俺の幼馴染がデッッッッかくなりすぎた3
1-1.告白と女子会と遠い約束
*
信じられないことが起きた。
ビックリすぎて心臓が止まるかと思った。
あのトウジが、頭が固くてちょっとどんくさい
(
信じらんない!
なんなら顔はちょっと怖いまであるのに、なんで告白されてんの!? いつの間にそんなに女子人気が生まれてたの!?
私は、トウジの前では平静を
内心では、もう慌てに慌てていた。
だってトウジだよ!? どう考えても、
(あ〜〜〜もう〜〜〜どうなってんのよぉ!)
お昼休みにトウジが告白されてから、私は軽くパニック気味。
午後の授業は、全然集中できなかった。
(トウジに恋人ができたら……もう私のボディガードできないじゃん! そんなの絶対マズいってぇ! トウジ以外のボディガードとか、無し無し絶対無し〜〜〜ッ!)
私のおっぱいは、Sカップのビッグサイズ。
このおっぱいに変な気を起こさず、かといって私が申し訳なくない範囲で、あれこれ無茶ぶりをできる親しい男子。
そんなの、
(それなのに、なにを告白なんてされてるのよ! トウジ〜〜〜〜ッ!)
考えたこともなかった。
トウジに恋人ができたら、ボディガードはもう頼めない。
モテたりしないだろうから大丈夫だと、勝手に思っていたのだ。
ま、まあ? お世話になってるし? トウジがどうしてもって言うなら、私が彼女になってあげてもいい──くらいには思っていたけど。
まさか他の女子に告白されるなんて。
(これは──緊急会議だね!)
とにもかくにも、トウジのことを相談しなきゃ。
私の信頼できる、クラスメイトの女子たちに。
すなわち──
放課後──。
いつものように「りりさ、帰るぞ」と声をかけてきたトウジへ、「今日は女子会だから!」と断りをいれて、私たちはファミレスにやってきた。
いきなりのことに、トウジは困惑していたけど、帰りは
女子たちはファミレスまで移動して、注文を済ませる。
早速、会議開始──今日の参加者は、全部で5人。
「それで、どーしたのさ、りりさ。急な話って」
まずはクラス委員の
こういうときでもリーダーシップを感じさせた。
「それがさぁ──トウジが、お昼休みに告白されたの! 信じられない!」
「へーマジか」
「あら」
「ふーん」
「ちょっと! リアクション! 冷たくない!?」
私が会議開くレベルの大問題のはずなのに。
親友たちの反応は冷たかった。それでも友達なの!?
「相手は誰なのー?」
ドリンクバーで色々まぜた謎ドリンクを飲んでいるのは、
文化祭で衣装を作ってくれたり、頼りになる子なんだけど、なんか視線がずっと胸に向いている気がする。身長差のせい──だよね?
「えっとね、B組の
「えっ
みーちゃんが驚いたように。
「どっちかというと地味なタイプだよな。そんないきなり、告白とかしそうなタイプじゃないっていうか……ちーは? 話したことある?」
「ちょっと
さらっと言うのは、みーちゃんの中学からの友達──
通称ふゆち。
黒髪ロングのクールな見た目で、割と男子からも人気があるらしい。
でも実際はクールとかではなく、自分から話すのが苦手なだけで、みんなの輪に入って話を聞いてるタイプ。
でも、どんな話もちゃーんと聞いてくれるから、私は大好き。
「ただ、りりさがいるところに声をかけるなんて、大胆ね。それだけ気持ちが抑えられなかったのかしら」
ふゆちがアイスコーヒーを飲みながら言う。
確かに──
「まあ、りりさと
さわやかな笑顔で笑うのは、イケメン偽装女子、
「タイミングが見つけられなかったのは、あると思う」
ユニセックスの制服はいつも通りだけど、文化祭で賭けに負けたから、大きな胸は制服の上からでもよくわかる。
でも、モテるのは相変わらずらしい。胸を隠さずモテるほうがいいと思う。
文化祭が終わってからは、演劇部に入部したって。きっとこれからも、理想の王子様を演じていくんだろーなー。
この四人に、私を加えたメンバーが、今日の女子会のメンツである。
「と! に! か! く! トウジが告白されたんだって! もうヤバすぎでしょ!」
「別に良くね? 高校生活してたら告白の一つや二つあるだろ」
みーちゃんが両手を広げて。
「りりさだって、しょっちゅう告白されてんじゃん」
「胸をガン見しながら『好きです!』とか、告白って言わないの! せめて顔を見ろ! 目を合わせろ! まったくもう!」
「巨乳って大変なんだな……」
みーちゃんが同情の視線を向けてくる。
たしかに告白されたけど、あんなものノーカンだノーカン。
文化祭が終わってから、知らない男子に告白されることも何度かあったけど、全員、胸目当てなのが手に取るようにわかった。
一瞬も目を合わせず、おっぱいを見ながらした告白を、オッケーするわけがない。
「
アイスコーヒーを飲みながら、ふゆちは言う。
「文化祭からかしら。ミスターコンがきっかけで、気になる女子も増えたみたい」
「うっそ、マジで!? トウジのどこが
「りりさ、
淡々と告げるふゆち。
「私は……まだちょっと、
「わかるー。でも料理男子なの意外だったし、好きな女子いるかもねー」
ふゆちの言葉を引き継いで、えびちゃんが言う。
「絶対
「だーれかさんは、女と見ればすぐ
みーちゃんが、
みーちゃんは元々、かっこいい
お互いに遠慮がないっていうか? 端的に言えば、仲良しである。
「ボクは、どんな女の子も大好きだから。それを
「おいおい!
「みんな愛してるから、
「かぁーっ! そこそこ!
「じゃーなくてー! トウジに彼女ができたらどうしようって話だよ〜っ! もうボディガードお願いできないじゃ〜んっ!」
「
「私が申し訳なくなるじゃん! 彼女がいたら、ボディガードなんてお願いできないよぉ〜っ!」
私が半泣きになっていると、ふゆちがじっと私を見てる。
うーん、言いたいことがありそう。
「どしたの、ふゆち」
「あ、ええと、聞いていいことか、わからないのだけど──」
「いいよ、なんでも聞いて! 私たちの仲じゃん」
「そう、なら、聞かせてもらうわね」
ふゆちは私の目をまっすぐ見て。
「あの──りりさは、
「え? いや……えーと、うーん……?」
好きか、と聞かれたら。
きっと好きなのだ──もちろん
男女関係なく、一番大好きな友達。でも、恋愛としては──?
「いやぁ〜、トウジがどうしてもって言うなら付き合ってあげてもいいけどさ? 私からみたら、まだまだガキンチョっていうかぁ? 恋愛対象にするには──さ?」
「そうなの」
ふゆちは私の言葉を、肯定も否定もしなかった。
「自分から告白するほどではない、ってことなのね」
「うーん、そうなるかな?」
「答えてくれてありがとう──でもね、りりさ、
「うえぇぇ!?」
「今回は、形にはならなかったみたいだけど……告白されたというのは、そういうことなんじゃないかしら」
ふゆちは、いつも熱心に人の話を聞いてくれる。
そういうとこ、めっちゃ好き。
自分の意見をあまり言わないタイプだけど──だからこそ、色んな人から色んな話を聞くだけで見えてくる、彼女なりの未来があるんだと思う。
つまり、ふゆちがこう言うなら──。
「いつか、マジでトウジに彼女ができるってことぉ!? そんなのヤだぁ!」
「あはは、彼女でもないのに泣いてる〜! かわい〜っ!」
えびちゃんが無責任な笑顔で笑い飛ばした。
一番頼りになるボディガードが、他の女子のモノになる。
そんなの、絶対ムリ! 許せない!
「まあまあ、りりさ、そんなに泣かないで」
隣の
「
「いやぁだぁ〜〜〜っ! トウジがい〜〜〜い〜〜〜ッ!」
「そ、そんなにかい……!?」
でも
「あはは、フラれてやーんのっ」
みーちゃんが茶化すと、
「結構つらいな……
「すぐ
あはは、とみんなで笑いあう。
ううう、こっちの悩みも知らない感じで、みんな楽しそうだぁ。ズルい。
私が開いた女子会なのに! 私が相談してるのに、なんで私が
「なあ、りりさ、真面目な話──」
みんなでふざけていたのに。
次の瞬間、みーちゃんの顔つきが変わった。
こういう時のみーちゃんは、正直めっちゃカッコいい。
今だってクラスのリーダーで、そしてきっと、未来のバレー部キャプテンになるだろう──そんな表情を見せてくれる。
「アンタ、このままじゃヤバいよ?」
「へ?」
「私ら、もう高校生なんだし、告白も、恋愛もフツーのことだろ。彼女できたって、おかしくないって。そんなに心配なら、今のうちにアンタが、
──そんなこと言われても。
「捕まえとくって……だってさ、トウジはずっと、私の
「そこがヤバいって言ってんのさ。高校生なのに、いつまでも
みーちゃんの言葉が、ずきりと、私の中に刺さった。
『トウジはずっと、私と遊ぶんだよ』
子どものころに約束した言葉が、リフレインする。
当たり前だと思ってた。トウジが
だって、ずっと遊ぶって約束したんだから。
(ううん──違うよね。このままじゃ無理なんてこと、わかってた)
いま、トウジと一緒にいたら、すぐに恋愛に結び付けられる。
子どもの頃はそんなことなかったのに。
でも、私たちはもう高校生。並んで歩いてるならカップルだね、って思われるのが普通になってしまったのだ。
幼稚園のころの関係性でいられないのは、ホントはわかってた。
そもそも、トウジだって胸ばっか見てくるし! アイツ〜〜〜っ!
ちゃんと『男の子』になってるのは、こっちだってわかってるんだからね!
(成長してんのよね、お互いに)
私たち、高校生だもん。昔のまんま。なんにも考えず、毎日プールに行くような関係性ではいられないって。
結局、トウジに甘えていたのだろうか。
お互い、体がどんなにが大きくなっても、
ただ、そうは言っても──。
「でも……そんなぁ……どうしたらいいか、わかんないよ。
トウジと彼氏彼女になる?
それがイヤというわけじゃないけど──ボディガードのために、そうなるのって、なんか違う気がしない?
無理矢理に作った関係っていうかさぁ。
でも、トウジに彼女ができるのも困るし──放置したらそうなっちゃうなら──。
ううう、ダメだダメダメ! 思考がぐるぐるし始めた!
「あー、ヤバいわこれ。思った以上に重症だわ」
みーちゃんが、
「そうね──
ふゆちも静かに同意した。
「なあに、それぇ! どゆことぉ!」
私が泣き叫んでも、みんなは
「
「うっわ! イイ男! どうしよ、私が
「深く考えずにそういうこと言うのやめなさい
やっぱり私を
結局どういうことなの!
私にはまだ恋愛が早いとか、そういうことなのぉ!?
「ボクはそのままのりりさも好きだよ」
「
「もちろん、全部好きだからね。
ちくしょー、みんなしてなんなの!
私はイライラに任せて、フライドポテトをかじる。太るかもとか言ってらんない。
青春には! カロリーが必要なのだ!
「いいもん! こうなったら、私が! 彼女ができないようにトウジを守るから!」
「いや、そういうトコだぞ、りりさ」
「ええっ!?」
みーちゃんが
なにが『そういうトコ』なのか、私にはさっぱりわからないのだった。



