俺の幼馴染がデッッッッかくなりすぎた 1
2‐9.突撃りりさ
りりさの家で風呂を借りていると、なんと脱衣場からりりさの声がした。
「トウジー⁉ いるー⁉ いるよね?」
「……なんだよ」
入り口のスモークガラスに、りりさの影が映っている。
「ママがさぁ、もう一緒に入っちゃいなさいよって言うの! 私も汗だけ流したいし、ちょっとシャワー使わせて!」
「はあ⁉ いや、俺が入ってるんだが⁉」
「こっち見なきゃいいでしょ! っていうか見たらぶん殴るよ!」
「いや待て待て待て……」
「入るから目ぇ閉じておいてね! トウジなら大丈夫でしょ!」
「お前……っ!」
がら、と風呂の扉が開けられる。
俺は慌てて浴槽の隅を見つめて目を閉じた。本当に入ってきやがった、コイツ!
「こっち見んなよ~? ま、トウジ、私に興味ないって言ってたもんね~」
「……だからって、男が入ってる風呂に突撃するヤツがあるか」
「子どものころはよく一緒に入ってたじゃ~ん? ま、子どもだからだけど。お互い成長しちゃったもんね」
「わかってるじゃねえか……!」
りりさがシャワーを浴びる音がする。つまり本当に服を着ていないということ。
りりさに背を向けて、目を閉じているからわからないが、なんとなく巨大な質量がたゆんたゆんと揺れている気配がする。
いや、落ち着け俺。
胸の揺れなんて、目を閉じてるからわかるわけない。気のせいだ。筋トレ中のりりさの胸がまだ頭に残ってるだけ。
「トウジは知らないと思うけどさ、私、汗もヤバいのよ。おっぱいの裏が蒸れて蒸れて、汗疹ができると、もう夏とか地獄なわけでさ」
「……」
「だからさっさとシャワーで汗だけ流したいの! あとでちゃんとお風呂入るよ!」
胸に関する悩みを引き合いに出されると、こっちも強く言えない。
男としてはなめられている気がするが、実際、りりさにとって俺はあくまで幼馴染でしかないのだろう。
身体がデカくて、顔の怖い、ボディガード兼幼馴染。
りりさにとってはそれだけの相手。
――まあ別に、俺にとってもりりさはあくまで幼馴染であり、それ以上ではない、はずだ。だからなにも問題はない。
問題ない――よな。
「ふー、いい気持ち」
シャワーの音が止まる。
りりさが汗を流し終えたらしい。
「トウジ、本当にこっち見なかったね。まあ、見たら容赦しないけど」
「……ボディガードだからな」
「?」
視界はまだ暗いままで、なにも見えない。
りりさがどんな顔をしてるかもわからない。
ボディガードを引き受けた俺が、りりさの身体や心を傷つけるようなことをしてはいけない――と強く思う。
まあ、だからといって、りりさが気軽に風呂場に突撃していいわけじゃないが!
「汗流したから、私もう行くね。トウジは私が体をふいた後にごゆっくり~♪」
「さっさといけ!」
風呂場から出ていく音がしても、俺はまだ目を閉じたままだった。
脱衣所でりりさが鼻歌を歌っているからだ。りりさの気配がしなくなるまで、俺は固く目をつぶっていた。
「……もういいな」
りりさの気配が脱衣所からも消えてから、俺はやっと目を開く。
本当に何考えてるんだ、あの女は。
すぐそこの洗い場で、全裸の幼馴染がいたと思うと、なんだかむずがゆいような、落ち着かない気持ちにさせる。
「……全然落ち着かねえ」
心臓がうるさい。
俺は息を吐いて、浴槽に体を沈めるのだった。