年下の女性教官に今日も叱っていただけた

第3話 クラスメイトにママになっていただけた①

 翌朝。今日は1時間目から実習を行うということで、学校の近くにある森の入口にやって来た。

 周囲には同じクラスの生徒が集まっている。今日も女性たちはものすごく可愛い。

 やがてリリアさんが現れ、周囲を見回した。


「全員集まったようですね。それでは今から、24時間のサバイバル訓練を始めます。

 勇者は討伐対象の魔物を見つけるため、人里離れた山に分け入り、野宿することも多いです。捜索が長引けば、食料を現地調達することもあります。そんな時に必要な知識や技術を、このサバイバル訓練で身につけてもらいます。

 ちなみに、この森は食べられる野草や木の実が豊富で、肉になる魔物も多く生息しています。野宿するのに適した大木や洞窟も見つけやすい地形なので、心配する必要はありません。逆に言うと、このレベルのサバイバルができないなら、勇者になるのはやめておいた方が身のためです」


 リリアさんは厳しい口調で説明を続ける。それによると、初期装備は武器と防具と食器のみで、水や食料の持ち込みは禁止。クラスメイト同士で協力してもいいので、24時間生き延びることができたら合格だそうだ。

 こうしてサバイバル訓練が始まった。周囲では2~6人ずつのグループができあがっていき、今後の方針を話し合っている。聞き耳を立てていると、大体は捕食可能なモンスターを狩りつつ、寝泊まりできそうな洞窟を探すという話になっているようだ。


 転入2日目の俺には、知り合いはシエラさんしかいない。というわけで彼女の方を見てみると、友人3人とパーティを組んだようだ。

 直後に目が合ったシエラさんは、柔和な笑みを浮かべた。おそらく、俺もパーティに誘おうとしてくれたのだろう。


 だが俺は目を逸らし、すぐさまその場を立ち去った。

 リリアさんやシエラさんとはそこそこ普通に会話できるようになったが、俺にとって異性とは、未だに理解不能な存在だ。

 女性4人と団体行動するのは、嬉しさより恐怖の方が大きいのである。


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 サバイバル開始から1時間ほどが経ち、森の中に木造の小屋が完成した。

 手頃な木を切り倒し、蔦を編んで作ったロープで組み合わせたのだ。

 大人4人くらいが寝転がれる広さで、丈夫な葉っぱで蓋をすることで屋根代わりにしている。耐久性に不安はあるが、1日だけなら突貫工事でも何とかなるだろう。


 さて、次は食糧の確保に行くか。

 まずは食肉に適したモンスターと遭遇するまで、歩きながら野草や木の実を採取し、そのまま口に入れていく。

 この程度のサバイバルは日常茶飯事というか日常そのものだったので、何も問題ない。

 小屋を出てから20分ほどが経った頃、不意にオシッコがしたくなった。

 サバイバル中は立ちションするしかないが、もし女性と遭遇したら大変なので、周囲の様子を探る。


 すると、偶然シエラさんを見かけた。女子生徒3人と一緒に食べ物を集めているようだ。

 尿意を忘れ、しばらく4人の姿に見入ってしまう。全員可憐だ。もし彼女たちに頼まれたら、食糧も住居も用意してあげるのに――

 などと考えていた直後、突如として4人の足元に太い蔓が複数出現した。

 蔓は触手のように蠢いたかと思うと、シエラさんたちを目がけて静かに伸びていく。

 そして、4人の脚に絡みついた。


「――きゃあ‼︎」「何これっ⁉︎」「やだ!」「放して!」

 シエラさんたちはその場に転倒し、一瞬にしてパニックに陥った。

 俺はというと、転んだ際に翻った4人のスカートに釘付けになっていた。明らかな異常事態なのだが、警戒を怠らざるを得ない光景だった。これも女性に耐性がない弊害である。


 直後、シエラさんたちの前に、巨大なマンドラゴラが姿を現した。獲物が近くを通りかかったことで、一気に襲いかかったようだ。

 しかし、4人を同時に襲えるサイズのマンドラゴラなんて、これまで見たことがない。

 俺はそこまで考えたところでようやく抜刀し、マンドラゴラを目がけて走り出した。


 マンドラゴラは一番手近なシエラさんに攻撃を加えようとしている。思わず方向転換し、彼女の前に仁王立ちした。

 直後、マンドラゴラが勢い良く花粉を放出した。周囲が真っ黄色の靄に包まれる。こいつらは獲物に毒を浴びせ、弱ったところを捕食するのだ。


 大量の花粉をすべて受け止めた俺は、吸い込まないように注意しながら何度も刀を振るい、マンドラゴラの根を水平に斬り裂いた。

 直後、蔓が力を失い、シエラさんたちが解放される。どうやら俺が盾になったおかげで、シエラさんは花粉を吸わずに済んだようだ。


「レオンくん! ありがとうございました!」

 服についた花粉を払っていると、シエラさんから感謝された。他の女子生徒たちも口々にお礼を言ってくる。

「いや、大したことはしてない――」


 と、話している最中に突然体が動かなくなった。思わずその場にしゃがみ込む。

 おそらく、服に付着していたマンドラゴラの花粉を吸い込んでしまったのだろう。

「レオンくん⁉︎ どうしたんですか⁉︎」

「大丈夫です。ちょっと首から下が麻痺しただけなので」

「それは大丈夫ではないのでは……⁉︎」

「吸い込んだ花粉は少量でしたし、ちょっと休めば元通りになるはずです」


 そう強がりつつ反省する。組織にいた頃、マンドラゴラとは何度も闘ったから、慢心があった。本来なら、息を止めたまま服を脱ぎ捨てるべきだったのだ。でもシエラさんたちの前だったから、格好つけてしまった……。

 あのサイズのマンドラゴラは初めて見た。毒が強力だった場合、すぐには動けなさそうだが……。


「すみません、私たちを庇ったばっかりに……」

「気にしないでください。俺がヘマしただけですから」

「そんなこと……。せめて、麻痺が治るまで介助させてください」

「それなら、俺が作った拠点まで連れて行ってもらえると助かります」

「わかりました」

 シエラさんは地面に座り込んだ俺の体を両手で持ち上げた。細腕なのにすごい力だ。勇者になるため、筋力トレーニングを欠かしていないのだろう。


 他の女性3人は食べ物を探して小屋に届けてくれるそうなので、いったん別行動することになった。

 俺はお姫さま抱っこされている情けなさに耐えつつ、女性の胸部に密着している喜びを噛み締める。助けて良かった……!!

 シエラさんは俺の案内に従い、森の中を進んでいく。


「――あれ? こんなところに小屋がありましたっけ?」

「俺が造りました」

「嘘でしょっ!? たった1人で!?」

「はい」

「サバイバルって普通、洞窟とかに寝泊まりしませんか……?」

「洞窟で寝泊まりすると虫がすごいし、モンスターのねぐらになっていることも多いので」

「だからって小屋を建てます……!?」

「この学校に来る前は1年の半分以上が野宿だったので、突貫工事には慣れているんです」

「なるほど……サバイバルをやっていると大工さんのスキルも身につくんですか……」

 シエラさんは戸惑いながら、小屋の中に足を踏み入れた。