ほうかごがかり 【このラノ2025記念復刻SS】
著者:甲田学人 イラスト:potg
「ほうかごがかり」の放課後
※注意!
3巻から登場のキャラクターの話なので、読了後に読むことをお勧めします。
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啓が、菊といっしょに由加志の家に行くようになってから、何度目かのこと。
「……遠藤君は、『太郎さん』には会ったんだよな?」
「ん? まあ、最初の何度かだけだけど」
たまたま啓がした質問と、由加志の答え。話のついでの、理由も憶えていないくらいの何気ない質問だったのだが、それへの由加志の答えはともかくとして、次に口にした言葉は、啓にとって意外に思えるものだった。
「なんつーか……仲良くはなれそうにない奴だよな」
「え」
思わず顔を見た啓を、「なに?」と見返す由加志。意外だった。啓はてっきり逆だと思っていたのだ。
「いや……二人ともオカルトにくわしいみたいだから、話が合うかなって思ってた」
「はー?」
啓が言うと、由加志は露骨にイヤそうな反応をして、顔をゆがめる。
「あいつと話なんか合うわけないだろ」
「でも、おんなじ話題で話ができるだろ?」
「あんた、オカルトが全部おんなじだと思ってるな? ジャンルが違う。おれの専門は、超能力とかUFOとかUMAとか魔術とか、この何もかも分かりきって決まりきったクソつまらない世界に残った最後のフロンティアなの。おれは健全なオカルトファンなの。あいつは多分、そういうオカルトには一切興味ないと思うぜ」
「ふーん、そういうもんか」
「そうだよ。だいたいあいつ、くわしいだけでオカルト嫌いだろ。オカルトの話題で盛り上がりたいとか、絶対思ってないと思う」
普段のボソボソとした話し方とは一転して、饒舌に早口で主張する由加志。それを聞いて啓も、確かにそれはそうかもしれないとうなずく。
「それにあいつ、絶対イヤなやつじゃん……あんたらはあいつ平気なの? 嫌味しか言われた記憶ないんだけど」
「……まあ」
「大して話なんかしたことないけど、あいつとは仲良くできないってすぐ分かったね」
ふと、啓は思い出した。忘れていた出来事。由加志に初めて会いに行った後の『ほうかご』で、それを『太郎さん』に報告した時のことを。
「会ってきた。七人目に」
「あ、そう」
「どうでもよさそうな反応するんだな」
「興味ないからね。引き継ぎの内容にも興味ないし」
「……」
「だいたいあいつとは大して話してもないけど、仲良くなれそうにない」
思い出した。
由加志と『太郎さん』。その、そっくりな物言いを。