年下の女性教官に今日も叱っていただけた

第3話 クラスメイトにママになっていただけた④

 それから1時間ほど経ってお昼寝から目覚めた俺は、麻痺が治っていることを確認した。これでもう、恥ずかしい思いをしないで済む……。

 シエラさんたちと話し合った結果、4人にもこの小屋を使ってもらうことになった。とはいえ小屋は5人だとギリギリ寝転がれる広さなので、就寝時は密着することになるだろう。偶然なのだが、完璧なサイズ感で建築したといえる。

 俺はシエラさんと添い寝できるという期待に胸を躍らせながら外に出た。


 すると、そこにはリリアさんが待ち構えていた。

「どうやら、サバイバルは順調のようですね」

 リリアさんにそう問われ、俺たちは頷いた。

「全部レオンさんのおかげです。マンドラゴラから助けてくれたし、小屋も使わせてもらえることになったので」

 シエラさんの友達に賞賛され、俺は頭を掻く。


「そうですか。では、特別授業の時間なので、レオンさんをお借りしていきますね」

「――えっ? 今日もやるんですか?」

「当然です。昨日は何の進歩もしなかったんですから」

 リリアさんに睨みつけられ、俺はすぐについていくことを決めた。俺がスライムさんに魅了されまくったことをバラされたら終わりだからな。


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「昨日から考えていたんですが、レオンさんは負けてもわたしが助けてくれると思っているせいで、危機感がないのではないでしょうか」

 闘技場の第1アリーナにやって来たところで、リリアさんがそんなことを言い出した。

「そこで、危機感を高める方法を考えました。もし今日もスライムのモン娘に勝てなかったら、犬になってもらいます」

「犬になる……?」


「この鎖付きの首輪を嵌めて、四足歩行で森の中を散歩させます。もし誰かとすれ違ったら、犬語で挨拶してください」

「マ、マジですか……!?」

 思わず聞き返すと、リリアさんは静かに頷いた。目が据わっている。


「わたしは大真面目です。こちらからしたら、スライムに負けるというのがふざけているとしか思えないので」

「……一応、真面目にやっているつもりなんですが……」

「性欲に負けなければ勝てますよね?」

「……頭ではわかっているんですが……」

「本能に従って生きるだけでいいなら、獣でもできますよね?」

「おっしゃる通りです……」

 こうしてリリアさんに睨まれつつ、俺はまたしてもスライムさんに挑戦することになった。


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「ザコのお兄ちゃん、またアタシにやられに来たの?」

 三度対峙したスライムさんは、俺を見て含み笑いをした。

 ちくしょう……今日も可愛いな……。

「どうせまたおっぱい見たら魅了されちゃうんでしょ?」

「そうはならん」

 決意を固めつつ抜刀する。しかしスライムさんは余裕の表情で、自らのドレスに手をかけた。思わず見入る。


「レオンさん?」

 背後から圧力をかけられ、我に返った。

「もうドレスを脱ぐのを待ったりしない」

 刀を握り締め、頭上に持ち上げる。このまま振り下ろせば、スライムさんとの因縁は終わりになる――


「お兄ちゃん、いいの? アタシ、今パンツはいてないんだよ?」

 その瞬間、俺は振り下ろしかけた刀を空中で静止させた。

「――詳しく聞かせろ」

「レオンさん?」

「リリアさん、ちょっと黙っていてください」

 本当に下着をつけていないのだとしたら、それは大変なことだ。だって、モン娘の体の構造は人間とほぼ同じなわけで、つまり生まれて初めて女性の秘所を拝めるわけで……。

「お兄ちゃん、見たいの? しょうがないなぁ……」


 スライムさんは勝ち誇った笑みを浮かべつつ、ドレスを両手で掴んだ。

 スカートの裾が少しずつ持ち上がっていき、真っ白なふとももを露出していく。

 もうすぐだ、もうすぐ脚の付け根が見え――

 完全に視線が一点に釘付けになっていた俺に、スライムさんは跳び膝蹴りを食らわせようとしてきた。


 飛びかかってくる瞬間、スカートが捲れ、ほんの一瞬だけ女性の秘所が露出した。


 俺は類い希なる動体視力で、それをしっかり捉えた。

 女の人のアソコって、ああなってるんだ――!!

 感動する最中、スライムさんの膝が顎にめり込んだ。

 脳が揺れ、その場に倒れ込む。


「バカなお兄ちゃん、今日こそ逃がさないよ!! 頭をかち割って脳みそチューチューしてやるから!!」

 馬乗りになったスライムさんが、恐ろしいことを喚いている。

 しかし俺は、もういつ死んでも悔いはない。

 感謝の思いでいっぱいになりながら、スライムさんの暴力を受け止め続けたのだった。


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 さっきまでサバイバルをしていた森の入口に戻ってきたところで、リリアさんは革製の茶色い首輪を取り出した。

「獣並みに知能が低いレオンさんに、この首輪をプレゼントします」

 リリアさんは低い声で言い、首輪を俺の首に巻き付けた後、一気に引き絞った。

「ぐえっ」

 気道を塞がれたので、慌てて広げようとするが、リリアさんに阻止される。


「呼吸ができなくて苦しいですか? 思い通りにならないと嫌ですよね? でもわたしがレオンさんに覚えさせられたやるせなさは、こんなものじゃないんですよ?」

 リリアさんは大きく見開いた目で詰め寄ってくる。

 ヤ、ヤバい。本気で死ぬかも――

「前に言いましたよね、あなたの命はわたしのものだと。あまりに無能だと、殺処分を考えますよ」

 淡々と言った後、ようやく首輪を緩めてもらえた。全速力で肺に酸素を送り込む。


「……あのですね、リリアさん。さっきのは邪な感情に支配されたわけではなく、モン娘の体の構造を知っておいた方が今後の対策が練られるという、学術的な知的好奇心で――」

「次は首の骨を折りますよ?」

 すぐに口を閉じた。


「駄犬がゴチャゴチャ言わないでください。今から散歩を始めますが、使っていいのは犬語だけです。いいですね?」

 リリアさんは首輪に鎖を取り付けながら、有無を言わさぬ口調で告げた。

「……わん」