年下の女性教官に今日も叱っていただけた

第3話 クラスメイトにママになっていただけた②

「中もクオリティが高いですね……」

 シエラさんは俺を抱えたまま、小屋の中を興味深そうに見回した。

「よかったらシエラさんたちの分も建てましょうか?」

「そんなノートを貸すような気軽さで小屋を建てる提案をすることあります……?」

 シエラさんは動揺しつつ、俺を床に寝かせてくれた。


「もし私にしてほしいことがあったら、遠慮なく言ってくださいね」

 床に横たわったまま指一本動かせない俺に、シエラさんが優しくそう言ってくれた。

 目の前にはシエラさんの真っ白いふとももがある。もし膝枕してもらえたら死んでもいいな……。頼んだらやってもらえそうだけど……。

「ありがとうございます。寝ていれば治ると思うので、ご友人たちと合流してもいいですよ」

「いえ、ここで見張らせてください。魔物が現れないか心配ですし」

「そうですか……」


 と、そんな会話をしている最中、俺は自分の体が大変な事態になりつつあることに気づき、血の気が引いた。

 尿意がやって来たのだ。

 そういえば、立ちションする場所を探している最中にシエラさんたちを発見したんだった。

「そうだ。マンドラゴラの花粉が付着しているかもしれませんし、上着を払ってきましょうか。吸い込んじゃったら大変ですし」

 言うが早いか、シエラさんは俺の上半身を起こし、上着のボタンに手を伸ばす。


「は~い、脱ぎ脱ぎしましょうね~」

「…………」

「あっ、すみません。つい……」

 俺が憮然としているのを見て、シエラさんは恥ずかしそうに謝った。

「弟を着替えさせていた時のことを思い出してしまい、その時のノリを……」

「い、いえ、大丈夫です。お願いします」

 そう伝えると、シエラさんは手際よく上着を脱がして、小屋の外で払ってきてくれた。


「ついでに顔や手も拭きましょうか。露出していたところには花粉が付いているかもしれませんし」

 シエラさんは白い布を取り出し、丁寧に肌を拭ってくれた。

 俺はどんどん強まる尿意を我慢しつつ、謝意を述べる。


「すみません、お手間をかけてしまって……」

「気にしないでください。こうしていると、弟が小さかった頃を思い出して楽しいので」

「弟さんとは仲がいいんですか?」

「そうですね。弟に限らずなんですけど、小さい子と遊んだり、お世話をしたりするのが好きなので。子どもの頃から、早くママになりたいなぁって思っていました」

「そ、そうなんですか」

 非常にいい夢なので、ぜひ叶えてほしい。もし協力を求められたら、すぐさまパパになる所存である。

 などとありもしない期待に胸を膨らませていると、シエラさんが躊躇いがちにこんな質問をしてくる。


「レオンくんは、私にママになってほしかったりしませんか……?」

「……えっ?」

 思わず我が耳を疑った。

 それはつまり、俺と結婚したいということか? そして、ママになってしまうような行為をしてもいいということか?

 いやでも、妊娠したら学校を辞めなくてはならないのでは――


「なってほしいです。俺にできることがあったら、何でも言ってください」

 色々と疑問はあったものの、考えるのをやめて肯定した。

 このチャンスを逃したら、一生後悔するという確信があったからだ。

 すると次の瞬間、シエラさんは弾けるような笑顔になった。

「ありがとう! それじゃあレオンちゃんは、今日から私の赤ちゃんね!」

「――えっ?」


 ……どういうこと? 赤ちゃんを作るんじゃなく、俺が赤ちゃん……?

 頭の中が疑問符でいっぱいになる中、さっきの質問を思い返す。


『レオンくんは、私にママになってほしかったりしませんか……?』

 ――よく考えたら、俺にパパになってほしいとは一言も言っていない……!!

 いや、でも、この質問をされて『俺が赤ちゃんになるってことだな』って理解できるヤツ、この世に存在しなくない……?


「昨日からずっとレオンちゃん可愛いって思ってて、育てたくて仕方なかったの~!!」

 シエラさんは嬉しそうに言い、俺の頭をなでてきた。

 どうしよう、悲しすぎる誤解が生じてしまっている。

 だが誤解を解こうにも、俺のしていた勘違いが最低すぎて、説明できない。


 あと、尿意が猛威を振るいすぎて、全部どうでも良くなりつつある。

 いよいよ我慢の限界を超えそうだ……。

「……シエラさん。大変申し上げにくいのですが……」

「んっ? どうちたの?」

「……その……膀胱が……限界で……」


 この上なく恥ずかしい発表だが、しないわけにはいかなかった。突然俺が漏らし始めたら、一生のトラウマになるだろうからな。

「垂れ流さざるを得ないので、小屋から出て行ってください。それで、今日の夜くらいまでは、この小屋には近づかないでもらえると……」


 控えめにお願いしたのだが、なぜかシエラさんは笑顔であり続けている。

「あらあら大変。それじゃあオシッコで汚れないように、ママが服を脱がせまちゅね~」

「っ!? い、いや、そんなことしないでいいですよ……!?」

「えっ? なんで? レオンちゃんは私の赤ちゃんなんだよ?」

 シエラさんは不思議そうに聞き返してきた。

 まだ俺が赤ちゃんになって1分くらいなのに、もう下の世話をする覚悟ができているとは……!!


「心配しなくて大丈夫でちゅよ。ママはこれまで、いっぱいオムツを替えてきまちたから」

「いや、それは本物の赤ちゃんを相手にでしょ……」

 この歳になってオシッコを手伝ってもらうなんて、恥ずかしすぎる。絶対に嫌だ。

 ……とはいえ、脱がせてもらえるなら、それに越したことはない。漏らした後も数時間動けなかった場合、ずっと尿の臭いや冷たさに耐えなければならないのだから。


 ……サバイバルにおいて、仲間と協力し合うことが何より重要だ。自分で蒔いた種でもあるわけだし、覚悟を決めるしかない……!!

「……わかりました。よろしくお願いします……」