年下の女性教官に今日も叱っていただけた
第5話 ギャルに冒険デートに誘っていただけた③
フィオナさんはスカートをたくし上げ、右手で自分の下半身に生えてきたものを握った。
そして俺の下腹部を凝視し、ニヤリと笑う。
「今、これで気持ちよくしてあげるからね」
――その瞬間、自分が何をされるのかを想像し、ゾクッとした。
これから俺は、ついさっきまで女の子だったフィオナさんに、犯されるのだ。
状況が複雑すぎて、感情がグチャグチャになっている。
しかし、恐怖はあるものの、取り返しのつかないことをされてしまうという事実に、興奮しかけている自分がいた。
……フィオナさん、俺のこと、大事にしてくれるかな……。
だが、半分くらい覚悟を決めた刹那、俺たちの体に急激な変化が起きた。
まず、俺の下半身からなくなったものが、目にも留まらぬスピードで復活した。
それとほぼ同時に、フィオナさんの下半身に創造されたものが、一瞬で消滅した。
しかし、俺たちの体勢に変化はない。男になっていたフィオナさんは、スカートを自らめくった状態で、俺に跨がったままだ。その結果何が起きるかというと――
性別が元通りになった瞬間、俺はフィオナさんの女体の神秘をモロに見てしまった。
今度は、俺のが大きくなる番だった。
「――ぎゃあああっ!!」
フィオナさんは悲鳴を上げ、すぐさまスカートを下ろして大事な部分を隠した。
「み、見んな変態!!」
「いや、自分から脱いだんですよね? 完膚なきまでに自業自得ですよね?」
「うるせぇクソ野郎ッ!!」
フィオナさんは左手でスカートを押さえ、右手で俺の顔面を殴りつけてきた。
「ああああああっ!! 記憶がなくなるまで、何発でもぶん殴ってやるっ!!」
フィオナさんは絶叫しつつ、何度も俺の顔や体に拳を振り下ろす。
この上なく理不尽な暴力だったが、あんな素晴らしいものを拝ませていただいたのだから、文句などあるはずがない。
……思いっきり見てしまった。アレがフィオナさんの……。
「思い出してんじゃねぇぇぇ!!」
ニヤニヤ笑っている俺の口元を、フィオナさんは前歯を折る勢いで殴りつけてきた。
S S S
一時は貞操の危機だったものの、完璧なタイミングでガスの効果が切れたおかげで、最高の1日になった。迷宮に罠を仕掛けてくれた魔物に、最上級の感謝を述べたい。
一方、フィオナさんは精神的ダメージが大きかったらしく、迷宮探索は即時に中止となった。地下2階へは進まず、服を着て迷宮を脱出する。
「――ホント最悪。レオンっち、責任取ってよね」
下山し始めてすぐ、そんな文句を言われた。
「いや俺、フィオナさんに襲われてたんですけど? あと少しでヤバかったんですけど?」
「あんなの冗談に決まってるでしょ。そんなこともわからないわけ?」
「どう見ても本気だったと思いますが――」
「は? ウザッ」
拳を握りしめたフィオナさんに睨まれてしまった。
「……口答えしてしまい、すみませんでした」
「冗談だったって認める?」
「もちろんです。フィオナさんがそんなことをするわけがないじゃないですか」
「なら許す」
なぜか襲われた側の俺が許された。
「あとさ、落とし穴でおしり触られたことも、忘れてないから。見られたことも含めて、慰謝料を追加しておくからね」
「迷宮のお宝でも手に入れないと、払い切れなさそうですね……」
「手に入れるに決まってるでしょ。また今度、挑戦しに来るから」
有無を言わさぬ口調で言われ、俺は頷いた。
……それにしても、さっきの性転換ガス、どうにかして町まで持って帰れないだろうか。
女性になっている間は裸を見ても興奮しないかもしれないが、すぐに男に戻れるなら問題ない。女湯に侵入する直前に吸い、たっぷり観察した後、男に戻って思い出せば……。
「レオンっち、お腹空いた~。学校に戻ったら、一緒にクレープ食べに行くよ。次はスイーツデートね」
作戦を考えている最中、勝手に次の目的地が決められた。
S S S
馬車で学校に戻ってきた後、フィオナさんに先導され、すぐ隣にある町へ移動した。
この世界はそこら中に魔物が生息しているため、勇者訓練校の周りには多くの人が住みたがるらしい。魔物が出現した際に助けてもらうことを期待しているようで、立ち並ぶお店の中には、勇者訓練校の制服を着ているだけでサービスしてくれるところも多いようだ。
フィオナさんに連れられ、飲食店や食料品店が立ち並ぶ路地に入った。クレープを買い、フィオナさんの写真撮影が済んだ後、店の前の道で立ったまま食べる。俺のがチョコバナナで、フィオナさんのがイチゴカスタードというらしいが――
「うまっ!! クレープってとんでもなく美味しいですね!!」
「ひょっとして、初めて食べたの?」
「はい」
「マジで? クレープ食べたことないとか、人生の半分損してんじゃん!」
「本当ですね……! 今日クレープの美味しさを知れてよかったです……!」
「じゃあこれからウチが、美味しいものとか楽しいこととかいっぱい教えてあげるね!」
「よろしくお願いします!」
「ちなみに、クレープは食べさせあいっこすると、美味しさが倍になるんだよ? てことで、レオンっちのチョコバナナちょーだい」
「えっ!? 俺の食べかけでいいんですか……!?」
「当たり前じゃん」
「でも、それって、間接キスというヤツでは……!?」
「ちょっと、恥ずかしくなること言わないでよ」
フィオナさんは気まずそうに目をそらした。心なしか、頬が赤いように見える。
ヤバい。メチャクチャ楽しい。これがデートというヤツか……!!
――などと浮かれまくっている最中、とんでもない事態に見舞われた。前方に買い物中のシエラさんを発見したのだ。
向こうも俺たちに気付いており、その場に立ち尽くし、目を見開いている。
心臓を掴まれたような感覚を覚え、俺はこの甘い時間の終焉を悟った。
直後、シエラさんが駆け寄ってきて、俺の右腕を掴んだ。
「レオンちゃん!! 不良と遊んじゃいけません!! そんなジャンクフードは今すぐ捨てなさい!! 体に悪いし、虫歯になっちゃうでしょ!!」
シエラさんは鬼気迫る表情で絶叫した。これは想定外の絡まれ方だった。
「――いやいや、いいんちょ何言ってんの?」
突飛すぎる発言に、フィオナさんは目を丸くしながら反論する。
「そもそもウチ、不良じゃないし」
「そんなふうに肩を出している人は全員不良です!」
「いいんちょ頭固すぎだから! てか、百歩譲ってウチが不良だったとして、なんでいいんちょがレオンっちと引き離そうとすんの?」
「そんなの、私がレオンちゃんのママだからに決まっているでしょう!!」
「……んんっ?」
フィオナさんは宇宙人でも見るような目つきになり、俺とシエラさんを何度も見比べた。
「まだ何もできない赤ちゃんを、ママが守ろうとするのは当然のことです!!」
「待って待って待って。ウチまだいいんちょがママってところが理解できてないから。赤ちゃんがどうとかって情報を追加しないで」
フィオナさんはシエラさんを制止した後、困惑した表情で俺の方を見た。
説明を求められている気がするが、俺は無言で目を逸らした。
「いやいやいや、年齢的に、どう考えてもおかしいっしょ! いいんちょがレオンっちのママなわけないよね?」
「そんなことないもん!! レオンちゃんは私の赤ちゃんだもん!!」
「えっ……マジなん? いいんちょ結婚してたんだ?」
「未婚でもママになれます!!」
「あ、未婚のママなんだ? ちなみにパパは誰なん?」
「パパがいなくてもママになれます!!」
「なれねーから!」
フィオナさんが全力でツッコんだ。しかしシエラさんは肩をすくめる。
「話が通じないですね……これだから不良は……」
「いや、ウチが悪いって結論は絶対おかしいから」
正論を述べるフィオナさん。しかしシエラさんはそれを無視し、俺の右腕を掴み直す。
「もういいです。レオンちゃん、帰りますよ」
シエラさんは俺をどこかに連れて行こうとする。帰るって、どこに――
「ちょっ! レオンっちを連れてかないでよ! 今デート中なんだから!」
フィオナさんは叫びつつ、両手で俺の左腕を掴んだ。
「デ、デート……⁉︎」
「そっ」
目を見開いたシエラさんに向かって、フィオナさんはなぜか勝ち誇ったように笑った。
「これからレオンっちは、ウチに惚れることになるの。それがレオンっちのためでもあるんだよ」
「意味がわかりません!! いったいどういうことなんですか!?」
「んー、それはね――」
「あの、フィオナさん。その辺の事情は秘密にしてほしいんですが……」
「いいじゃん。事情を聞かないといいんちょは納得しなさそうだし」
「で、でも――」
「レオンちゃん? レオンちゃんは、ママに隠し事をする悪い子なの?」
シエラさんが恐ろしい顔で詰め寄ってきた。
「それならもうママの知らないことが起きないよう、手足を縛って24時間365日ずっと一緒にいないといけないね? さぁレオンちゃんおいで」
「今すぐ説明します!」
こうして、自ら事情を説明することになった。フィオナさんは俺がモン娘に魅了されないよう、自分に惚れさせようとしてくれているのだと。
このことを知ったら軽蔑されるだろうと思っていたのだが、予想に反してシエラさんは笑顔になった。
「そういうことだったんですか……。レオンちゃんは女性経験がない赤ちゃんですものね。良い女性と悪い女性の区別がつかなくても仕方ないです」
そう言って、シエラさんは何度も頷いた。モン娘に魅了されて情けないと捉えるのではなく、汚れを知らない純粋なヤツだと受け取ってくれたようだ。考え方が寛容で助かる。
「いい機会なので、レオンちゃんに良い女性と悪い女性の見分け方を教えてあげます。良い女性はママだけで、それ以外の女性は全員悪です。だからママだけを好きになりましょう」
ぜんぜん寛容じゃなかった。むしろ誰よりも過激派である。
「レオンっち、次はウチが説明してもらう番だよ。なんでいいんちょがレオンっちのママなわけ?」
「レオンちゃん、説明してあげて」
「は、はい……」
笑顔のシエラさんに促され、とりあえず話し始めてみる。
「えっと、サバイバル訓練中に俺がマンドラゴラに麻痺させられて、その時にシエラさんに手厚い介護をしてもらって……。何やかんやあってママと赤ちゃんという関係になりました」
「いや、肝心の部分を『何やかんや』で済ませんなし」
フィオナさんは不満そうに口を尖らせたが、俺にはこれ以上の説明は不可能なので、どうしようもない。
「よくわかんないんだけど、いいんちょ的には介護した人がみんな赤ちゃんになるの?」
「違います。レオンちゃんは特別です」
「ホントに? ワンチャン、ウチもいいんちょの赤ちゃんになれるんじゃね? ママ~、ウチにもおっぱい飲ませて~」
「私はあなたのママじゃありません!!」
シエラさんが全力で怒鳴った。
「もちろんレオンちゃんとデートすることは許しません!! レオンちゃんは一生私だけの赤ちゃんなんですから!!」
「うわ~、完全な毒親じゃん。レオンっち、行こっ」
「無駄ですよ。私はママとして、どこまでも付いていきますから」
シエラさんは俺を掴んでいる両手に、さらに力を込めた。
「仕方ないなぁ。じゃあさ、間取って、今日は3人で遊ぶってのはどう?」
「ダメです。不良と一緒にいて、レオンちゃんに悪影響があったら困ります」
全力で拒否するシエラさん。話が通じる気配がなかった。
「レオンっち、どうすんの? 今日は元々、ウチと約束してたわけじゃん?」
「そうですね……」
俺は逡巡した後、シエラさんに向かって頭を下げる。
「すみません。今日はフィオナさんとデートする約束をしていたので、一緒に行くことはできません」
俺がそう宣言すると、シエラさんはその場にくずおれた。
「これが反抗期……まだ赤ちゃんなのに……」
シエラさんは四つん這いになり、ワナワナと全身を震わせている。
……何だか、悪いことをしている気分になってきた……。
「いいんちょ、元気出して。ほら、ウチのクレープ食べていいから」
フィオナさんは前屈みになり、クレープを差し出した。
また喧嘩になるんじゃないかと身構えたが、シエラさんは無言で食いついた。
「……甘くて美味しいです」
「でしょ! ちょっと元気になった?」
「……そうですね。ジャンクフードの食べ過ぎは良くないですが、少しならいいかもしれません」
「ジャンクフード言うなし!」