第二章 ドラゴンのドは同行者のド①
私が馬車で
それが、馬車で
一応、プレイヤーかどうかは目を凝らすとその人の周りにオーラのようなものが見えて、それが青だとプレイヤー、緑だとNPC、赤だとモンスターだと攻略掲示板には書いてあった。
だから、この小さいトカゲも青色に光っているからプレイヤーだとわかったんだけど……。
「とりあえず、証拠隠滅のために、この小さなトカゲは埋めておこうかな?」
「おいぃっ!? 何怖いこと言うてんねん!?」
チッ、どうやらスタンが解けてしまったようだ。じっくり観察なんてしてなきゃ良かった。
「何舌打ちしとんねん!
「まぁまぁ、トカゲさん。落ち着いて」
「トカゲちゃうわ! ドラゴンや! フェアリードラゴンっちゅう、ちっちゃなドラゴンさんや!
「自分で言う?
それにしても、フェアリードラゴンって……。
某国民的RPGでそんなモンスターいなかったっけ?
「ちゅーか、アンタ、プレイヤーやろ」
「そうです。ロマンチックな出会い方をした私はプレイヤーです」
「せやな。パンを
「ノリいいですね」
「お前がやらせたんやろ!?」
目を怒らせながら、こちらを見るチミドラゴン。
うん。悔しいけど、ぷりてぃ♪
「しかし、アンタ、顔いじりすぎやろ。どんだけ
「そりゃどうも。でも、顔は無修整ですので……残念!」
「馬車ぁ! 馬車をそんだけ
なるほど。普通に考えれば、自分のアバターのデザインだけ手を抜くって考えはないか。
いいね。それで押し切ろう。
実際は武器防具と馬車と
「馬車も無修整です」
「せやったら、ワイのドラゴンフェイスも無修整になるわ! って、なんで対抗せなアカンねん! おかしいやろ!」
第一
まぁ、嫌な人でなくて良かったよ。いきなり嫌な出会いをしていたら、しばらくログアウトして戻ってこないところだったし。
「まぁ、エエわ。ワイの名前はタツ言うねん。見ての通りの魔物族プレイヤーや。アンタは?」
「私はヤマモト。一応、人族プレイヤーに見えるけど、ディラハンだよ。ほら」
カポッと頭を取り外すと、タツさんは驚いて三メートルぐらい後ろに飛び下がる。
「うわぁ!? ビックリしたぁ!? なんや、それ! 人ちゃうやんけ!」
「おんなじ魔物族プレイヤーだって言いたかったんだよ」
カポッと首と頭をドッキングさせて、キュッキュッと
これで、簡単には外れないよ!
「なんや、アンタも魔物族プレイヤーやったんか。見た目に
だろうね。今も視界の片隅で矢印が存在感を主張してくるし、多分、タツさんも同じ矢印が見えてるんじゃないかな。
「せやったら、一緒に行くか? ヤマちゃん?」
「ヤマちゃん」
<画像>
「アダ名や、アダ名。プレイヤー名なんて
「なるほど」
凝りすぎて、どう読むのさ? という名前もネット上にはよくいるもんね。
「いいよ~、一緒に行こう。タツさんも私の馬車に乗りなよ、移動が楽だよ~」
「その馬車、ワイ
何か言いたそうな目。けど、私は完全にスルー。
とりあえず、利便性を前面に押し出す。
「楽だよ~。プレイヤーは静止状態だから、自然回復のスピードが少し上がるし、モンスターは
「それで、ワイも死に戻りしそうになったんやけどな? まぁ、ええわ。せやったら頼むわ。正直、HPがレッドゾーンでシンドイねん」
思いもよらないところで、
「何や、そのホクホク顔……。一応、言っとくけどなぁ。ワイのステは紙装甲やからな? 馬車を武器として計算するのはやめといた方がえぇぞ?」
ちなみに、HPが一発レッドになると、スタン状態のオマケがつくんだって。
なんだ。馬車の
私はちょっとだけガッカリしながらも、タツさんを御者台に乗せて、街への道を急ぐのであった。
◆◇◆
「ワイなぁ、こう見えてもアルファテスターやねん」
馬車に乗りながら、時折モンスターをシバきつつ、タツさんと話をしていたら、急にそんなことをカミングアウトし始めた。
何か妙に、『魔物族は進化があるから選んだ』とか言ったり、モンスターとの戦い方にソツがなかったりするところに深い知識と経験を感じてたんだけど、どうやら開発段階のゲームで遊んでいた経験があるらしい。
「言うてもバイトやけどな。バグ見つけては開発に報告するみたいな
「へ~、だから、なんかモンスターとの戦いも手慣れてるんだ?」
普通、いきなり四足歩行の生物になった時点で移動が困難だと思うんだよね。なおかつ、フェアリードラゴンってほぼ空を飛んでいるから、空中での姿勢制御に全力を尽くさないといけないはずなのに、モンスターの弱点に的確に攻撃してるし、始めたばかりの
「まぁな。ちゅーても、途中でやめたんやけどな」
「何でまた?」
「バグが多すぎてなぁ。報告しても報告しても、終わらなかったんや」
なんか心当たりがありすぎるんだけど……。
「まぁ、あの時は散々やったけど、こうして発売に
そういえば、このゲーム、ベータテストのプレイヤーを公募しなかったとか、ネット記事で見た気がする。その時は、守秘義務だとか、専門のテストプレイヤー集団がいるんだとかいう書き込みを見て勝手に納得していたんだけど、今となると随分と怪しい話にも思えてくる。
まぁ、ネトゲは運営しながら改善していくって部分も少なからずあるし、ゲームのリアル感や自由度は今までに体験したVRMMORPGの中でも群を抜いているので、そこはプレイヤーの目が向いている内に改善されていくといいなぁとは思うかな。
「そういえば、このゲーム、味覚も再現してるって本当?」
「モチのロンや。貴族連中が食っとる高級飯なんぞ、味覚の新次元ってレベルで
「うわぁ、食べてみたいなぁ……」
はぁ、分厚いステーキ肉とか食べたい……。
むしろ、【料理】スキルを取って、自分で料理するのもありかもね。未知の食材を調理して、どんな味がするのか楽しむっていうのも面白いよね。
「まぁ、味覚が再現されてるっちゅうのは
「下……。もしかして、タツさんは下も味わった……?」
「運悪くテスト項目にあったわ。舌の感覚失くなるレベルでおかしいから、気ィつけぇや」
「気をつけるレベルでどうにかなれば
タツさんとなんだかんだお
まぁ、私の馬車は大きいからね。森林破壊しないで進める道を選んでいると、どうしても遠回りになっちゃうんだ。
それでも二時間もしない内に、見上げると首が痛くなるぐらいには立派な城壁が見えてきた。
「タツさん、多分だけどあそこが目的地じゃない?」
「ワイもこの辺の開発には関わってなかったから知らんけど、多分そうやないか?」
一応、目的地に到着ってことでいいのかな? そうなると……。
「そろそろ、馬車をしまわないと」
「別に街中でも馬車の通行はNGとちゃうやろ」
「いや、色々と面倒くさい条件がある馬車なんだよ」
というわけで、森近くに引き返して、何かデップリと太った毒々しい
「あなたに死を宣告します!」
▼毒々
どう見ても
「斬り捨て御免!」
動けない
▼死の宣告に成功しました。
▼経験値12を獲得。
▼
▼【バランス】が発動しました。
取得物のバランスを調整します。
▼
「なんや!? 馬車が消えよったぞ!?」
馬車が消えても宙に浮くことで、
「そういうスキルだからね」
「けったいなスキルやなぁ」
まぁ、条件は変だけど、便利は便利なんだよね。
「それじゃ、街の方に行きましょうか?」
「せやな。とりあえず、チュートリアル受けたら、装備とか更新したいわ」
「タツさんの体に合う装備なんてあるの?」
「まぁ、特注になるやろなぁ」
「それだったら、私が作ろうか?」
「はぁ? ヤマちゃん、装備とか作れるんか?」
「
「生産職志望やったら、取るスキル多くなるから、よう考えて取らんとすぐSP
「肝に銘じておくよ」
まぁ、まだ何も生産系のスキルを取ってないんだけどね。
ディラハンの
「まぁ、ヤマちゃんに装備頼むにしても材料
「出しゃばっちゃったならゴメンね?」
「えぇよ。生産職志望とか珍しいから、ヤマちゃんと縁が持てたんはエェことや」
生産職志望って、そんなに珍しいのかな?
まぁ、魔物族側で生産職というのは結構珍しいのかもしれない。武器を持って戦う魔物族が基本的に少なそうなんだもん。あとは、物作りで有名なドワーフが人族側だし、その関係もあるのかも。
もしかして、私ってニッチな産業を始めようとしてたりするのかな?