エルフの渡辺
終章 渡辺風花は、始めたい ④
母の言わんとすることを理解し卒倒しそうになった
「そそっそそそれじゃいいい
「小さい頃のあなた達、生き別れの姉妹かってくらいに仲が良すぎていっつも二人でベタベタしてたじゃない。ちっちゃい子どもの愛って、案外重いのよね」
幼い頃の遠い記憶に思い当たった
「ちょっと大丈夫?」
「いや、そんな仕様の魔法だなんて、聞いてな……」
「もちろんそれだけが本当の姿を見る条件じゃないわよ。世の中気の多い人だっているんだから、両
「子どものうちじゃなくても大混乱だと思うけど……じゃあ、他に見抜けるようになる理由って何なの」
「魂に触れることよ、
「…………私、園芸控えた方がいいのかな」
「大丈夫でしょ。両
「私の人生に、既に二人いるんだけど」
「男女同数である幸運に感謝しなさい」
母の達観した笑みが悔しくて、つい娘は意地悪な質問をした。
「お母さんはどうだったの。
「私が自分の真名を嫌ってるのを知ってのことか」
「一人だけよ。幸か不幸か、ね」
思い出すだけで毛布をかぶって枕に顔を
「
「うん。父親はプロのカメラマン。一般的に有名じゃないけど、大きな本屋だったら写真集を置いてもらえるレベルの人だった。母親は結婚前から今までずっと生命保険会社に勤めてて、だからってわけじゃないけど、父さんが死んでもうちの家計が傾くようなことはなかったよ。その点、普段から感謝してる分、今は家事はほぼ俺の役目だけどね」
「よかったら
「うん。お願いします」
「わあ!」
カーテンを閉め切った六畳ほどの部屋の中で最初に目についたのは、
片方はカメラ。片方はレンズ。等間隔に丁寧に並べられたそれは、いかにもプロのカメラマンの部屋にあるもの、という感じだった。
本棚には『
「
興奮気味にレンズの並んだ
「よくは知らないけど、カメラのいいレンズって
「うん。しかも
「ひゃっ!?」
「ただかなり専門性の高いレンズだから、普段の仕事で使うのは、結局三十万から五十万のあたりの使ってたらしい」
「そ、それでもそんなにするんだ。ふわぁ……」
具体的な値段を聞いた途端に部屋の中の全てが高級品のような気がして、
「あのカメラは、あそこに置いてあったんだよ」
だが家主の
「仕事で使うカメラはああいう風に
どこか誇らし気に、だがどこか悲し気に
「死んだことになって、って、どういうこと?」
「誰も、父さんの死を確認してないんだ。仕事の撮影旅行中に行方不明になった。登山者登録が必要な山に登って予定下山日になっても戻らなくて、結局遺体も見つかってない」
「っ!」
「だから、なのかな。葬式の
そう言うと、
「あとはなー。父さんがそんなことになったから、母さんが俺を写真の道に進ませまいと色々チクチク言うようになったのは本当めんどい。写真で食えるのは一握りだとか、儲からない割に金は飛んでくとか、事あるごとに言うから面倒くさくてさ」
「そう、なんだ……」
「だから俺、今度のコンテストでは絶対に何か実績を残したいんだ。逆にね。プロになるならない以前に、俺自身が単純に写真撮るのが好きなんだってことを示すためにも。だからモデル引き受けてくれた
「え? お父さんのことで? どうして?」
「異世界の存在を証明してくれたから」
黄色い花と青い峰の対比が美しい雄大な自然を背景に、どこか
「あんなに気軽に行ける異世界があるならもしかして、父さんは山の事故で異世界に転移して、そっちで元気に写真撮ってるんじゃないかなって思えたんだ」
「……うん。そうだと、いいね」
「湿っぽくなっちゃったな。ごめん。次は
「う、うん。もちろん。お母さんにはもう会ってもらったけど、イーレフの里の治安管理の職についてて、普段は向こうにいるから、日本での生活は大体お父さんがね……」
『十人十色のライフプランに寄り添う保険』
撮影・