エルフの渡辺
第二章 渡辺風花はそわそわしている ②
そして宙ぶらりんになってしまった
少なくともスマホ越しにエルフがいつもの
「だからそれじゃ何も解決しないっ!」
そこまで考えてから、一体何がどう重要なのか頭の中で整理しきれず再びのセルフ突っ込みが
「おい、本当大丈夫か? 実はマジで具合悪かったりしないか?」
謎の存在をちらつかせて謎の脅迫をしてきた
すると、
「あの、えっと……お、
これまで
小学生でももう少し
「わ、わあ、
「あ、う、うん、そうだけど……」
「そ、それで
「えっ?」
「だ、だってまだ、コンクリートに出す写真は撮れてないでしょ?」
「コンクリート?」
「こん、こ、コン、コンサート」
「……コンテスト」
「そう、コンテスト! ええとそれでね、今日の部活はちょっと昨日とは違うことやらなきゃいけなくて、だからもし今日も写真を撮るなら、えっと、その……あのね?」
用意してきたであろうセリフを間違いまくって声が少しずつ小さくなって、恥ずかしそうに少しずつ目が伏せられていった。
「相談したいことがあるので、一緒にお昼……食べませんか」
「あ……うん、分かった」
その瞬間、首に
理屈は
「それじゃあ園芸部の部室でいい? そこなら、誰も来ないから……」
だから周囲を刺激するような余計な一言を付け加えないでほしい。
多分だが、部活の相談
それなら確かに誰も来ない環境が望ましいのだが、今この状況でそれを言うのは、男子人気を一身に集める女子が特定の男子を誰も来ない部室で一対一になるよう誘っているようにしか見えないのだ。
「そ、それじゃお昼、部室でね?」
手を振って自分の席に戻ろうとするエルフの
「あ、待って。一応これ」
差し出した写真をエルフの
「それも、お昼のときでいい?」
「あ、うん……それじゃあ」
「ゆーくーとーくーーん?」
そこにのしかかっているのは、そのまま
「誰も来ない部室……男女二人……カメラ……
「な、なんだよ」
「いいショットが撮れたら俺にもお裾分けはあるよなぁ? 俺達友達だもんなぁ?」
「ファンを自称する癖に裏ルートで写真を
「いいじゃねーかよ
「全校なのか全国なのかはっきりしろ。てかそのまま一生隠れててくれ」
「
「こっちは、色々マジなんだからさ」
視線の先には、一時間目の授業の用意を始めるエルフの
この世界の存在とはとても思えないのに、自分と全く同じ教科書と、どこにでも売っているようなノートとペンケースとシャープペンを用意して学校の制服を
◇
ノックの回数には正しいマナーがあると、つい先ほど、スマホで調べた。
ノックの回数は二回、三回、四回があり、国際基準では四回、日本のビジネスシーンでは三回が正しいとされ、二回はトイレや空室の確認をするものだから
元々ノックの回数など無駄に強い力でドアを殴ったり百回も間断なく打ち込むような極端なことさえしなければ、一般的な礼儀を備えていれば悩むことはないものだと思うのだが、それでもこんなことを調べたのは、エルフという種族が現実に存在するのかも、と改めて考えてしまったからだ。
いや、実在はしているのだ。恐らく。きっと。自分のクラスに。まだ信じきれたわけではないが。
ともかく仮に目に見える現実を全て無条件に信じた場合、エルフの文化が人間と違うケースにふと思い当たったのだ。
日本では何の問題ない行動が別の国では逮捕される原因になることもある。逆も然り。
もしかしたらこの世のどこかにあるエルフの世界では、ノック三回で扉を
昼休み。園芸部部室。
校舎の片隅の、
「ぐぎゅるるるううううううううううううう……」
海中で録音した鯨の鳴き声のような音が返ってきた。エルフ式の挨拶だろうか。
金属扉越しなのにしばらくドタバタと慌ただしく動く音が聞こえてきて、それからすぐにドアが内側からこちら側に向けて開く。
「い、いらっしゃい
同時に、先程の「ぐぎゅるるる」という重低音が響き渡る。
「どうぞ、好きなところに座って下さい」
「う、うん、お邪魔します。遅れてごめん。いつもは弁当なんだけど、今日は購買で」
「大丈夫だよ。こっちこそ急に誘ってごめんね」
古いパイプ椅子に座るエルフの
「ごめん、あの、大分待たせた? もしかして
「そ、そんなこと、な、ないよ! さ、さあとにかく食べよ!」
「あ、うん、いただきえっ!? デカっ!!」
普通に考えれば、ランチでご一緒する女子にそんなことを言うのはデリカシーに欠けおよそ褒められたものではない。それでもつい口を突いて出てしまうくらい、エルフの
もはや重箱だ。弁当箱などという生易しいものではない。三段重ねの赤い漆塗りの重箱がテーブルに乗っているのだ。
それだけでも圧巻なのに、更にエルフの
「あの、
向かい合って食べるのに無茶な注文だ。だが
「い、いただきまーす」
明らかに一人で食べる量ではないので、