俺の幼馴染がデッッッッかくなりすぎた3

2-2.旅館と卓球と混浴


「ちょっと触ってもいいかい?」

「ええー……っ? ちょっ……まあ、いいけどぉ……」


 もう無理だ。

 俺はリモコンを手に取り、テレビをつけた。

 てんからは、ずっとりりさたちの声が聞こえてくる。

 おさなじみに入ってる様子を、これ以上リアルタイムで盗み聞きするわけにはいかなかった。

 テレビでは、アナウンサーがちょうど、西日本の温泉街の取材をしていた。りりさの声が聞こえなくなるまで、音量を上げる。

 正直うるさいが、てん実況中継に耐えられる気がしなかったので、これでいい。


(はー……まったく)


 やっぱり、女性たちの旅行に男が交ざるのは、早まっただろうか。

 俺は雑念を振り払いながら、温泉プリンを食べるアナウンサーをボケッと眺めていた。

 ──そうこうしてるうちに、廊下から足音が聞こえる。

 ドタバタと騒がしい足音なので、誰のものかはすぐわかった。


「ねえねえトウジ!」


 がらっと、離れの扉が開けられる。

 上がりで、肌を染めたりりさがそこにいた。

 髪が汗でれて、頰に張り付いている。


「この旅館、卓球台あるんだって! 温泉と言えば卓球でしょ! みんなで──って、どうしたのトウジ、そのテレビの音」

「なんでもねえよ」


 デカいのはお前たちの声だ──とは、さすがに言えない。


「?」


 上がりのりりさは、きょとんとした顔で、首をかしげるのだった。


「卓球♪ 卓球♪ トウジ! 負けないからね!」

「お前、球技そんな得意じゃないだろ」

「は〜? あんまめないでよね! トウジなんて楽勝だし!?」


 上がりのりりさたちと、卓球場へ向かう。

 温泉に入ったりりさはとにかくご機嫌で、今にもスキップでもしそうだ。子どもか。


(……しかし)


 りりさの浴衣ゆかた姿は、目の毒である。

 浴衣ゆかたという薄手の生地は、りりさの体型をはっきり見せつける。

 帯で腰を締めつけるから、デカい胸もこれでもかと強調するし、隙間から見える谷間の深さが尋常ではない。

 ──じゃありりさを見ないようにすればいいかというと、視線をそらした先にいるのはさんや周防すおう

 二人もそれなりの巨乳なので、目のやり場に困る。本当に!


「おお〜〜、結構広いね!」


 さすが高級旅館というべきか、卓球場もそれなりの広さであった。

 りりさは早速、ラケットとピンポン玉を手に取る。


「よーし、トウジ! 勝負だ!」

「あいよ」


 はっきり言って、負ける気がしない。

 水泳ほどではないが、球技も別に苦手ではない。

 一方、りりさは大雑把で、こういう繊細な競技は苦手のはずだ。なぜか得意げになっているが、勝算があるとはとても思えなかった。


「ではこちらもやりましょうか、周防すおうさん」

「はい──あの、さん、なんか手慣れてませんか?」

「実は学生時代、卓球部でして。私が勝ったら、モデルの件、考えていただきますよ」

「ええっ、ちょ……!?」


 隣の卓球台では、なぜか賭けが始まっていた。

 さんが鋭いサーブをしかけるが、周防すおうもさすがの運動神経で返していく。

 ガチ勢じゃねえか。


「トウジ〜? いい〜? いくよぉ〜?」

「ああ。いつでも来い」


 こっちは気楽にやろう──と、ラケットを構えたところで。


「でりゃぁぁぁっ!」


 りりさが、無駄に気合いをいれて、ラケットを振る。

 瞬間、鋭く2回跳ねたピンポン玉が、俺の耳をかすめた。


「──はっ?」

「やったぁ〜〜〜一点っ! トウジ、全然ダメじゃ〜んっ!」


 りりさが無邪気に喜ぶ。


(おいおい、なんだ今の)


 りりさに打たれたピンポン玉は、卓球台に乗った瞬間、謎の軌道で斜め上に飛んだ。

 どんなドライブがかかってんだよ! 野球の変化球か!


「くっふっふ〜♪ 私も結構うまいでしょ〜?」


 いや、フォームはへろへろだし、ラケットの振り方も甘い。

 だが、ピンポン玉には謎の回転力で、あらぬ方向へと飛んだ。


(どんなボールなんだよ!)


 再び、りりさのサーブ。

 俺は改めて、りりさの動きを見定める。


「もう一回──どっせぇぇい!」


 再び謎の掛け声とともに、ラケットが振られた。

 ピンポン玉は、危なっかしい軌道で跳ねて、俺のコートに。


「くっ!」


 そして謎の回転力で、あらぬ方向へ。


(とんでもねえ卓球しやがって!)


 俺は体を伸ばして、どうにか返球した。


「わわっ!」


 りりさも体をひねって打ち返す。

 りりさの超ドライブボールの、からくりがわかった。


(やっぱり、胸かよ!)


 りりさが体をひねる瞬間、彼女のデカすぎる胸も、遠心力で外側に触れる。

 その力が、ボールに過剰な回転を与え、まったく軌道の読めない魔球に変える。


(卓球も胸でやってんのか、コイツは!)


 おそらく無自覚なのだろう。

 不器用なりりさが、自覚的にこんなスゴ技を生み出せるとは思えない。

 胸の重さをなんとか制御しようとした結果、そのパワーがたまたま、ラケットを通して、ピンポン玉に乗ってしまうだけだ。


「ふふん♪ トウジってば息があがっちゃって! もうヘバってや〜んの♪」

「このっ……っ!」


 まったく読めないりりさの魔球についていけず、得点された。

 楽勝だと思っていたが、りりさに勝ち誇った顔をされると、負けず嫌いの自分が顔を出す。

 おさなじみさが、かもしれない。


「ほえづらかかせてあげるわ!」

「そう簡単にっ……負けるか……っ!」


 軌道が読めないなら、動体視力で打ち返すしかない。

 俺もりりさも、夢中になってピンポン玉を返していく。

 たかが卓球とはいえ、やっぱりりりさに負けるのは悔しいのだ。

 だが──。


(っ……!)


 りりさは上がりの浴衣ゆかた姿。

 そんな状態で、全身を使って思いっきり運動をすれば──。


「そこだぁっ!」

「……くっ」


 当然、浴衣ゆかたの合わせ目ははだけていく。

 ただでさえデカいりりさの谷間が、浴衣ゆかたの布地を押しやっていく。

 浴衣ゆかたの隙間から、下着らしき色がちらちらと見えてしまうのが目の毒だ。ってか、下着付けてても胸が揺れまくる。どうなってんだ。


「おりゃっ!」

「へへん! とれるもんね!」


 さらに。

 りりさは足を大きく開いて、ピンポン玉を待ち受けているので、浴衣ゆかたの裾もどんどんズレていく。

 ちらちらと見えてしまう太ももに、意識を持っていかれる。

 気にしたくはないのだったが、真正面でちらちらと映ってしまう肌色を、完全に無視するというのは難しい。


(ああ! もう!)


 真剣勝負のさなかに、浴衣ゆかたがはだけているとも言いづらい。

 せめて俺じゃなくて、さんか周防すおうに指摘してもらえたら──。


「ふふ、さすが周防すおうさん、やりますね!」

「こ、これでも文武両道で! 売ってるのでぇ!」


 すさまじいラリーの応酬が続いていた。

 負けられない意地とプライドがあるらしい。ダメだ。こっちには頼れない。


「トウジ! よそ見してる暇なんてないから!」

「っ!」


 浴衣ゆかたをはためかせながら、りりさが回転サーブを放ってくる。

 胸の重量を乗せた一撃のせいで、無防備な胸元がばるんと弾む。


(──はあ)


 コイツは、本当に。

 ボディガードとしては、そのなんにも考えてない無防備さを、少し改めてもらいたい。


「ああもう! こっちも本気出すからな! りりさ!」

「今更出したって遅いもんね〜っ!」

「……っとに、お前はよぉ!」


 りりさに言えない鬱憤のあれこれを、俺はラケットに乗せて打ち込む。


「どっ……せぇいっ……!」


 だが、俺のこんしんの一撃は、りりさに返された。

 急角度を描く返球に、俺はまったく対応できず。


「やったぁ〜〜〜〜っ! 勝った勝った〜〜〜〜ッ!」


 勝利の喜びで、りりさがぴょんぴょんと飛び跳ねる。

 だからなんでお前はすぐ跳ねるんだよ。

 浴衣ゆかたの裾からは、白い布がちらちらと見えるし──ピンポン玉とは比にならないデカい球体も、ぽよぽよと揺れている。


(ああもう、まったく……)


 全然言いたいことも言えやしない。

 無邪気に喜ぶりりさを前に、ただただ頭を抱えるしかできない俺なのだった。

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