「もー……本当にごめんって風花ちゃん……でもさ、分かってよ。いきなりあんな相談されて、こっちだって焦ったんだもん」
「相談って?」
「……ごめんなさい、大木くん」
エルフの渡辺が、ストローから口を離し三度謝罪した。
「いや、だから渡辺さんが謝ることじゃ」
「違うの。今日の泉美ちゃんのことじゃなくて……」
そして立ち止まって、行人に向き直る。
「大木くんに告白された日のこと、泉美ちゃんに相談してたの」
「え? あ、ああ、そういう……いや、でもそういう相談は誰でもする……ん?」
行人は情報を整理して、あることに思い至り、はっとなって泉美を見る。
その顔は、きっと情けないくらいに赤くなっていたことだろう。
「うん。だからセンパイが風花ちゃんに告白したって、私知ってるの」
「あ、そ、そうか。う、うう、まぁ、その、そうか」
全くの他人に自分の内心を知られることがこんなにも気恥ずかしい物なのかと思い、行人は先ほどとは違う理由でいたたまれなくなってくる。
「風花ちゃんに、センパイから告白されたときの顚末聞いて……本当にムカついてさ」
「え?」
「風花ちゃんに言い寄る奴なんか、どうせロクでもない男だから正体暴いてやろうと思って……それで今日の写真も風花ちゃんに、センパイはこんな風に簡単に女の子にコナ掛けるような奴なんだよーって見せつけてやるつもりで……はあ」
明らかに悪意に満ちた行いを自白した泉美は、がっくり肩を落とす。
「でもまさか、ムンバの写真講座が写真部の伝統で、しかもそのこと風花ちゃんがセンパイから聞いてるだなんて思わなかったよ」
「いや、まぁ自分が優良物件だなんて言うつもりはないけど、ロクでもない人間なつもりはないから、誤解が解けたなら何よりだよ」
最初から泉美は行人に敵対するつもりでやってきていたわけで、そもそも新入部員など夢のまた夢だったことが確定し、行人としては強がって苦笑するしかできなかった。
だが、自虐と強がりで笑った行人に対して、泉美の敵愾心は全く解けていなかった。
「解けてなんかないよ」
「え?」
「私はまだセンパイのことロクでなしだと思ってる。正直、なんで風花ちゃんがこんなに気を許してるのか、全然分かんない」
「え、いや、それは……どうして」
そこまで言われる理由が思い当たらず戸惑う行人だが、泉美の次の一言で凍り付いた。
「だって、風花ちゃんの本当の姿見て、日和ったんでしょ」
「えっ」
「それって、風花ちゃんの本質見てないってことじゃん。外見だけだったんでしょ」
「え、ちょ、ちょっと待って。待って。小滝さん、え、それって」
泉美は言った。
風花ちゃんから告白の顚末を聞いた、と。
行人は思わずエルフの渡辺を見ると、エルフの渡辺も眉をハの字にして、小さく頷いた。
「そうなの」
そして、ブロッサムホワイトスムージーを飲み切って、言った。
「泉美ちゃんには見えてるんです。私の、エルフの姿が」