錆喰いビスコ5 大海獣北海道、食陸す
2 ③
「まずい」舌から口の中を見渡して、ビスコが舌打ちした。「唾液がどんどん上がってくるな。骨も残らねえで、海獣の栄養になるのは御免だぞ」
ミロはビスコの言葉と現在の状況を合わせて思案し、背後を振り向いた。倒れた舌の奥には、はるか遠方まで続く、長大な肉のトンネルが口を開けている。
ミロは意を決したように
「よし。行こう、ビスコ!」
「行くって、お前、どこへ行こうってんだ!?」
「食道だよ。あるいは、もっと奥のほう」
ミロはしれっとそう言って、ビスコの手を引き、舌の付け根へ向けてぴょんぴょんと跳ね跳んでいく。ビスコは目をぱちくりさせて後を追いながら、ある意味では当然の疑問をミロに向かって投げかける。
「食道、ってお前……!? なんでわざわざ、
「それだと後手に回るよ、ビスコ。将を射んとすればまず馬から、って言うでしょ」
「? 言わん。キノコ守りは将から撃つ」
「とにかく!」ミロは出鼻をくじかれつつも、気を取り直して言う。「シシを倒すより先に、まず
「そうは言ってもお前! こんな、得体の知れない内臓の中を……!」
「得体の知れない、と
「お、おおっ」ビスコはそこで、久々に相棒が医者であったことを思い出し、男の子の純粋な
「ないけど? ま、生き物には違いないんだから、大体いっしょでしょ」
「そこは適当なのかお前この野郎───ッッ!」
少年二人はそんなことを言い合いながら、