俺の幼馴染がデッッッッかくなりすぎた 1
2‐5.ポジティブりりさ
「俺、来週からバイトすることになったから」
「へ⁉」
昼休み、俺がりりさにそう伝えると、りりさは目をむいた。
「週2日。その日は一緒に出掛けられないから、そのつもりで」
「ええ~、マジかぁ~。買い物とか行きたかったんだけどぉ」
「俺も小遣いが必要だからな」
りりさは意気消沈するが、もう決めたことである。
それに、単にバイト代が欲しいという以上に、やりたいことがある。りりさのボディーガードができる頻度は減ってしまうが、仕方ない。
「まあ、寛大な心で許してやろう! 私は器がおっきいからね!」
「……ボディガードはお前が俺に頼んでる立場だよな?」
「もー、トウジってば、そういう時はね? デッカいのは器だけじゃないだろ胸もだろ、ってツッコむんだよ!」
「俺が言ったらセクハラになるだろうが!」
なんで胸の大きさ気にしてるくせに、自分からネタにしてくんだよ。
「あはは、トウジおもしろっ」
「お前なぁ。からかってるのか?」
「そういうわけじゃないんだけどね……んぐっ」
パンを飲みこんで、牛乳で流し込むりりさ。
そういえばりりさは、子どものころから牛乳大好きだったな。今も飲んでいるらしい。
「まー、はっきり言ってこの胸、重いしデカいし揺れるし、邪魔でしかないわけよ? もう全部なくしたい」
「……まあ」
りりさがそう思うのは自然なことだろう。
「でもせっかく持って生まれたのに、ただ邪魔扱いするのってもったいないなって。せっかくなら活かしていきたいのよ! 男も女も魅了するこのおっぱいを!」
――ええと。
前向き、なのか? どれだけバストに困らされても、ポジティブでいたいという気持ちが伝わってくる。
「つーわけで、トウジ相手なら積極的にネタにしようかなって」
「反応に困るからやめてくれマジで……俺を痴漢にしたいのか?」
「えー? なに~? トウジも触りたいの?」
にやにやしながら、胸を守るポーズをするりりさ。
大変申し訳ないのだが、りりさの場合、胸がデカすぎるので、両腕で胸を押さえつけると、胸がたわんで上下からあふれてしまう。
つまりりりさはガードしてるつもりで、逆に胸が強調されてしまうのだ。
「……触りたくねえし。興味ねえし」
「ふーん? トウジが嘘ついてるのってわかりやすいよね。昔から」
「う、嘘じゃねえよ⁉」
「いや丸わかりなのよ。幼馴染なめんな」
「……っ」
りりさがふふん、と得意げに鼻をならす。
じゃあなにか、胸に興味ないとか脚フェチとかごまかしてた俺の努力は、りりさには無意味だったってことか。
――認められるか。
「ガキの頃と違うからな。お前、俺のことなんかなにもわかってないだろ」
「ふーん? 素直に認めたら触らせてやろうかと思ったのに?」
「だから! 自分の身体をそういう風にネタにすんなっ!」
「はーい。うーん、堅物ボディガードだな……ま、そんなだからお願いしたわけだけど?」
「そうだろ。うかつに人に言うなよ、そういうの」
こっちの身が持たん。
自分の特徴をネガティブにとらえたくない、という気持ちはわからんでもないが。
「トウジだから言ってんだけどね」
りりさがぽつりとそんなことを言う。
――幼馴染であるがゆえの信頼なのか、あるいは舐められてるのか。どっちだ? 気になるが、ツッコむとまたからかわれそうだ。
「とにかく、バイトの日はボディガードできないからな。そのつもりで」
「はーいっ。あ、じゃあ、これから忙しくなる? 一緒に筋トレしようって言ったじゃん? 今週のうちにやっちゃおーよ」
「……そんなこと言ったっけか」
ジムでしごいてやる、という話はした気がするが。
まあ、りりさにも俺にも、トレーニングは必要だし、付き合うのはやぶさかではない。
「ジムに行くのか?」
「あのねえトウジ、私が水泳部やめた理由忘れた? パツパツのウェア着てジム行ったら、それはそれで目立っちゃうでしょ!」
「気にしすぎ――いや、すまん。そうだな」
りりさがどれだけ目立つかは、ボディガードしてからよくわかった。
彼女の行動には制限が多いのだ。
「だから、久しぶりに来なよ、私のウチ!」
「――え」
「ママもトウジに会いたがってるよ!」
唐突な家への誘いに、思わず固まる。
りりさの家に、誘われたのは――一体何年ぶりだろうか。