錆喰いビスコ9 我の星、梵の星
4 ②
「文句ゆうな! せーの!」
「「「ずっどどどん!」」」
掛け声とともに分解した
「来ぉぉ────いッ、
ひゅんひゅんひゅん、ぱしっ!
神器『
「ホームランだっっ!!」
ばぎんっっ!!
「!?
想像以上の手応え。しかし
(こいつ、ただの
シュガーは先手必勝とばかりに再び
「ちぇぇえええすとおおお──っっ!!」
「…………う。」
「──あぇっ!!?」
危うい所で
(こ、これって、)
その燃え
(人間っっ!?)
それがどうやら大柄な、人の形をなしていることがわかってきた。
更に驚いたことには、
(この人……女の人だ!!)
気付いてみればそれは一糸まとわぬ女の
(何でなんも着てないの!?!?)
「だ、だれか、そ、そこに、いるのか。」
輝くものが
びくり! と
「ミロだな、無事なんだな。大丈夫だ、あたしが、守るから……。」
「! 動かないでお姉ちゃん。ここは海の上だよ!」
「くそ、
「しっかりして! そぉいっ!」
シュガーは海面に、ぼうんっ! とキノコを咲かせて足場を作ると、
「よいしょ、よいしょ……」
そこに女のすさまじい
一見悲惨な状況に見えるがしかし、
(……このお姉ちゃんは人間じゃない。神様に近い!)
シュガーはすぐに、女の全身の
眼球ぐらい燃え落ちたところで、再生は容易であった。
「だいじょうぶ、シュガーが治してあげる!」
「……シュガー、だって??」
菌神シュガーは先天的善性に従い、その得体の知れない女を助けるために
「ついでに服も着せてあげるね!」
「……おまえ、は……。」
虹色に輝くシュガーの
「じゃじゃ──ん! 菌神さまのご
「…………、」
「シュガーが近くにいてよかったあ。お姉ちゃんはどうやら、普段のこころがけがよかったんだねえ。もし他の場所に落ちてたら、いまごろ──」
「シュガー。」
「──はえっ!?」
「シュガー!」
ぎゅうっ!!
強く大きな腕が、
「は、はわわわ……!?!?」
「会いたかった……!!」
(ひ、ひとちがいでわっっ!?)
訴えたいのだが、口がふさがっている。
ありあまるシュガーの力で、突き飛ばすこともできた……しかし、そうはならなかった。震えていたのはシュガーよりもむしろ、
(こ、この人、泣いてるの……?)
感涙にむせぶ、その女のほうだったからである。
「ごめんな。ごめんな……! これからはずっと一緒にいるよ。あたしはもう、おまえから離れない……!!」
(…………。)
「……いや、待て。シュガーは、男の子のはず……!?」
はっ、と何かに気づいたように、電撃的に女が立ち上がる。
「この世界は一体!?」
「どわっ!?」
跳ね飛ばされたシュガーが、あまりの不遜な扱いに文句を言おうとするが、女の様子はそんな気持ちも吹き飛ぶほどに切羽つまり、脂汗にまみれて周囲を見渡している。
「空が青い。風が澄んでいる……。ここは黒時空じゃない! ほ、本当にあったんだ……もう一つの時のながれ、白時空!」
「し、しろじくう~~??」
「あたしはチロルに飛ばされたんだ。てことは、あたしたちは負けたのか? くそ、記憶がぼやけて、何も思い出せない!」
女は半狂乱になって髪を振り乱し、失った記憶を必死に探している。先ほどまでの地母神のような優しさから一転、徐々に
「──でも、一つだけ覚えてる。あたしの、使命だけは!」
女がそう言い、心の内にこみあげる覚悟に瞳を燃やすと、
おのれを、
「ここが鏡映しの時空なら、もう一人のあたしが存在するはず。ラストを倒す力を得るには、あたしが、そいつを──」
「うォォ────いッッ!! シュガ──────ッッ!!」
「! パパ!」
女にどう接していいかわからないシュガーにちょうど助け船を出すように、海の向こうから、波をかき分けて迫るオレンジ色の甲殻が見える。
浜から
「パパーっ! こっちだよ!」
「シュガーッッ!! そいつから離れろ!!」
「はえっ!?」
笑顔で手を振るシュガーへ、ビスコの切羽つまった声が飛ぶ。きょとんとそれを聞くシュガーの横で、女は
「何だァ……? あのチンピラは……」
「「!!」」
二人の精神に稲妻がひらめいた。共鳴と
〈〈なんだか知らんが、〉〉
〈〈負けられねえ、〉〉
〈〈こいつにだけは!!〉〉
「シュガー、あたしに隠れろッ!」
女が