錆喰いビスコ4 業花の帝冠、花束の剣
3 ④
やや興奮気味のアナウンサーの声とともに、画面下部には《
テレビに映っているのは、全身を分厚い青系色の
「サタハバキだ……あれが、サタハバキです、兄上!」
「……あれで、裁判官~? 処刑人の間違いじゃ……」
ビスコはそこまで言って、そのサタハバキが片手で引きずっている、黒煙を立ててもがくシルエットに目を留め、あんぐりと口を開けた。
『はい、こちら県北関所です、えー! ご覧いただけますでしょうか!
「「
『
『…………。』
『ご自身お一人で話題の凶悪犯を召し捕るとは、いやはや、
『…………。』
『あ、あのう~……』
サタハバキは、現場の新人アナウンサーなど目もくれず、地面を踏みしめて歩み続ける。そもそもとんでもない
ずしん、ずしんとサタハバキが歩くたびに、カメラが飛び跳ねるようにブレて見づらいことこの上ないが、どうやら
『す、スゴイ大荷物でいらっしゃって、それ一体……あの、ちょっと待って、わぁっ!』
マイクを掲げながら、懸命にサタハバキの横をちょこちょこ駆けていた新人アナが、路傍の石につまずき、思わずその大きな
すっ転ぶ新人アナと同時に、その巨大な
そこから、中に人を収めた
『げぇっ』
「げぇっ」
新人アナと、画面の前のビスコ一同が、全く同じリアクションを取る。
カメラがそのまま上へパンしていけば、積まれた
そのひとつひとつの中には打ち据えられた戦士達がぐったりとその身を横たえ、サタハバキの歩みに合わせて揺れに身を任せていた。
「キノコ守り……! あれはみんな、キノコ守りだよ、ビスコ!」
「見りゃあわかる!」
『……これらは、福岡北部に潜伏せし、賊の一群。人心を
そこでようやく、サタハバキは口を開き、野太い声をカメラに吐き出す。
『いたずらに、罪人を映したるか。不心得者めが』
『あっいや、あのっ、これは……うわぁぁっ!』
サタハバキの、
『…………。え、え──、はい、ヤマノさん、ありがとうございました……
画面はスタジオに戻り、テレビは
「…………。青鬼、か。なるほど」
少し間を置いて、ビスコが
「
「しかし、キノコ守りへの誤解は《東京》との共闘で解けたはず。サタハバキ氏はなにゆえ、今になって……?」
「さあな。それも、直接聞いてみるのが早い」
「シシ! ビスコもサタハバキに用ができたみたい。一緒に話をしに行こう!」
「兄上ぇっ!」
シシが涙すら浮かべて、ビスコの腰に抱きつく。
「よかった……! お仲間の不幸にごめんなさい、でもこれはお導きです。父上のために、天がおれを脱獄させて、兄上まで導いてくれたんだ。兄上、どうか力を貸してください……!」
「たまたま道が同じなだけで、
相棒がシシを助ける口実を手に入れたことに内心ほっとしているのは、ミロにもよくわかっている。ただ、それを口に出すとまた面倒くさいので、それは黙っていた。厄介なのは、最近の相棒は表情も読んでくるので、同時に鉄面皮を保つ必要があることだった。