第1章 深窓の令嬢の夜の顔⑦
自分でも理解はしているが、何となく今のスタイルのほうが性に合っている。
「あ、あの、よかったら今度……」
「うん?」
「い、いえ、何でもないです……」
それから今度は、たたっ、と逃げるように窓へ寄る。
「あ、やっぱりうちが見えますね」
やけに
「ほら、あそこ。あそこがうちです」
ここは坂の多い街だ。おかげでこのマンションも街の外れの斜面に立っていて、街全体がよく見えた。ただ、
「あ、もうこんな時間。そろそろ出ないといけませんね」
確かに予定通りの時間と場所で落ち合うつもりなら、もうとっくに家を出ておかないといけないタイミングだ。だが、その
「す、すみません、
「うん?」
いったい何がはじまるのかわからないが、僕は言われた通り
「どうした?」
「出かける前に着替えようと思って」
「ちょっと待て」
僕は慌てて声を上げた。確かに
このタイミングならまだ服は脱いでいないだろうが、念のため振り返らずに続ける。
「あっちに脱衣所があるからそこを使え」
「そ、そうですね……」
言われてようやくそのことに気づいたようで、
彼女の姿が見えなくなると、僕はため息を吐いた。それは
「お待たせしました」
程なくしてそんな声とともに
彼女は赤いタータンチェックのスカート姿だった。上は肩も
「洗面台もお借りしていいですか?」
僕が何か感想を言うよりも先に、
つられるようにして僕も後を追い、中を
「あ、あの、そこでじっと見られると、その……」
「悪い」
僕はその声に追い立てられるようにして、その場から離れた。
意味もなく窓の外を見る。先ほど
それにしても落ち着かない気分だった。
教室では深窓の令嬢然としている
とは言え、彼女には自分を解放する場所が必要なのかもしれないとも思う。
「終わりました」
「ど、どうでしょうか……?」
そこにいた彼女は先ほどの服に加え、はっきりめのメイクに凝ったヘアスタイルをしていた。こうして見ると、明るい茶髪が今のスタイルによく似合っている。バリバリのギャル系というわけではなく、ややひかえめなそれだった。まぁ、もとがあの
「ああ、似合ってるんじゃないか」
「ほんとですか? よかったです」
僕のひと言に、彼女はほっと胸を
「じゃあ、行こうか」
「あ、待ってください」
そう言って