年下の女性教官に今日も叱っていただけた2

第3話 ギャルと混浴させていただけた①

「――こうして無事、悪い魔女は退治されました。その後、王子様とお姫様は、末永く幸せに暮らしましたとさ。めでたし、めでたし」

 シエラさんは仰向けになっている俺のお腹を一定のリズムでポンポンと優しく叩きながら、昔話を1つ語り終えた。

 年下の女性に寝かしつけられている……。


 もちろん、俺が頼んだわけではない。シエラさんが勝手に始めたのである。

 リリアさんにゴミを見るような目を向けられながら半強制的に聞かされる昔話は、なかなか乙なものであった。

 どうせヒマだし、もう1つくらい昔話を語られてもいいかな――


 カンカンカンカンカン!!


 突如として、洞窟の外からけたたましい鐘の音が聞こえてきた。

 昼に聞いた休憩を知らせる鐘の音とは雰囲気が違い、まるで危険を知らせるようだったが……。

「何かあったんでしょうか?」

「わかりませんが、今のわたしたちには何もできません」

 シエラさんの不安そうな質問に対し、リリアさんが毅然と答えた。


 それから3人で外の方角に耳をそばだてていると、誰かが駆け寄ってくる足音が聞こえた。

 現れたのは、エヴァンジェシカさんだった。焦った様子で鉄格子の鍵を開ける。

「――巨大な魔物が出現したのよ。今、男たちと一緒にフィオナが闘っているけど、苦戦してるわ」

 そこまで言ったところで、鉄格子が解き放たれた。


 エヴァンジェシカさんが俺の刀を差し出してくる。

「石コロ、闘いに行きなさい」

「了解です」

 刀を受け取り、俺は駆け出した。

「あっ、石コロ、足枷を外さないと――」


 エヴァンジェシカさんに呼び止められたが、フィオナさんのピンチに一刻も早く駆けつけるため、無視して突き進む。

 洞窟の外に出ると、ほぼ真下に位置する集落の外れで、民族衣装に身を包んだフィオナさんが奮戦する姿が確認できた。

 相対している魔物は、全長5メートル以上はあろうかという巨大な黒いオオカミ――おそらくフェンリルだ。


 フィオナさんは壁際に追い詰められているが、剣を構えて攻める隙を与えず、膠着状態になっているようだ。

 幸い、大きなケガはしていないように見受けられる。

 周囲にいる男たちはまごまごしているだけで、助けに入る素振りはない。急がなければ。

 フェンリルは恐ろしい相手だが、俺はこれまで何度か闘ったことがあり、大体の動きや体の構造は把握している。


 だが今は足枷をしているし、素早い相手と正面からぶつかるのは得策ではない。はやる気持ちを抑え、近くの岩山を駆け登ることにした。

 そしてフェンリルのほぼ真上に移動したところで、抜刀して飛び降りる。

 敵は大きな肉の塊だし、着地ダメージはほぼ受けないだろう。そう高を括りつつ墜落していき――フェンリルの脳天に刀を突き立てた。


「グオオアアアアッ!!」

 フェンリルは悍ましい断末魔の叫びを上げ、苦しそうに暴れ回る。

 だが、すぐに動かなくなった。

 闘っていた男たちは、突然上空から降ってきた俺に、信じられないものを見るような目を向けてくる。


 しかし、フィオナさんだけは笑顔で近づいてきた。

「さすがレオンっち! 一撃じゃん!」

「フィオナさんが相手をしてくれていたからですよ。おかげでフェンリルの頭を狙いやすかったです」

「それでも上から落ちてきて仕留めるなんて凄すぎ! しかもレオンっち、足枷を着けたままじゃん! ウケんだけど!」

 フィオナさんは俺の右足首を指差しながら大笑いした。


「ああ、これですか。実は牢屋を出てすぐ外すように言われたんですが、フィオナさんがピンチだと聞いて、いても立ってもいられなくなってそのまま来ました」

「キュン死させる気か!」

 フィオナさんは叫びつつ、胸を押さえた。

「きゅんしさせる……?」

「な、何でもない……」

 なぜかフィオナさんは赤面しつつ、目を逸らした。


 そうこうしていると、島の女性たちが近くに集まってきた。

「嘘でしょ……島の外にはこんな強い男がいるの……?」

「かなりいい感じじゃん……」

 女性たちが口々に俺の噂をしており、自然と頬が緩んでしまう。

 するとそこで、俺よりちょっと年下くらいに見える金髪の女性と目が合い、手招きされた。

 近づいていくと、彼女と同年代くらいの女性3人に囲まれた。


「この島には男はザコしかいないから興味なかったけど、アンタ強くてカッコイイじゃん。名前は?」

「石コロです」

「へー、いい名前だね」

「そ、そうですか?」

 かなり前衛的なネーミングだと思うんだが。


「筋肉すごいね、触らせて」

 言うが早いか、茶髪の女性が俺の腹筋に手を伸ばしてきた。

「すご~い、カチカチじゃん。鍛えてるんだね」

「あっ、ずるい、わたしも」

「私も触りた~い」

 3人の美少女が俺の腹筋や上腕二頭筋をなで回す。嬉しさとくすぐったさで、思わずにやけてしまう。


「ひょっとして、ここもすごいのかな?」

 茶髪の女性が冗談めかして言いながら、俺の下腹部を指差した。

 こんな美少女が、下ネタだと……!?

「…………」

 少し離れたところにいるフィオナさんが、地獄の形相でこちらを睨んできた。


 すると黒髪の女性が質問してくる。

「ねぇ、さっきフィオナから聞いたんだけど、石コロたちって恋人なんだよね?」

「はい、一応そうです」

「どこまで進んでるの?」

「ど、どこまでとは?」

「キスとか、その先はもうしたのかってこと」

「い、いえ、まだ手も握ってないです」

「へ~、純愛なんだね。あたし、そういうのに横やり入れるの大好き」

 茶髪の女性が小悪魔めいた笑みを浮かべ、ゾクッとした。


「石コロ、女性経験は?」

「そ、それは……」

「すぐに答えられないってことは、童貞なんだ?」

「じ、実は……」

「あはは、可愛いね」

「女の子のこと、教えてあげよっか?」

「私たちの中で、誰が一番タイプ?」

「い、一番と言われると……」

 思わず3人の胸から上を品定めしてしまう。


「ヤダ、おっぱい見すぎ」

「触りたいの?」

「初心なんだね」

「…………」

 次から次に飛んでくる質問に、俺の脳はキャパシティオーバーになっている。

 ただ、これだけはわかる。俺は絶対、この島に永住しなければならない。


「――レオンっち、ちょっと」

 夢見心地になっていると、突然フィオナさんに肩を掴まれ、そのまま島の女性3人から引き離された。

 そしてほぼゼロ距離まで顔を近づけられ、怒鳴られる。

「デレデレすんなや!」

 激ギレしていた。


「あと、なんで手も握ってないって言った?」

「なんでって、事実ですよね?」

「たしかに手は握ってないけど、ウチらってけっこう進んでるでしょ! ウチがレオンっちの背中に乗ってお馬さんごっこしたし!」

「お馬さんごっこを男女の進捗状況として報告しろと!?」


「そ、それだけじゃなくて……ダンジョンでウチの……」

 怒っていたはずのフィオナさんだったが、急に声が消え入った。

 たぶん、俺がアソコを見てしまったことを指摘したかったのだろう。でも恥ずかしくて断念したようだ。


「とにかく、これ以上調子に乗ったら殺すからね。たしかにフェンリルを倒したのはカッコ良かったし、人気出ちゃうのはわかるけどさ……」

 そうつぶやくフィオナさんの背後に、さっきの茶髪の女性が歩み寄ってきた。

 そして、とんでもない提案をしてくる。


「石コロ、今夜アタシたちと一緒にお風呂に入らない?」


「っ!? マジですか!?」

「うん。背中流してほしいなぁ」

「喜んで!!」

 そう叫んだ直後、フィオナさんが背後から首を絞めてきた。


「ダメに決まってるでしょ! レオンっちはウチの彼ピ(仮)なんだから!」

「いや、でも、この島では女性から誘われた場合、男に拒否権はないらしいので――」

「ア゙ア゙ン?」

「すみません……。命が惜しいので、一緒にお風呂は無理です……」

 俺は悔し涙を流しそうになりながら、女性たちに頭を下げた。


 すると、茶髪の女性は俺を睨みつけてきた。

「――はぁ? そんなの許されるわけないじゃん」

「えっ……?」

「その子の言う通りよ。フィオナ、独占は認められないわ」

 いつの間にか近くに立っていたエヴァンジェシカさんがたしなめた。


「この島において、男はすべての女性の共有物。争いを避けるため、例外はないわ」

「つまり、レオンっちもシェアしろってこと?」

「そういうこと。島のしきたりを破ったら、大変なことになるわよ」

 エヴァンジェシカさんは脅すように言った。


 気がつくと島の女性たちはこちらに、獲物を見るような視線を向けていた。

 もしかしたら彼女たちの誰かに近々襲われるかもしれないという恐れと期待で、胸が高鳴ってしまう。

 ――だが、俺と島の女性たちの間に、フィオナさんが立ちはだかった。

「一緒にお風呂なんて、そんなの絶対ダメ!! だってレオンっちは……今夜はウチと2人でお風呂入るんだから!!」


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