錆喰いビスコ5 大海獣北海道、食陸す
0 ②
「あの天変地異みたいな土の塊に、いくら
「だったらどうする!? このままじゃ九州まるごと、こいつに
「……正面を狙っても、山に矢を放つようなものだ。でも、あのくちばしを狙えば……!」
ミロはやおらビスコの額に手をかけて、「ああっ、おいっ!」という悲鳴をよそに相棒の
「やっぱり。弧を描いてこっちへ向かって来てる、あのくちばしの部分。あそこだけ、露骨に大地の層が薄くなってる。ビスコ、見える?」
「見えるわけねえだろ!! ゴーグル返せ!!」
ミロの言う通り、その大地の津波の先端は大きく弧を描いて前方に垂れ下がっており、その地層の厚さも先端に行くにしたがって薄くなっているようであった。
「あの大地の先端……上顎の部分を
「食い過ぎに、お
ミロはゴーグルをきちんとビスコに
掲げられた手の上には、ミロの思念に応えて緑色のキューブが顕現され、くるくると高速で回りながら陽光に光り輝いた。
「
「てめえもなかなか、平然と無茶言うようになったじゃねえか!」
「ビスコならできると思って言ったけど。見当違い?」
「はッ!
ビスコの答えに呼応するように、ミロの
「ようし、いい具合だッ。この
(そりゃ、子供用サイズで作ったからね)
相棒に聞かれないように
「いけえっ、ビスコ!」
ミロの生やしたエリンギが、圧力に負けてとうとうひび割れ、大地に
「これでええええ────ッッ!!」
ばぎゅうんッ! どかん、どかんっっ!
エメラルドに輝くキノコ矢が流星のごとく放たれ、
『 ご ご ご ご ご 』
キノコに串刺しにされた大地の上顎は、見事にその場に縫い
「効いてる! この調子でいくよ、ビスコ!」
「おうッ!」
「
ミロが
「空中に道ができるのか!? お前、ちょくちょく術が増えてくな!」
「
ばぎゅうんッッ!
どかん、どかん、どかんっっ!! と、
「ミロ! 落石を頼む!」
「はいな!」
ミロの唱える障壁の
『 ご ご ご ご ご ご 』
「ビスコ、もう一息! その矢で最後だよ!」
「なら、盛大に決めてやらァッ!!」
汗だくのビスコは力を振り絞り、最後の
ぼぐんっっ!
必要以上に気合が籠もったか、タケヤリダケだったはずのキノコ矢は太陽の輝きを帯びた
『 ご ご ご 』
『 ご ご 』
『 ご…… 』
「……やった、止まったよ、ビスコ!!」
「ぜえ、ぜえ……見たか、コラ……! ランチタイムは、これで終了だぜッ!」
二人の眼前には、巨大な陸の大口が、無数のキノコの柱によって
「……で!? この、ばかでっかい大地の塊は、一体なんなんだよ?」
ビスコが額の汗を拭いながら相棒に尋ねると、ミロはやや困ったように答えた。
「島……だと思う、どこかの」
「島だあ!? 島がいきなり動いて、九州にぶつかってきたってか!」
「『突撃島』っていう兵器があるんだ。日本の戦争の歴史の中でも、何度か運用されてる……孤島に推進剤を積んで、島ごと突進兵器にした、っていう記録がいくつかある。きっとこれが
「……確かに、地上がある! これは島だ、バカみてえな話だが……」
「何か見える?」
「待て、吹雪がひどいんだ。何か手がかりが……んんっ!?」
「ビスコ、あそこっ!!」
ミロの声に
白い肌に、紅色の瞳。そして、耳元に咲き誇る
それは二人のよく知る、
「「シシッッ!」」
二人の
「シシ───ッッ!! てめえコラ、降りてこいッッ! 俺と勝負しやがれェ───ッッ!」
「ビスコ! あ、暴れないでっ! お、落ちる、落ちる!」
ぽろぽろと崩れ落ちる
「ミロ! ぼさっとするな。ありゃ、間違いなくシシだったろ! この島を動かしたのも、あいつの差し金に間違いない。さっさと上まで行って、あいつをぶちのめすッ!」
「わかったわかった、わかったけど!」ミロはやっとのことで肩からビスコを降ろすと、諭すように言った。「あの高さは、エリンギで飛ぼうったって無理だよ。僕とビスコの矢を合わせても、発芽力が足りない。まして、その子供の
「だからァっ、俺は、ガキなんかじゃ!」
「話の途中っっ!」
「はい」
「エリンギが届かないとなれば、僕らに取れる方法はひとつ」
ミロは、動きを止めている大地の壁を見つめて、わずかに目を細めた。
「なんだよ、その方法ってのは。さっさと言え!」
「昔の偉い人は言った。そこに山があるからだ、って……」
ミロは
「ビスコってさ、クライミングの経験ある?」