錆喰いビスコ2 血迫!超仙力ケルシンハ
2 ②
ミロは
「ジャッッ」
老人はキノコの生えた右脚を、その手刀で
「な、なんて、
「ミロ! 早くワクチンを打てっ、咲いちまうぞ!」
ビスコの声にミロは慌ててアンプルサックからキノコワクチンを抜くと、射抜かれた肩口に向けて突き刺した。そのまま三度、四度と荒い息をついて、はっと相棒の容態に思い当たって跳ね起き、腹を押さえて夜を
「ビスコっっ! 何をされたの!? 血、血が、こんなに……!」
腰の
「げはっ、がはっ……。吐ききったら、多少は頭が
「胃……? 何を……言ってるの、ビスコ!?」
「見てくれ。お前の専門だろ」
ビスコは口の中に残った血を吐き捨てて、服を
たくましい腹筋を突き破って、ぽっかりと拳ほどの穴が開いている。
その傷の縁は血と
「こ、こんな……こんな、ばかなことって!」
ミロは絶句する。それは、先に山賊のアジトで見た変死体のそれと、全く同じ様相であった。
「どうなってる? いや、おおかた、予想はつくけどな」
「胃が、ないんだっ! そ、そんな、あんな、一瞬で、こんな……っ!」
「
「言ってる場合かよっっ!! なんでそんなに、元気なの!?」
「アンプルで、目が覚めたのがわかる。……
言葉どおり、ミロの注射をきっかけに、ビスコの身体からにわかに火の粉のような胞子が吹き出し、あたりを照らすのがわかった。ビスコの髪が明るく揺らめいて、青ざめた顔に血の色を取り戻してゆく。
胃へ
「……胃を、再生しようとしてるらしいな。ちょっと、気張って……」
「ええっ!? ビスコ、どうするの!?」
「ぐぎぎぎ……!」
ビスコはその全身に力を込めて、己の腹に意識を集中する。すると、にわかに
「え、ええっ!? ビスコ、自分で胞子を出せるの!?」
「怪奇キノコ人間みたいな言い方すんな。でも、これで……」
輝く
ずどんっっ!
「んぐわァッ! な、何だ!?」
豪快な
「ビスコ! だめだ、胞子を抑えてっ!」
「んな、急に言われても、お前!」
ミロは
「うおお……び、びびった。ちょくちょく小さい
「……
ミロは短刀でビスコに咲いた
「ビスコの再生力が、よりによって
「おい、ブツブツ言ってねえで、俺にわかるように言え。天下のパンダ先生が、患者より
白い顔を一層
「ビスコ。いまビスコは、胃を抜かれた代わりに、濃縮された
「じゃあいいじゃねえか、そのままにしときゃ。
「よくないっっ! それまで持たないんだよっ、ビスコが! ビスコが治る前に
ミロは悲鳴に近い声で、ビスコの肩を揺さぶった。
「……どうしよう。こんな症例、見たことない。そうだ、僕の胃を移植して……!」
「飛躍しすぎだ、バカ! 取られたんなら、取り返しゃいいだけだろ」
ビスコは言って、遠く明かりを灯す
「あいつ……っ!」
「案外、お目当ての
自分の腹に開いた穴の、胞子の薄膜を
「
「それは、そうかもしれないけど……ビスコ、どうしてそんなに、冷静なの!? いま、ビスコの中で、
「持ってるよ、バカ野郎。てめえが慌てすぎなんだ。敵が俺達の心理を読まねえわけがねえだろう。そこを狙われる。手負いが危機感だけで行動したら、必ず
正論であった。だとしても、ミロは相棒の鉄の意志力に驚嘆するほかない。
いかなる状況においても、泣いたり
「落ち着いたら言え。作戦立案は、お前の担当だぞ」
「……うん、わかった。追いかけよう! 今なら関所も混乱して、あいつに意識が向いてる」
「よし。なら、正面から行くか?」
「極論すぎだってば! 目につかないのが、一番だよ。おいで、アクタガワ!」
主人の声に走り寄ってきたアクタガワに、ミロが小さく何か
「おい、ミロ、まさか……」
「うん。投げてもらう。エリンギだと、キノコ守りが出たって、すぐばれるから」
「……おい、バカ言うな! トルネード投法は、ジャビが乗ってねえと無理だ! こいつ一人の力加減じゃ、どこへ飛んでくかわかんねえぞ!」
「そういう、可能性を限定する考え方が、カニの伸びやかな成長を妨げるんだよ」
しれっと言ってのけるミロの表情を、
「アクタガワ、よろしくね! あの、橋の向こうを狙って!」
「うわあ! ぜってえこっちのが無茶だ! 考え直せよ、騎手がいないアクタガワにブン投げられたら、胃がひっくり返るって!」
「丁度よかった。ないでしょ、今」
「おま……」
ビスコの抗議の文句が終わらぬうちに、アクタガワはその素晴らしい跳躍力で夜の闇へ舞い上がり、竜巻のようにその身体を回転させる。そして、その
赤と青、二色のキノコ守りはそのまま風を切り裂いて、巨大な五角形の