エルフの渡辺

第三章 渡辺風花はスムージーが飲みたい ⑥

「もー……本当にごめんってふうちゃん……でもさ、分かってよ。いきなりあんな相談されて、こっちだってあせったんだもん」

「相談って?」

「……ごめんなさい、おおくん」


 エルフのわたなべが、ストローから口を離し三度謝罪した。


「いや、だからわたなべさんが謝ることじゃ」

「違うの。今日のいずちゃんのことじゃなくて……」


 そして立ち止まって、ゆくに向き直る。


おおくんに告白された日のこと、いずちゃんに相談してたの」

「え? あ、ああ、そういう……いや、でもそういう相談は誰でもする……ん?」


 ゆくは情報を整理して、あることに思い至り、はっとなっていずを見る。

 その顔は、きっと情けないくらいに赤くなっていたことだろう。


「うん。だからセンパイがふうちゃんに告白したって、私知ってるの」

「あ、そ、そうか。う、うう、まぁ、その、そうか」


 全くの他人に自分の内心を知られることがこんなにも気恥ずかしい物なのかと思い、ゆくは先ほどとは違う理由でいたたまれなくなってくる。


ふうちゃんに、センパイから告白されたときのてんまつ聞いて……本当にムカついてさ」

「え?」

ふうちゃんに言い寄るやつなんか、どうせロクでもない男だから正体暴いてやろうと思って……それで今日の写真もふうちゃんに、センパイはこんな風に簡単に女の子にコナ掛けるようなやつなんだよーって見せつけてやるつもりで……はあ」


 明らかに悪意に満ちた行いを自白したいずは、がっくり肩を落とす。


「でもまさか、ムンバの写真講座が写真部の伝統で、しかもそのことふうちゃんがセンパイから聞いてるだなんて思わなかったよ」

「いや、まぁ自分が優良物件だなんて言うつもりはないけど、ロクでもない人間なつもりはないから、誤解が解けたなら何よりだよ」


 最初からいずゆくに敵対するつもりでやってきていたわけで、そもそも新入部員など夢のまた夢だったことが確定し、ゆくとしては強がって苦笑するしかできなかった。

 だが、自虐と強がりで笑ったゆくに対して、いずてきがいしんは全く解けていなかった。


「解けてなんかないよ」

「え?」

「私はまだセンパイのことロクでなしだと思ってる。正直、なんでふうちゃんがこんなに気を許してるのか、全然分かんない」

「え、いや、それは……どうして」


 そこまで言われる理由が思い当たらず戸惑うゆくだが、いずの次の一言で凍り付いた。


「だって、ふうちゃんの本当の姿見て、ったんでしょ」

「えっ」

「それって、ふうちゃんの本質見てないってことじゃん。外見だけだったんでしょ」

「え、ちょ、ちょっと待って。待って。たきさん、え、それって」


 いずは言った。

 ふうちゃんから告白のてんまつを聞いた、と。

 ゆくは思わずエルフのわたなべを見ると、エルフのわたなべも眉をハの字にして、小さくうなずいた。


「そうなの」


 そして、ブロッサムホワイトスムージーを飲み切って、言った。


いずちゃんには見えてるんです。私の、エルフの姿が」