第一章 バクダンのバはバランスのバ①
「ん? あれ? 妹の
そんな私がこれからかかり切りになるであろう新作ゲームが──、
「『
そう、『Life is Adventure』……通称、LIAである。
現実と全く変わらない五感が
だが、どれもこれもが新世代のVR機器の能力をフルに
この問題に関しては開発費や開発規模、開発会社の技術力不足などが嘆かれていたが、今回のLIAに関しては違う。
ゲームレビューを行った雑誌記者全員が満点をつけて絶賛し、あまつさえ「新世界をLIAは体験できる!」と最大の賛辞を送ったほどなのだ。
開発元の株式会社ユグドラシルも、「LIAはひとつの別世界をコンセプトに、五感で世界を感じられるのは
当然のようにLIAはゲーマーを中心に
お陰様で初回出荷本数十万本の購入は抽選制となり、私はめでたく十万人の当選者の一人として選ばれた、ということである。
ちなみに、最新のVR機器はディスプレイ一体型である内蔵バッテリー付きのヘッドギアの形をしていて、これを頭に
更に言えば、先の電波新法の制定により日本国内での無線環境が飛躍的に改善し、従来のネットワークの不安定さや遅延などの問題は完全に解消されている状況だ。
つまり、日本全国のどこだろうと、全員が同じ環境でプレイできるし、勝手にネットワークから切断されたりすることもないというわけである。
うん。技術の革新って素晴らしいね。
「さて、それでは早速、お楽しみのLIAを起動するかな~。ぽちっとな!」
VR機器の電源を入れ、ホーム画面から早速LIAの起動を選択する。なお、ソフト自体は当選者のみに配布されるユーザーコードとパスを使って、事前ダウンロード済みである。
「これは……宇宙かな?」
LIAを起動した私の目の前には真っ黒で広大な空間が広がっていた。
三百六十度見渡す限りの星空の中に一人の少女が浮かんでいるのが見える。
うん、私だ。
相変わらず、
というか、美少女って要領良くないとキツイんですわ。もしくは、鋼メンタル持ちじゃないとね。
男子は馬鹿みたいに下半身に従って告白してくるし、それを素っ気なくフッていると、今度は女子に何様のつもりだよと総スカンくらうし。
私、何もしてないのに完全無視あんどイジメの対象だからね。人とのコミュニケーション能力も高くなかったから
まぁ、今はセンシティブな内容の絵をネットに平気でアップしてニヤニヤするぐらいの鋼メンタルにはなってるけど……いや、あの時は
というわけで、私の暗黒時代そのままの姿が宙に浮いている。
成長? してないね! そういう体質っぽいからね! でも、一部は成長していて、更に男を
で、そんな私が目を開けると、こっちにすぃーっと寄ってきて私の目の前で止まる。
▼アバターの見た目を決めてください。
そして、ずらりと整列する変更要素のアイコン群。
うーん。決定できる項目多すぎじゃない? あ、一応、下にヒントとして思考スキャンで感覚的に見た目は変えられますと書いてあるね。
つまり、髪の色に視線を集中させると……あー、髪の色の項目が選択されて、パレットが出てきたね。へー、一色を指定ってわけじゃなくて、グラデーションとか複数色、ピンポイントでの色変更も自由自在かぁ。
とりあえず、絵師としては細部にまで
そんなわけで色々と探していたら、種族選択なんて項目があった。これで、ベースの姿を変えられるみたいだ。人間、エルフ、ドワーフなんかは基本で、ゴブリンとか、ドラゴンなんかもあったりするんだけど……いや、ドラゴンとか選んで大丈夫なの? いきなりの四脚生活もあれだけど、周りに仲間いなそうだし、人間に討伐されそうになる未来しか見えないんですけど?
「あ、魔物族とかもある」
これ、
しかし、私は何を選んだら
「これ、特殊な種族は人数制限あったりする?」
もし、そうだとしたら早いもの勝ちだ。のんびりと容姿を決めている場合じゃないのかもしれない。いや、でも、
「うん。人族だけはやめておこう。中学時代の二の舞いになりたくないし」
人族のアバターは容姿をあんまり変えられないみたいなんだよね。人の域を出るなってことなのかな? とにかく、男に寄ってこられてゲームどころじゃない事態にだけはなりたくない。
とはいえ、魔物族もなかなかに個性的な見た目の連中が多い。やっぱり、人間っぽい見た目の
「吸血鬼とか? うーん、弱点がわかりやすいのはちょっと……」
有名すぎて、弱点丸わかりの種族もNGだね。対人戦で対策されて終わる未来しか見えない。
色々と探していたら、ちょっと
「ディラハンねぇ……」
首なし騎士として有名なデュラハンのLIAバージョンなんだけど、アンデッドじゃなくて妖精扱いみたい。
というか、なんでデュラハンじゃなくて、ディラハン? とは思うけど、まぁ、ゲームによって呼称が変わったりするのはよくある話だしね。どう見てもスライムなのに、ゲルとかって名前だったりすることもあるし。
だから、このゲームではディラハンって呼称なんだろうなぁって納得することにしとこう。そこツッコんでも仕方ないし。
まぁ、もしかしたら、デュラハンって聞くとアンデッドのイメージが強いから、それとは別で妖精ですよ~って運営が言いたかったのかもしれないね。
というか、ディラハンは首なし騎士という
とりあえず、種族をディラハンにしてみて、見た目を確認。
そうしたら、私の生首を小脇に抱える首なし女騎士ができあがった。
「怖っ!」
というか、視線の位置大丈夫? 酔わない?
そう考えていたら、視線がアバターのものに変化して急に下がった。
うーん。違和感はあるけど慣れるかな?
というか、頭の位置を元に戻せば問題ないか。
えいっと頭を首にドッキングさせたら、普通に強そうな騎士状態になっちゃったよ。
うん。いい感じ。よし、種族はディラハンにしよう。
で、
そんな感じでデザインを