錆喰いビスコ8 神子煌誕!うなれ斉天大菌姫
1 ④
不純物として『でろ』と吐き出されたバックパックを顔から引きずり出し、メア大統領はそれを無造作に箱舟から空へ投げ捨てる。そして胸ポケットのハンカチで顔の周囲を拭うと、
『グレイトフルな生命力。力が
「てめえッッ!! アクタガワを、どこへ飛ばしやがったッッ!」
『おめでとう! アクタガワ君は、無事、当職の
ミロをかばって、
『
「アクタガワと、北海道が……
さっきから驚くたびに
「それじゃチャイカも。スポアコの皆も、おまえの中にいるのか!?」
『そうなのでは? いちいち確認していないが。めでたいことだな。おっと、
メア大統領は喜色満面(だと思われる)の顔にぼこぼこと泡を立てて、アーミーの募兵ポスターさながらに『びしっ』と二人を指さした。
『JOIN US! 遠慮せず当職の胸に飛び込みたまえ!』
「ミロ、やれるか!?」
「あなどらないでッ!」
覚悟を決めれば動きは早かった。ミロは乱暴に口を拭うと、ぎらりと
「
「! きたぜ、この感覚はッ!」
キューブは弓引くビスコの両手に、輝く虹色の橋を架け……
『ムウ!? これはッッ』
「顕現、」
「「
ずわおっ!
衝撃とともに、ビスコ&ミロの持てる最高
箱舟にすさぶ風に吹かれて、ナナイロの胞子が弓からほとばしり、二人の少年を
『ビューティフォー……!』
「おい大統領ッッ!! 今ならまだ撃たねえで済む。お前が吸った命をぜんぶ戻せ!」
『君は破滅主義者かね? マイノリティに発言権はないぞ』
「あるよッ! 世界はどうかしらないけど。日本の命は、おまえを信任してないぞッ!」
『なにい──!』
大統領のアキレス
世紀末日本から、
『──野党か貴職ら。
その言葉は言ったミロの思惑よりはるかにメア大統領に打撃を与えたらしい。『ぼごぼごぼごっ』と
『よかろう。それに耐えることが信任たるのなら、受けてやる。
自信満々に言い募るその耳元に、
ちゅるんっ! と海水が受話器の形を取って顕現し、りりりりん、と音を立てた。
『む。ちょっと失礼、ママから
「そっちがその気ならなァァ───ッッ!!」
『──え。
急にしどろもどろに慌てだすメア大統領の眼前で、二人の少年は胞子を大きく噴き上げ、臨界寸前までお互いを高めていく。
「ミロ、撃てるぞ!」
「……待って。お、おかしい……!」
必殺まで今一歩の
『オー、ゴッド! まだ辞任は考えていない! このような事態、誠に遺憾で……』
「痛い……お、おなか、が……!」
『おや?』
「ミロ!? だめだ集中を切らすな! 弓が……うわァッ!!」
しゅぱんっ! と、弓から
形成に極限の集中を必要とする
分解された
ごごごごっっ!! と口から体内に潜り込んでゆく!
「うわあ──ッッ! ごぼごぼごぼ、ごぼーっ!」
「ミロッッ!!」
ナナイロの胞子は
「うわああっ。何かいるっ。僕の、なかに、何か!」
「腹に何か居るだって!? 何か
「助けて。ビスコお願い、怖いよっ」
「畜生、野郎ォォッ」
ぎんっっ! と、それ自体が矢のようなビスコの瞳で射抜かれて、メア大統領は『ええっ』と困惑気味に後ずさった。
「ミロの
『秘書が行ったことで記憶にございません。ではなく本当に当職は何も……!』
メア大統領、そこで『いや待て』とはたと落ち着き、
『どこに言い訳をする必要が。いま有利なのは当職では?』
やおら自信を取り戻して、両の足でずしんずしんと前進してくる。
『なんだか知らんが助かったらしい。大統領たるもの運も持ち合わせるものだ。さあ、おとなしく保全されたまえ』
「くそッ。やらせるかッ!」
「ビスコ!」
自分の前に立ちはだかろうとするビスコの手を、
「だめ、こわい、離れないで!」
「どうしたんだ、バカ! そこに敵がいるんだぞッッ!」
「何かが出てくる! 僕の中から、なにかが……か、かひゅッ、ごぼっ」
とうとう、喉から絞り出すような音を出すのみとなった相棒へ、ビスコも
「ミロ!」
『
「ビスコ、もう……!」
「心配するな。死ぬときは一緒だ!」
「う、産まれるう……!」
「──はあっ!?」
『安寧を享受せよ! 海波! ライフ・オーシャン・ストリィィ──ムッッ!!』
ごうッッ!
大統領の
その寸前に!
「 お え゛ 」
しゅぽんっっ!
「 マ゛ ──────── ッッ!! 」
何か、半メートルほどの輝くものが。
空を裂くような
「 マ゛ゃ─────ッッ!! 」
べぎんっっ!!
『──ごおわあああああああ───ッッ!?!?!?』
潜水服をべこべこに
どがんっ、ずがんっ!! 二度、三度と地面を跳ねるその
「 ず っ どどど──んっっ! 」
小さなものは片手を上げ、勝利の
メア大統領より、少年二人のほうである。
「な、」
「なんだああっっ!?」
「ママ───っっ」
「うわっ!?」
小さなものは、
「まんま」
「ま……ママって、ぼくが!?!?」
「ぱっぱ」
「ええっ! 待て待て待て! 身に覚えが……」
「きゅははっ」
『な、なあんという……』
じつに距離にして50mほどはブッ飛ばされたメア大統領が、潜水
その気風は意外なことに、
『なんという、