錆喰いビスコ6 奇跡のファイナルカット
1 ①
「
チロルがディスプレイ付きの認証機に職員証を通すと、画面に現れたクロカワちゃん(三頭身マスコット)が「Have a good friday!」などと言ってよこした。職員寮の美人受付はそれを確認して、丁寧にチロルへ頭を下げる。
「今週もお勤めご苦労様でした。お部屋の清掃は済んでおります」
「あい。あんたもご苦労さん」
「それで、その……」
美人受付は少し困惑した調子で、チロルの後ろに立つ人影を
二人のイミーくんである。
その
一方の赤イミーだが、これは……
どう見てもひん曲がっている頭に、耳の片方がへし折れ中から綿が出てしまっている。スーツは
およそ『野生のイミーくん』とでも呼ぶのが
「なに? 自社株なら買わないよ」
「いえ。お連れの、お二方についてですが……」
美人受付は赤イミーの異様からはっと我にかえり、チロルへ向けて言葉を続ける。
「当職員寮は、Cクラス以下……つまりイミーくん以下の職員の方は、業務以外での立ち入りを禁止されております。ですので……」
「なら問題ないでしょ。『業務』で呼んだんだから」
「業務、と申されますのは……?」
「あのね~~。あんた、そこまで言わせるわけ?」
チロルは露骨に機嫌を損ねたような表情を見せ、受付嬢を
「女ざかりのあたしに、こんなお堅い仕事退屈でしょうがないし、ストレスだって
「あっ、いえ、けしてそんな……!」
チロルの明け透けな物言いに美人受付は顔を赤らめ、どうやらそれ以上の追及をあきらめたようであった。
「お呼び
「土日は掃除に来ないでよね。気が散るから、ノックもしないで!」
チロルはエレベーターに向かって歩きながら受付にそう言い、二体のイミーくんを招き入れてドアを閉める。閉まってゆくドアの向こうで、深々と受付嬢が頭を下げた。
上へ上がってゆくエレベーターの中でチロルは脱力し、
「…………ふう。やァれやれ」
スーツのネクタイを乱暴にほどきながら扉にもたれかかった。
「ひとまずこれで。……灯台下暗し、職員寮にあんたらが居るとは思わんでしょ」
「ありがとう、チロル! やっぱり頼ってよかった!」
「なんて恥を知らねえやり方なんだ」
喜色満面にチロルの手を握る青イミーとは対照的に、赤イミーが苦虫を
「俺がおまえの親なら泣いている。百歩譲っておまえ自身はいいとして、俺がおまえに
「ガタガタうるせ~~っっ!! 少しは感謝しろ、赤ウニ頭!!」
「あ、赤うにぃ……!?」
「新しいね! チロル、それもらっていい?」
「着いた。ほらこっち、急いで!!」
赤イミーが聞き慣れない罵倒に異議を唱える前に、スパイじみた動きでチロルはエレベーターから出ると、二人を自分の部屋に押し込んで、用心深くドアを閉めた。
***
【
美貌の女修羅パウー ま た ま た 大手柄
先日未明、
「キングコング 対 ビッグクラブ、か……あまり
とコメント。パウー自警団長はコメントに応じなかった。(
『〈社説〉 危険因子キノコ守り 最後の警鐘 3面↓』
『4コマ漫画「アカボシくん」は作者急病のため休載します。』
「つまりぃ、これを読んで、のこのこ県庁まで現れたわけか……」
二人から手渡された
「あのね。こんなモン、あんたたちを
「
「アクタガワを
そう言葉を返す少年たちは、イミーくんの頭を脱いでスーツだけになり、チロルが奮発して買った高級ソファに二人して
「わあ~っ。これ、めっちゃふかふか~~。だめになる~~」
「くつろぐなってば! それ高いんだからっ、キノコの匂いがついちゃうじゃんっ!」
チロルはようやく少し冷静になると、二人の間にぼふんと座り込んで、新聞記事に載ったアクタガワの写真を指し示した。
「確かに! 確かによ、二日前にかなり大型の輸送車が県北の兵器工場に運び込まれたのは知ってる。心当たりはあれしかない。助けるなら早くしないと」
「場所がわかるんだな?」
「
パウー、との一言が出て、ビスコとミロはやや真剣な表情に戻り、顔を見合わせた。
「今のパウーには
というチロルの言葉は、ビスコの強気をしても本当のことである。
外道のキノコ守り・
洗脳キノコ「
これまで潜伏を続けた一年間、ミロの研究によって
「ビスコ、チロルの言う通りにして。なんとか僕が
「誰も嫌だとは言ってねえだろ。犬ッコロか、俺は!」
(犬みて~なもんなんだよな~)
猛犬とパンダを交互に見つめてチロルが
「あれ? テレビが……」
ちょうどソファの向かいでちらつく砂嵐に、三人の視線が
そこに……
『特番!
大仰なジングルとともに、ディスプレイの中でカラフルな太文字が躍った。
なんだか
『善良なる県民の皆様、こんばんわ。本日は
司会が促すとカメラが横へパンし、
〈
なる、ごてごてに装飾されたボードが
「……なんだこりゃ??」
突然始まったよくわからない展開に妙に気合をすかされて、怨敵・