錆喰いビスコ8 神子煌誕!うなれ斉天大菌姫
2 ①
からりと晴れた昼に。
くちなしの花が白く咲き、伸び行く
あらたな
若き王、シシが先頭に立って
今では、先王とはまた違う実直なその在り様にすっかり心を打ちとけ、「シシ王様」「おやかたさま」と親愛の情を示すようになっている。
その
王にいらぬ手間をかけぬようにと、諸般すべての雑務を請け負っておる。
「
シシもこう気遣うが、頑として首を振るばかり。
「心配御無用。泰然として玉座におればよい。それだけが王の務め、器である」
「しかし建国の大事な折だ、金も要るだろう。この宮殿だって、貧乏県に似合わぬ
「喝ッ!」
「王たるものが金の心配とは、度量小さきこと。万事、この
尺を振りかざし、そう言い切ったものである。
シシも「はあ」とあきれたような
「ありがとう、
「苦労と呼ぶにはあまりに
「ははは!」
実際、
仕事風景を
「
「つれねが! ひん、あるめんど、けれ。ゆびし、おーぼる!」
「つれねがねが! ひばりゃんご、けれ、ばーびる。ひぼ、おーぼる!」
「
「要らぬ!!」
鉄の判官サタハバキ、巨体をずいと持ち上げて、
「商売の心得足らぬは一発の損。そして語学の心得足らぬ
「「ゆ、ゆほー?」」
「三方ともに、この痛みもて猛省せよ!」
びしっ、びしぃっ!!
手加減込みとはいえ、強烈なデコピンを繰り出す!
そして一方! ばぎいんっ、と自分の面を思い切りブン殴ったサタハバキ自身も、ものすごい勢いで後方へブッ飛んでゆく。
どがあんっっ!
「そ、
「これぞ大岡奉行の名お裁き。三 方 一 発 損 のそれであるッッ」
「これにてェ、ぁ一件、落着ゥゥ────ッッ!!」
かかんっ!
こんな具合でかなりのスピード裁定だ。
一日に二十を超す裁判を行うのだが、
「
「よい。それより、客人の具合はどうか」
「は。それが……」
「皆まで言うな。
どうやらその『客人』の世話に、ずいぶんと心を砕いているようだった。
どしん、どしん、とその
「おいっ! 出さないかーっ! これを解け、誰もいないのか!」
客室からやかましく怒鳴る声が聞こえる。
「シシ──っ!! いないのか!? ここから出してくれ──っ!!」
サタハバキは、やれやれ、といった風に首を振り、
そこには。
「ああっ。法務官殿、これはどういうことだっ!?」
服はいわゆるマタニティ仕様の着物に着替えさせられており、
「身動きが取れない。これを外してくれ!」
「いかぬ!」
サタハバキ、歯をがちりと鳴らし、
「解けば暴れよう。御身は今や大事な
「気が早いのだっ! 私はまだ一ヶ月で……」
「わかっておる。食が進まぬというのだろう……特に御身のような肉食系の御仁は、急な食的
(だ、だめだ。ぜんぜん話が通じない!)
確かに、
「パウーはとにかく無茶が多いから。必要以上に暴れないように」
そういう注意が医者のミロからあったのは、事実だ。
ただ任せた相手がまずかった。最初はシシ自身が世話を申し受けたのだが、王たる者の仕事にあらずとしてサタハバキが猛反対。自らが世話を申し出て、今に至る……。
それでまあ、この
思いこんだらゼロか百かしかない。母体を
「今から
「ええっ!?」
「桜のアイスクリームである」
「氷は塩を加えることで氷点下20度ほどになる。鉄の筒に
「さ、裁判官殿。料理の時ぐらい、籠手を外されては?」
「そうして筒を開け、中身を盛れば……」
サタハバキの屈強な
「おおっ……!」
「腕を解いてやろう。めしあがれ」
「あ、ああ。これは
スプーンで
「しょっっっっっぺえっっ」
顔を真っ赤にして叫んだ。
「昨今のトレンドを
「甘さ控えめは塩を足せってことじゃないぞっっ!!」
「塩は砂糖とお互いを高め合い、しかも厄を
ごおん、と響く正午の鐘の音を聞いて、
「
「あっ、ま、待て! おなかの枝を外して……!」
「はたしてどんな傑物が産まれおるか。今から、
がちがちがち!
それが笑いであるらしい、白柱のごとき歯を鳴らす仕草をして、
サタハバキはそのままズシンズシンと公務に戻っていった。
「……はあ~~~っ……」
どっと疲れた、という言葉が適当であろう。
パウーはバカっ広い客間で一人、頭を振って