エルフの渡辺
第一章 渡辺風花は園芸部の部長である ④
そこまで言ってから
これまで特に交流が無かったのに急に声をかけ、本人が出そうとした写真を
ことによれば、
「俺の家、
それこそ
そしてそれに対する
「そっか!
「知ってたの!? 俺が写真部だって」
何度も言うが、自分と
それなのに彼女が自分の所属する部活を知っていることに、
「先月の文化祭で写真部の展示の前を通ったとき、
「そこまで覚えててくれたの?」
「花がとても
そう言って
「この菊の写真、もらっていいの?」
「もっ……もちろんっ!」
声が上ずった。上ずらざるをえないほどに動揺したのだ。
「やった。やっぱり得意な人がちゃんとしたカメラで撮ると
心から
撮った写真を褒められたことは何度かあった。
だが、家族以外の誰かのために写真を撮ったのも、その本人に喜んでもらったのも、
「ありがとう
「う……んっ」
まるで
◇
「だから、去年の菊祭りの表彰のときからずっと、
「あ、あう……そ、そうだったんですか……」
「だ、だからね! 魅力がどうとか、写真のモデルになった人にみんなにそんなこと言ってるんじゃないかってさっき言ってたけど、ある意味正しくて、
「あう、分かったから、その、あんまり恥ずかしいこと言わないでください〜」
「いや、その、俺は聞かれたことを答えてるだけで」
「で、でも今の話のどこで、私のことをす、す、好きになったって……」
「だから言ったじゃないか。表彰されたときと、写真を受け取ってくれたときの笑顔がきっかけだって」
「は、はううう……」
「ただ、もちろんそのときはこんなこ、こ、告白、しようだなんて大それたこと考えてなくて、でも、その後……
「え? どうして部活が関係あるの?」
「その頃、写真部の三年生が引退して俺一人になったから」
恥ずかしがっているなりに真剣な
「写真部には俺の一個上の先輩がいなくて、一年生も俺一人だった。写真部は去年の冬には俺一人の部活になってたんだ。でも……」
園芸同好会は、現役高校生が地域の伝統行事に貢献したという実績でもって園芸部に昇格し、
「何もできずに流されるまま一人部長になった俺と違って、同好会を実績で部に昇格させて、部長になった
「わ、分かりました! 分かりましたから! ふー、ふー、ふー……」
全力疾走した後のように上がった息を整えながら、
「そ、それであの……それで終わり……ですか?」
「っ!」
促されている。間違いなく。
「つっ……つっ……付き合ってほしいって、俺のかかっ、彼女になってもらえませんか!」
「へ、へぁあぁぁ……」
事ここに至り、
そして、あたふたと周囲を見回し、意味も無く首に掛けたタオルで口の周りを吹いたりしてから、たっぷり何十秒も沈黙した。
その時間が、
「わわわ、私なんて暗くておしゃれじゃないし人見知りで、それに……」
「そ、そういうとこも好きなんだよ!」
「へぁっ!」
「あ、いやその。悪く言うつもりじゃなくて、でもその、こういう言い方は変かもだけど、外見で好きになったわけじゃないんだ! でも好きになると外見含めて全部好きになっちゃったんだから仕方ないんだ!」
「えっと、うう、えっと、その……」
無様に過ぎる告白だ。だが、それでも
「あの、あのね、変な声出してばっかりでごめんね……い、嫌なわけじゃなくて、ただ、ど、どうしたらいいか、何て言っていいか分からなくなっちゃってて……」
それはそうだろうと思う。
好意的に接してもらっていたという自負はあるが、それも学校に限った話であり、お互い知ってることが多いとは言えない間柄だ。
そのことに思い至り、
そしてまたしばらくの沈黙。
言葉を探している様子が、もしかしたら拒否の言葉を探しているようにも見えた
「グリーンフィンガーズ、って言うんでしょ?」
「えっ?」
「園芸が得意な人の事を英語でも日本語でも『緑の指』って。俺、
口が勢いで動き、何だか血圧が上がって、視界も
それでも、今この瞬間告白しきらねば一生後悔するという思いが
「お、落ち着いて。分かりました。分かりましたから……」
「ご、ごめん……!」
勢いよく行きすぎて、がっついていると思われてしまっただろうか。引っ込み思案な部分のある
思わず目を伏せてしまった
「驚いたけど……
「えっ……!」
「でも……私達、まだお互い、知らないことが沢山あると思うんです。だから……」
でも、BUT、HOWEVER、逆接の接続詞。
「あ……」
「ゆっくり少しずつ、お互いを知りながらお付き合いをしていくので、いいですか?」