錆喰いビスコ9 我の星、梵の星
2
「うおお───っ、勝つっっ!!」
威勢のいい声とともに、ビスコは跳ね起きた。
大きな天幕の中である。
屋根から
「………???」
自分の中で燃える高揚感を持て余して、寝ぼけた頭をひねった。
(…………あれ?)
(なんで寝てんだ、こんなとこで……)
(俺はミロと
(それで……?)
不思議そうに自分の
そこに、
「パパ?」
隣で眠っていたシュガーが、
「どうしたの、きゅうにい?」
「……シュガー、」
ビスコは数秒間、娘の姿を見て固まっていて、やおら「うわあっ」と慌てたようにその
「シュガー! い、いつの間に結界から出たんだ!?」
「けっかいぃ?」
「戻らないと狙われちまう! そうだ、
「さびがみ?」
「…………???」
だれだそいつ?
ビスコは自分で言った言葉を自分で理解できず、口を開けたまま混乱に
「どーせオバケの夢みたんでしょ。シュガーが
「いや、違う、俺は、」
「あしたは海で一日中あそぶんだから、パパもちゃんと寝ないともたないよ。きのこおねんね、ぷ~いぷい。はい、おまじない」
「頼むよ、聞いてくれ、シュガー!」
「いやです。おやちゅみ」
スコーン! とそのまま自分とミロの間に倒れ込み、秒で寝息をたてはじめる娘を見つめて、ビスコはしばし
右隣には、シュガー、ミロ。
左には、パウー、ソルト。
なぜかついてきてるチロル……。
そして天幕の外からは、アクタガワの気配を感じる、いつもの旅暮らしの夜である。ビスコは徐々に記憶をはっきりさせて、先ごろまでの不思議な夢を忘れてゆく。
(俺は、何を見たんだ?)
(もう思い出せねえ。)
(なのに肌触りだけ残ってる……。)
(気味悪いぜ。)
(こんど先祖
(くわばらくわばら……。)
ビスコはシュガーのとなりでふたたび毛布を
(寝れん!!)
結局夜が明けるまで眠りが訪れることはなかった。