年下の女性教官に今日も叱っていただけた2
第2話 美少女たちと一緒に牢屋に入れていただけた③
「――みっ、『見るなっ』!!」
リリアさんが動揺しながら怒鳴りつけてきた。俺は脊髄反射的に目を瞑ってしまう。
ものすごく見たいのに、体がリリアさんの命令に従ってしまうのだ。
「『耳を塞げ』『鼻呼吸をするな』!!」
すぐさま両手の人差し指を耳の穴に突っ込む。これで水音はうっすらとしか聞こえなくなった。
そのまま悶々としていると、やがて水音が止んだ。
しばらくの間、洞窟内を静寂が支配した。
それからたっぷり時間が経ったところで、リリアさんが肩を叩いてきた。
「『耳を塞ぐのをやめて、こっちを見ろ』」
俺は命令通り、リリアさんの方に向き直った。
当然だが、リリアさんは水着鎧の下をちゃんと穿いていた。
しかし俺は、さっき目撃したあられもない姿を思い出してしまう。
「……見ましたか?」
耳まで真っ赤にしたリリアさんに質問された。
「えっと……肝心な部分は見えてないです。本当です」
「…………」
「そもそも、なんで俺たちに黙ってオシッコを……?」
「それは……」
リリアさんは3文字だけつぶやいた後、恥ずかしそうに黙り込んでしまった。
おそらく、俺たちがいる空間でオシッコをするという事実を知られることすら嫌だったのだろう。それで寝ている隙にこっそり済ませようとしたわけだ。
今にして思えば、「睡眠を取って体力回復に努めることにしましょう」という提案は唐突だったし……。
「まさかレオンさんが目を覚ますとは……!!」
リリアさんは悔しそうに歯を食いしばった。相当に動揺しているらしく、呼び方が元に戻っている。
「最初から俺に目と耳を塞ぐように命令すれば良かったですね」
「激しく後悔をしています。……でも、まだ間に合います」
「えっ?」
「『わたしのトイレに関するすべての事象を忘れなさい』」
「――っ!!」
リリアさんに命令された瞬間、俺の意識はブラックアウトした。
S S S
目を開けると、洞窟内は夕日に照らされ、真っ赤に染まっていた。リリアさんに眠らされてから、どのくらい時間が経ったのだろうか。
上半身を起こすと、こちらを睨んでいるリリアさんと目が合った。
「? リリアさん、なんで俺を睨んでいるんですか?」
「……何でもないです」
明らかに何かあった言い方だった。
心なしか、顔が赤いみたいだが……。
「……石コロ。本当に何も覚えていないんですね?」
「えっ? 何のことですか?」
「いえ、何でもないです。……ところで、トイレは使用しなくて大丈夫ですか?」
「あー……。まだ我慢できそうです」
そう言いつつ、何気なく壺が置かれた辺りを見ると、違和感を覚えた。牢屋の隅の地面が、少し濡れているようなのだ。
まさか、俺が寝ている間に、リリアさんかシエラさんがオシッコをしたのだろうか……!?
クソッ……!! だとしたら、なんで起きなかったんだ……!!
「……どうやら、大丈夫みたいですね」
リリアさんが安堵したようにつぶやいた。
そこでようやく、リリアさんの様子がおかしい理由がわかった。
「もしかして、俺が寝ている間にトイレをしたんですか? それで、俺が起きていなかったかを確認したかったとか?」
「いえ、ぜんぜん違います」
「あ、すみません……」
見当外れだった……恥ずかしい……。
となると、地面が濡れているのはオシッコじゃないのか。それとも、シエラさんがしたものなのか……。
「ふわぁ~」
そこでシエラさんが目を覚まし、小さく伸びをした。
「おはようございます。……なんだか、少し冷えてきましたね」
寝起きのシエラさんがポツリとつぶやいた。
俺は上半身裸だし、リリアさんとシエラさんは水着鎧姿なのだ。夜が近づいて気温が下がれば、寒くなって当然なのである。
「抱き合って温め合うのはどうでしょうか?」
「レオンさんは救いようがない変態ですね」
「いや、そこまで変な提案じゃないと思うんですが。あと、抱き合うっていうのは俺とじゃなくて、リリアさんとシエラさんがですよ」
「えっ? 3人で抱き合えばいいんじゃないですか?」
俺の弁明を聞いたシエラさんが、心底から不思議そうに言った。
「もちろん俺としては、やぶさかではないですけど――」
リリアさんの方を見ると、苦虫を噛み潰したような表情だった。
「……検討します。ひとまず、気温がこれ以上下がらないことを願いましょう」
お願いです神様。なるべく早急に気温を下げてください。



