俺の幼馴染がデッッッッかくなりすぎた3
2-2.旅館と卓球と混浴
*
「ちょっと触ってもいいかい?」
「ええー……っ? ちょっ……まあ、いいけどぉ……」
もう無理だ。
俺はリモコンを手に取り、テレビをつけた。
テレビでは、アナウンサーがちょうど、西日本の温泉街の取材をしていた。りりさの声が聞こえなくなるまで、音量を上げる。
正直うるさいが、
(はー……まったく)
やっぱり、女性たちの旅行に男が交ざるのは、早まっただろうか。
俺は雑念を振り払いながら、温泉プリンを食べるアナウンサーをボケッと眺めていた。
──そうこうしてるうちに、廊下から足音が聞こえる。
ドタバタと騒がしい足音なので、誰のものかはすぐわかった。
「ねえねえトウジ!」
がらっと、離れの扉が開けられる。
髪が汗で
「この旅館、卓球台あるんだって! 温泉と言えば卓球でしょ! みんなで──って、どうしたのトウジ、そのテレビの音」
「なんでもねえよ」
デカいのはお前たちの声だ──とは、さすがに言えない。
「?」
「卓球♪ 卓球♪ トウジ! 負けないからね!」
「お前、球技そんな得意じゃないだろ」
「は〜? あんま
温泉に入ったりりさはとにかくご機嫌で、今にもスキップでもしそうだ。子どもか。
(……しかし)
りりさの
帯で腰を締めつけるから、デカい胸もこれでもかと強調するし、隙間から見える谷間の深さが尋常ではない。
──じゃありりさを見ないようにすればいいかというと、視線をそらした先にいるのは
二人もそれなりの巨乳なので、目のやり場に困る。本当に!
「おお〜〜、結構広いね!」
さすが高級旅館というべきか、卓球場もそれなりの広さであった。
りりさは早速、ラケットとピンポン玉を手に取る。
「よーし、トウジ! 勝負だ!」
「あいよ」
はっきり言って、負ける気がしない。
水泳ほどではないが、球技も別に苦手ではない。
一方、りりさは大雑把で、こういう繊細な競技は苦手のはずだ。なぜか得意げになっているが、勝算があるとはとても思えなかった。
「ではこちらもやりましょうか、
「はい──あの、
「実は学生時代、卓球部でして。私が勝ったら、モデルの件、考えていただきますよ」
「ええっ、ちょ……!?」
隣の卓球台では、なぜか賭けが始まっていた。
ガチ勢じゃねえか。
「トウジ〜? いい〜? いくよぉ〜?」
「ああ。いつでも来い」
こっちは気楽にやろう──と、ラケットを構えたところで。
「でりゃぁぁぁっ!」
りりさが、無駄に気合いをいれて、ラケットを振る。
瞬間、鋭く2回跳ねたピンポン玉が、俺の耳をかすめた。
「──はっ?」
「やったぁ〜〜〜一点っ! トウジ、全然ダメじゃ〜んっ!」
りりさが無邪気に喜ぶ。
(おいおい、なんだ今の)
りりさに打たれたピンポン玉は、卓球台に乗った瞬間、謎の軌道で斜め上に飛んだ。
どんなドライブがかかってんだよ! 野球の変化球か!
「くっふっふ〜♪ 私も結構うまいでしょ〜?」
いや、フォームはへろへろだし、ラケットの振り方も甘い。
だが、ピンポン玉には謎の回転力で、あらぬ方向へと飛んだ。
(どんなボールなんだよ!)
再び、りりさのサーブ。
俺は改めて、りりさの動きを見定める。
「もう一回──どっせぇぇい!」
再び謎の掛け声とともに、ラケットが振られた。
ピンポン玉は、危なっかしい軌道で跳ねて、俺のコートに。
「くっ!」
そして謎の回転力で、あらぬ方向へ。
(とんでもねえ卓球しやがって!)
俺は体を伸ばして、どうにか返球した。
「わわっ!」
りりさも体をひねって打ち返す。
りりさの超ドライブボールの、からくりがわかった。
(やっぱり、胸かよ!)
りりさが体をひねる瞬間、彼女のデカすぎる胸も、遠心力で外側に触れる。
その力が、ボールに過剰な回転を与え、まったく軌道の読めない魔球に変える。
(卓球も胸でやってんのか、コイツは!)
おそらく無自覚なのだろう。
不器用なりりさが、自覚的にこんなスゴ技を生み出せるとは思えない。
胸の重さをなんとか制御しようとした結果、そのパワーがたまたま、ラケットを通して、ピンポン玉に乗ってしまうだけだ。
「ふふん♪ トウジってば息があがっちゃって! もうヘバってや〜んの♪」
「このっ……っ!」
まったく読めないりりさの魔球についていけず、得点された。
楽勝だと思っていたが、りりさに勝ち誇った顔をされると、負けず嫌いの自分が顔を出す。
「ほえ
「そう簡単にっ……負けるか……っ!」
軌道が読めないなら、動体視力で打ち返すしかない。
俺もりりさも、夢中になってピンポン玉を返していく。
たかが卓球とはいえ、やっぱりりりさに負けるのは悔しいのだ。
だが──。
(っ……!)
りりさは
そんな状態で、全身を使って思いっきり運動をすれば──。
「そこだぁっ!」
「……くっ」
当然、
ただでさえデカいりりさの谷間が、
「おりゃっ!」
「へへん! とれるもんね!」
さらに。
りりさは足を大きく開いて、ピンポン玉を待ち受けているので、
ちらちらと見えてしまう太ももに、意識を持っていかれる。
気にしたくはないのだったが、真正面でちらちらと映ってしまう肌色を、完全に無視するというのは難しい。
(ああ! もう!)
真剣勝負のさなかに、
せめて俺じゃなくて、
「ふふ、さすが
「こ、これでも文武両道で! 売ってるのでぇ!」
すさまじいラリーの応酬が続いていた。
負けられない意地とプライドがあるらしい。ダメだ。こっちには頼れない。
「トウジ! よそ見してる暇なんてないから!」
「っ!」
胸の重量を乗せた一撃のせいで、無防備な胸元がばるんと弾む。
(──はあ)
コイツは、本当に。
ボディガードとしては、そのなんにも考えてない無防備さを、少し改めてもらいたい。
「ああもう! こっちも本気出すからな! りりさ!」
「今更出したって遅いもんね〜っ!」
「……っとに、お前はよぉ!」
りりさに言えない鬱憤のあれこれを、俺はラケットに乗せて打ち込む。
「どっ……せぇいっ……!」
だが、俺の
急角度を描く返球に、俺はまったく対応できず。
「やったぁ〜〜〜〜っ! 勝った勝った〜〜〜〜ッ!」
勝利の喜びで、りりさがぴょんぴょんと飛び跳ねる。
だからなんでお前はすぐ跳ねるんだよ。
(ああもう、まったく……)
全然言いたいことも言えやしない。
無邪気に喜ぶりりさを前に、ただただ頭を抱えるしかできない俺なのだった。



