年下の女性教官に今日も叱っていただけた
第4話 勇者を目指すギャルと野宿させていただけた①
特別授業のために2人で闘技場に向かう道中、なぜかリリアさんは俺に冷たい視線を向け続けてきた。
「昨晩は女性4人と同じ空間で過ごしたようですね。しかもあんな狭い小屋で……」
「はい。おかげで女性への耐性ができました。もうモン娘なんかに惑わされません」
「これまでのレオンさんのザコっぷりを見ていると、前振りにしか聞こえないんですが」
「いやいや、今度こそ大丈夫ですから」
「では、もし今日もスライムのモン娘に勝てなかったら、罰としてしばらく裸で木に縛り付けることにします」
「えっ……縛り付けですか……?」
もはや罪人に対する仕打ちである。
「モン娘に惑わされないのであれば、問題ないですよね?」
「……おっしゃる通りです」
木に縛り付けられ、自由を奪われるところを想像しながら、俺は頷いた。
――いや、ダメだダメだ。ちょっと楽しそうだけど、わざと負けたりしてはいけない。
S S S
こうして、スライムさんへの4度目の挑戦が行われることになった。
第1アリーナの鉄柵が上がり、対峙したスライムさんは、なぜか笑顔だった。
「ザコのお兄ちゃん! 待ってたよ!」
「えっ? そうなの?」
「うん! 檻の中は退屈だから、ザコのお兄ちゃんをボコることだけが唯一の娯楽なの!」
「そうなのか……ちょっと嬉しいかも」
「レオンさん。スライムにボコるのを楽しみにされるのは、勇者として終わっていると思います」
「で、ですよね」
俺は気を取り直し、スライムさんと向かい合う。
今の俺は、昨日までとはぜんぜん違う。何せ、シエラさんに添い寝してもらい、本物の女性の肉感を知っているのだ。二度とスライムさんに魅了されるものか。
……もっとも、前回みたいにアソコが見えそうになったら心は揺らぐと思うが――
などと思っていた刹那、スライムさんが身に纏っている液状の青いドレスが、うねうねと動き始めた。
「アタシね、何度もお兄ちゃんをボコったことで、レベルアップしたみたいなの!」
スライムさんがそう告げた直後、液状のドレスが天高く舞い上がった。
ドレスだけが飛び上がったことで、スライムさんは一糸纏わぬ姿になった。
「見て見て! ドレスをこんなに自由に操れるようになったんだよ!」
スライムさんは得意げに叫んだが、俺は一瞬たりともスライムさん本体から目を離さない。
というか、女性の秘所が上も下も丸見えなのだから、目を離せるはずがなかった。
しかもスライムさんは一切隠そうとしない。凄すぎて脳みそが爆発しそうだ。
「――食らえっ!」
女体の神秘に釘付けになっている最中、トロトロの液体が降ってきた。
その液体は俺の体を覆い、自在に這い回る。
「えっ、あっ、ちょっ……‼︎」
液体が俺の首筋や脇や股間を刺激する度、変な声が出てしまう。
しかもこの液体に触れていると、徐々に力が抜けていく。どうやら、エナジードレインされているようだ。
「あっ、そこ、ダメッ……!!」
リリアさんの前なのに、思わず変な声が出てしまう。
「……情けない……本当にザコですね……」
悶える俺を見たリリアさんは、嘆息するのだった。
S S S
呆れ顔のリリアさんに救助された後、ついさっきまでサバイバルしていた森に戻らされた。罰が執行されるのである。
リリアさんは大木の前で立ち止まり、こう告げる。
「この木に縛り付けることにします。わたしにも慈悲があるので、全裸にはしません。下着は残してあげましょう」
「縛り付けるのに慈悲……?」
「何か?」
「何でもないです……」
大人しく服を脱ぐと、鎖の準備を終えたリリアさんがまじまじ見てきた。
「……ふむ。やはりいい筋肉ですね」
そうつぶやくリリアさんは楽しそうで、機嫌が直っているように見える。
もしかすると、筋肉が好きなのだろうか?
「レオンさんのいいところは筋肉だけですね」
「ありがとうございます」
「褒めていません」
鋭く言った直後、リリアさんは鎖を使って俺を厳重に大木に縛り付けはじめた。
「俺はどのくらいこの状態でいればいいんですか……?」
「知りません」
「リリアさんが知らなかったら、世界中の誰にもわからないのでは……?」
「正確には考えていません。レオンさんが十分に反省したら戻ってきます」
「どうやって俺の反省度合いを知るんですか?」
「黙りなさい」
リリアさんは不機嫌そうに言い、去っていった。
周囲に人や魔物の気配はない。聞こえるのは風の音だけだ。
やることがないので、シエラさんの胸の感触や、さっき見たスライムさんの裸を思い出すことにした。本当に最高だった。
そのまま悶々とする時間を過ごしていたのだが、待てど暮らせどリリアさんが戻ってきてくれない。もしや、俺が反省していないことを察知しているのか……?
だとしたら、マズい。俺には反省する気持ちが、これっぽっちもないのだ。
だって、あの状況でスライムさんに目を奪われるのは仕方ないことだし……。
とはいえ、このまま放置されて餓死したら、普通に殺人事件なのでは……?
そんなことを考えていたら、だんだん眠くなってきた。
やることもないし、ちょっとくらい寝てもいいか……。
S S S
突然、頬に突き刺されるような痛みを覚え、俺は目を覚ました。
目を開けると、肩を露出したピンク髪の女性が、夕日に照らされて立っていた。リリアさんやシエラさんに匹敵するくらいの美少女だった。
名前はわからないが、見覚えがあるので、たぶん同じクラスの子だ。
彼女の手にはその辺に落ちていたと思しき棒が握られており、鋭い先端を俺の頬に食い込ませている。
「――あ、生きてた」
女性は俺の顔を覗き込んで生存を確認した後、持っていた棒を投げ捨てた。
「よかった~、死体かと思ったよ~。ねぇねぇ、なんで縛られてんの? 魔物にやられたんじゃないよね?」
至極真っ当な質問を受けた俺は、言葉に詰まる。
スライムさんに負けた罰であることは、できれば知られたくないな……。
「こ、これは……その……リリアさんに……」
「あー、なんか罰受けてる感じ? いやでも、さすがに過酷すぎじゃね?」
「同感です」
「んで、リリアせんせーは?」
「俺を置いてどこかに行きました」
「鬼か?」
「いや、まぁ、元はといえば俺が怒らせたのが悪いので……」
「ふーん、受け入れてる感じなんだ。じゃあさ、写真撮っていいよね!」
言うが早いか、謎の女性は首から提げている謎の機械を両手で持ち上げた。
「? なんですかそれ?」
「写真機だよ。知らない?」
「あ、聞いたことがあります。たしか、目の前の景色をそのまま切り取れるとか」
「そうそう。これを使えば、罰を受けてるレオンっちの姿を、クラスのみんなにも見せられるってわけ」
「――えっ、ちょっ、それは困ります。やめてください」
俺は身をよじったが、鎖はガチガチに巻きつけられていて、何もできない。顔や股間を隠すことすらも……。
「あはは、抵抗できないのウケる~。ってことで、ぱちゃー☆」
女性がスイッチを入れた瞬間、写真機から強い光が放たれた。
かと思うと、写真機の上部から分厚い紙のようなものが排出された。
「すぐにできるから、楽しみにしててね~」
「何一つ楽しみな要素がないんですが……」
どうにかして、その写真というものを回収しなければ。まずはこの鎖を外してもらわないといけないが……。
「えっと、あなたはたしか、同じクラスの……」
「フィオナだよ! よろしくね!」
フィオナさんは写真機を下ろし、両手でピースサインを作った。
今の所よろしくできる要素が1つもないが、美少女なので可能な限りよろしくしたいとは思う。
「あ、ほらほら、写真できたよ」
フィオナさんが差し出してきた紙には、俺が半裸で木に縛り付けられた間抜けな姿が、鮮明に映し出されていた。
最悪である。
「今すぐ燃やしてください」
「やだ。クラスのみんなに見せるの」
「俺が社会的に死ぬんですが」
「大丈夫っしょ、最高にキモく撮れてるし」
「フィオナさんにとって大丈夫の概念とは?」
聞き返したが、フィオナさんは笑うばかりで答えようとしない。その笑顔は最高に美しかった。