってほしい気持ちが強いのだ。一部分がデカくなっても、本質は全然変わってない。


「わかったわかった……」

「よろしい! そんじゃ今日の放課後、ウチに集合ね! 私がしっかりしごいてあげるから!」

「お前のトレーニングなんだよな……?」


 なんで俺がしごかれる前提なんだよ。

 とはいえ、りりさに筋トレが必須なのは事実である。若いうちからしっかり筋肉をつけて体を維持しないと、りりさの胸は支えられない。

 ここは、俺がアドバイスしてやるのもいいかもしれない。中学の時、先輩たちに散々筋トレさせられたからな。


(……まあ、友達の家に、勉強しにいくようなもんか)


 俺はそう考えることにした。

 ――あんまり深く考えると、異性の家ということを意識してしまいそうになる。あくまで幼馴染なのだ。

 りりさだって――胸は女性的すぎるが――中身は子どものころのまま。

 ガキのころにちょっと戻ったつもりで、遊びに行くのも悪くない。俺は半ば無理やり、自分にそう言い聞かせるのだった。


 りりさの家は、子どものときと変わっていない。

 我が家よりもかなり駅から遠い場所にある一軒家。


「お邪魔します」


 俺はスポーツウェアに着替えてから、りりさの家に向かった。

 出迎えてくれたのは――。


「あらぁ~。トウジ君、久しぶり! すっごく大きくなっちゃって!」


 りりさの母、璃々栖さんである。


「どうも、おば――璃々栖さん、ご無沙汰しています」


 俺は律儀に頭を下げる。

 この人はおばさんとか呼ばれるのが嫌いで、名前で呼んで欲しがるのだ。


「ウチの夫よりも大きくなったんじゃない? 筋肉もすごい! やっぱり若いと変わってくのね」


 俺の肩に触れながら、璃々栖さんが笑う。


「ええ、まあ。水泳部なんで」

「私は全然変わらないから、うらやましいわ」


 璃々栖さんはそう言うが、俺からすれば璃々栖さんのほうが異様である。なにしろ子どものころと外見がほとんど変わっていない。

 二十代でも通用しそうな外見と、そしてエプロンを押し上げる豊満な胸。若い頃はグラビアアイドルだったと聞いた。美貌はその時のまま維持されている。

 友人の母の胸に目がいくのはよろしくないのだが――璃々栖さんの遺伝子が、より強固になってりりさに継承されているのがわかる。


「……あの子のボディガードになったんですって?」


 璃々栖さんが顔を近づけて、真剣な声で聞いてくる。


「ええ、はい、そういうことに」

「ごめんなさいね。あの子、成長してからどんどん生活が大変になって……でもトウジくんなら安心。どうか、りりさをお願いね」

「……わかりました。がんばります」


 璃々栖さんには、子どものとき、散々世話になった。何度この家で夕食を食べたことか。

そんな璃々栖さんから直々にお願いされては、否とは言えない。


「あ、これ、ウチの母親から。肉じゃがらしいっす」

「あらまあ。トウジくんのお母さんのご飯、美味しいから……ありがとう! 今度なにかお礼するわね!」

「いや、そんな、大丈夫っすよ」


 子どものころは、ウチの母親と璃々栖さんがしょっちゅう長話してた。

 俺とりりさは退屈だったので、そこらで一緒に遊んでいたっけ。

 しばらく疎遠になっていたが、もしかしたらこれを機会に、手代木家と美濃家の交流も復活するのかもしれない。


「りりさー! トウジくん来たわよー!」

「ええっ、ちょ、はやいはやい!」


 階段の奥から、慌てたような声が響いた。

 りりさの部屋は、二階の一番奥の部屋。それは変わっていないらしい。


「ちょっと待って着替えてるからっ!」


 デカい声で言うな。


「あらら、少し待っててね……大変な娘でしょうけど、どうかよろしくね」

「まあ、その――慣れてるんで」


 りりさの性格はよくわかってる。

 ポジティブで、前向きで、だけどちょっとドジで脇が甘い。それでも目指すものは絶対にあきらめない。そんな女の子。

 りりさがそんなだから、俺も手伝いたくなるのだ。


「いいよーっ!」


 りりさの声が響く。出迎える気はないらしい。


「じゃ、お邪魔します」

「はぁい、どうぞ♪」


 璃々栖さんの許可を得て、俺はりりさの部屋へと向かうのだった。


「いらっしゃい、トウジ! ようこそ私の部屋へ!」


 りりさの部屋では。

 サイズの合ってないフィットネスウェアで、りりさが出迎えてくれた。

 うん――わかってはいたけど、やっぱり胸が、デカすぎる。

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