錆喰いビスコ6 奇跡のファイナルカット
0 ①
一陣の寒風が吹いて、
【恐怖政治 絶対反対!!】
【圧政に終止符を!!】
それらの紙は。
一様に機関銃の弾丸に撃ち抜かれ、焦げ付いており……
紙はそのまま風に
かつては……
商人、飯屋、妖しげな
商人一人、いない。
これは通りに限らず街中がまったく静かで、通りすがりの旅商人の言葉を借りれば、
「まるで、死んだような……」
その代わりに……。
その
どうやら何かの監視役であるらしいこれらウサギ面達は、
「チョロチョロうろつくな、コラ!」
肩身狭そうに歩く通行人を『ごんっっ』と銃床で小突いたりと、一様に高圧的かつ、尊大な態度であった。
「住民ども! 上映会の時間だ。さっさと会場に集まれ!」
そこら一帯の管轄主であるらしい黒イミーくんが、空に向かって『ばばばばば!!』とマシンガンを
「一分十三秒。遅い! それになんだその顔はお前ら。楽しい楽しい上映会だろうが!! しみったれた顔は、刑罰対象だと言ったはずだぞ!!」
黒イミーの言葉に、無理やり笑顔をつくる住人達。その顔は
「そうだ。常に笑顔を心がけろ。我々を見習え」
(マスクじゃないか)
(
「ごちゃごちゃ抜かすな! 整列!」
「ま、待ってください。うちの子は課題日報の連続で、もう二日も寝てないんです。このまま続けられたら、過労で死んでしまいます!」
「名誉なことじゃないか。死ね。若くして死ぬのは芸術家の特権だ……さっさと歩け! それとも今すぐ殺されたいか!!」
住人はイミーくん達になすすべなく、とぼとぼと上映会館まで連行される。街中には隙間なく設置されたカメラが
「うわぁっ。もう嫌だ。もう見たくないっ」
「暴れるな!! スクリーンから目を離すな」
「助けてくれぇっ。誰かぁっ」
「肩ごと固定しろ!! こいつは延長コースだ。泡を吹くまで見せ続けろ!!」
スクリーンから絶え間なく映像が流される、
住人達は厳しい監視下で放映される映像を見続けさせられる。それは開眼器具を強制的に着用された上に、ベルトで客席に固定させられるという相当に過酷なものだ。
時折先ほどのように耐え兼ねて暴れ出すものが出るが、課せられるペナルティもまた相当なものであるから、他の住人達もただただ耐え忍ぶほかない。
「オエッ」「グォエッ」などと、
客席の後ろのほうで。
「……ひっく。ぐすっ……」
感極まったように……
極めて純粋に、真剣な感動をもって流す、涙の声がある。
「……『わたし、さよならをどう言えばいいかわからないの』。」
「……こ、こんな……」
「こんな美しい
「今ならわかる。オレにも、このシーンの意味が……」
「……
「話しかけるな! このクソバカ。人が浸ってるところで」
自分に耳打ちする黒イミーを『べしんっっ!』と引っぱたいて、
「あ~あ。すっかり意気が
「皆、真剣に見入っています。死者や失神する者も増えていますが、想定内の数値です」
「重畳。全国民・思想洗浄計画は順調と言える」
きらきらとラメの入った黒いロングドレスは、背中と胸元を大きく開け、スリットから白い脚を
「旧世代の古い思想を全日本人の
「はっ」
「おかわり」
「はっ」
「ふ~んふふんふ~~ん♪ ふ~んふふ~~ん」
「…………。」
「ふ~んふふ~~ん♪ ……おい。当てろ」
「インディ・ジョーンズです」
「昇給だ。一層励め」
「ははっ」
「さあて、準備は整った。あとは、演者の現場入りを待つだけだ……」
ぱちん! と指が鳴る。運転手のイミーくんはすばやくアクセルを踏み、そのまま
***
黒鉄旋風・
一年前、
「やあただいま、勤勉なる
声も姿も、女のそれである。が、サングラスの奥から
「音沙汰なくて申し訳なかった、ちょっとあの世にお邪魔していてね。
邪悪の県知事・
その日を境に、街中には
『思想洗浄計画』と題目をうたれたこれが、何かというと……
市民に対し、
その日その日を生きるのに精いっぱいの現代人にとってこれはとんでもない弾圧であり、クーデターの動きも起こったがこれもすぐに自警によって鎮圧された。自警団団長・パウーの人が変わったような
度を越した独裁、悪政の極み──
しかしその一方、軍略において新生
日本の軍力の要と言われる
今では日本中が、にこやかなイミーくんの笑顔におびえながら、何のためともわからぬレポートを延々と書かされている──と、そういう