年下の女性教官に今日も叱っていただけた

第2話 勇者訓練校でも折檻していただけた④

「本当にすごかったです。レオンくんはお強いんですね……」

 午後の授業終了後、シエラさんが俺に駆け寄ってきてそう言ったのだが、なぜか元気がないように見えた。

「シエラさん……どうかしたんですか?」

「い、いえ……。自分でもよくわからないんですが、子どもの急激な成長を目の当たりにして、嬉しさと同時に切なさが込み上げてきた感覚というか……」

「……?」

 シエラさんが何を言っているのか、よくわからなかった。子どもの急激な成長……?


「もはやレオンさんには、私は必要ないんですよね……」

「いや、ものすごく必要ですが。箸はぜんぜん使えないですし、今後も授業でわからないことがあったら教えてほしいです」

「そ、そうですか?」

 シエラさんの表情がパッと晴れ渡った。


「じゃあ、今からどこかで今日の授業の復習をしますか?」

「あ、すみません。実は、リリアさんに闘技場に残るように言われているんです。特別授業があるみたいで」

「そ、そうなんですね」

「はい……。なので非常に残念ですが、勉強を教えてもらうのはまた今度ということで……」

「わかりました。じゃあまた明日」


 シエラさんは小さく手を振り、俺を残して立ち去っていった。彼女からの誘いを断らざるを得なかったというのは痛恨の極みだ。

 他の学生たちも闘技場から出ていき、残っているのは俺とリリアさんの2人だけになった。

「今日1日学んでみて、この学校はどうでしたか?」

 先ほどケンタウルスと闘った場所に移動したところで、リリアさんが質問してきた。


「そうですね……女性がたくさんいて、すごい場所だなと……」

「ずっと鼻の下が伸びていましたもんね。一番のお気に入りはシエラさんですか?」

「お、お気に入りだなんて……。みなさん素晴らしい方々だなと思います」

「誰でもいいってことですか。節操のない人ですね」

「ご、誤解です!」


 さすがに否定したが、リリアさんは疑いの目を向けてくる。

 まぁ……誰でもいいからお付き合いしたいと考えたのは事実なので、これ以上の弁解は不可能なのだが……。


「無駄話はこの辺までにして、特別授業を始めます。まずはレオンさんがどれだけモン娘に弱いのか、調べたいと思いまして」

 リリアさんはそう宣言した直後、スイッチを押して鉄柵を跳ね上げた。どうやらこの柵の向こうは、戦闘訓練用の魔物の待機場所になっているようだ。


 柵が完全に開くと、1人の美少女が外に出てきた。青髪で、水でできたドレスのような服を身に纏っている。

 そのドレスはところどころ透けている上、胸元がザックリ開いており、胸の谷間が見えている。しかもスカートの丈は短く、脚は付け根に近いところまで露出している。

 これが噂に聞く痴女という存在か……!? ありがとうございます……!!


 ――と、そこで美少女の髪の毛が、半透明のゼリーのような材質であることに気がついた。

「これが今日の授業の教材、スライムのモン娘です」

 モン娘を食い入るように見つめる俺に向かって、リリアさんは容赦ない口調で告げた。

「好きな方法で討伐してください。さすがにスライムに負けることはないですよね?」

「……おそらく」

 普通のスライムであれば、刀を使うまでもなく、一瞬で踏み潰すことができる。

 だが……。


「お兄ちゃん……アタシのこと、いじめるの……?」

 スライムのモン娘――スライムさん(仮名)は潤んだ瞳をこちらに向けてきた。

 すぐに目を逸らし、リリアさんの方を見る。


「罪悪感を覚える必要はありません。モン娘は人間を油断させるために可愛らしい見た目をしているだけですから。こいつも村人を襲っているところを捕縛された、邪悪な魔物です」

「で、ですよね……」

 気合いを入れ直し、駆除対象を睨みつける。

「ふぇぇ……お兄ちゃん怖いよぉ……」


 ダメだ。可愛い。

 頭でわかっていても、目の前にいるのは可憐で弱々しい女の子にしか見えない。

 この子を他のスライムと同じように踏み潰すなんて、俺には……。

 などと逡巡している最中、唐突にスライムが突進してきた。

 半透明のドレスから覗く胸が揺れたことに注意を奪われた直後、腹に衝撃が走り、息が止まる。

 そのまま仰向けに倒れた俺に、スライムさんが馬乗りになった。


「あはは! お兄ちゃん、アタシに魅了されちゃったんでしょ!」

 恍惚の表情で俺を見下ろすスライムさん。腹の辺りにおしりのやわらかい感触が伝わってくるし、短いスカートの中が見えそうでドキドキする。

 反撃しなければと思うのだが、体がうまく動かない。これは魅了の影響なのか、それとも俺の本能がもう少しこの状況を味わいたいと思っているのか――

「お兄ちゃんが童貞で助かったー! このまま殴り殺してあげるね!」

 直後、スライムさんは嬉々として俺を殴りはじめたのだった。


         S         S         S


「ドラゴンを倒した人が、スライムごときにやられるなんて……」

 スライムさんを鎖で捕縛して俺を助けたリリアさんが、害虫を見るような目を向けてきた。

 ここは闘技場の控え室だ。スライムさんを檻に戻した後、連れてこられたのである。


「一応確認しますが、わざとやっているんじゃないんですよね?」

「ゴミクズですみません……本当に女性に慣れていなくて……」

「たしかにあのモン娘は肌の露出が多かったですが、所詮は魔物なんですよ?」

「そんなことを言われても……」

 弱々しく答えると、リリアさんは細い眉根を寄せた。

「これは一朝一夕では解決できそうにないですね……」

 リリアさんは腕組みし、しばらく黙考する。


「……ひとまずレオンさんには、モン娘はあくまで魔物、人間の女性の方がいいと思わせなければなりません」

「り、理屈ではわかっているんです……でも……」

「エッチな格好のモン娘を前にすると目を奪われる、ということですか。低俗ですね」

 絶対零度の目つきになるリリアさん。弁解不可能なレベルで軽蔑されている……。でも、男なら仕方ないと思うんだ……。

 たしかにスライムに負けたのは情けないが、モン娘の見た目の美しさは、強さと直接関係ないし……。


「――仕方ありません。こうなったら、無理やり耐性をつけましょう」

 リリアさんは苦々しい表情で言った。

「もしや、大人のお店に行ってこいと?」

「教官であるわたしがそんなことを言うわけがないでしょう。頭おかしいんですか?」

「すみません……。でも、それならどうやって……?」


 恐る恐る問いかけると、リリアさんは心底嫌そうな表情で口を開く。

「……教官として、わたしが何とかします」

「リリアさんが……?」


 その言葉の意味を理解できないでいると、リリアさんは突然、上着を脱ぎ捨てた。

 何を始めるのかと身構える俺の目の前で、リリアさんは白いブラウスのボタンに手をかけ、手早く外し始めた。

 ボタンが1つ外される度、その柔肌が露わになっていく。


 やがて、女性特有のふくらみを包む下着の一部を拝ませていただくことができた。色は白で、所々に赤い刺繍が入っている。

 俺が目を見張る中、脱衣は続く。リリアさんはブラウスを脱ぎ捨ててしまったのだ。

 これで上半身に身につけているものは下着1枚だけになった。豊満な胸の谷間が丸見えで、ものすごく扇情的だ。

 一応気を遣って顔を逸らしたが、これは視界の端に入れざるを得ない。


「リ、リリアさん、いったい何を……!?」

「何って、レオンさんに耐性をつけさせようとしているに決まっているじゃないですか」

 リリアさんは刺々しい口調で続ける。

「レオンさんが変態であることはもはや隠しようがないんですから、目を逸らさずにちゃんと見てください」

「そ、そんなことを言われても……」

 と、一応遠慮している風のことを口に出しつつ、俺はリリアさんの胸元に視線を送った。

 真っ白なふくらみはこの上なく美しい。生きてて良かった……。