年下の女性教官に今日も叱っていただけた2

第4話 美少女のお風呂に潜入させていただけた①

 入浴後、それぞれ服を着た俺たちは岩山を登り、入浴しに来るエヴァンジェシカさんを捜し始めた。

 一応正当な理由があるので、横にいるフィオナさんの視線を気にせず覗きができる。ものすごい状況だ。

 物音を立てないように注意しながら、点在する温泉を2人で見て回る。

 日はすっかり落ちている上、月は群雲によって隠されている。残念ながら、入浴中の女性の体はほとんど見えなかった。


 とはいえ、このくらい暗くないと見つかる可能性が高いので、痛し痒しだ。

 やがてエヴァンジェシカさんの赤髪を発見した。1人でゆったり入浴しているようだ。

 俺は暗闇に目を凝らす。頼む太陽、今すぐ昇ってきてくれ……!!


「アチャー。エヴァぴよ、脱いだ服をすぐ傍に置きすぎ。これじゃ鍵を盗むのは無理そうかな……」

 フィオナさんが囁いてきた。一瞬意味がわからなかったが、エヴァンジェシカさんのことを「エヴァぴよ」と呼称することにしたらしい。


 改めて温泉を見下ろすと、たしかにエヴァンジェシカさんと、脱いだ服との距離がものすごく近かった。1メートルくらいしか離れていない。あれでは服に近づくことさえ不可能だ。

 仕方ない。このままエヴァンジェシカさんの湯浴みを拝見させていただこう。


「――ねぇレオンっち。ウチが気を引くから、その間に服を調べて」

「へっ?」

 しかし、俺が聞き返した時には、フィオナさんは岩山を下り始めていた。

 動揺しつつ、俺も後に続く。


 やがて麓に降り立ったフィオナさんは、温泉の入口側に回り込み、さも今ここにやってきたかのようなトーンで、エヴァンジェシカさんに話しかける。

「エヴァぴよ、やほ~」

「……エヴァぴよ……?」

 エヴァンジェシカさんは突然フィオナさんが現れたことより、斬新な呼び名に引っかかったようだ。


「フィオナ、何の用? 入浴中に来るなんて、失礼じゃない」

「ちょっと話があって来たの。女同士なんだし、別にいいじゃん」

「フィオナは服を着ているんだから、対等じゃないわよ。今すぐ出ていくか、服を脱ぐかしてよ」

「――え゙っ」

 フィオナさんは不自然に動揺した。

 とはいえ、俺に見られていると知っているのだから、当然のリアクションである。


「い、いや、ウチはさっきお風呂から上がったばっかだし」

「それなら、ワタシが上がるまで、外で待っていなさい」

 エヴァンジェシカさんは冷たく言い放ち、温泉の入口を指差した。


「……わかったよ! 脱げばいいんでしょ! 脱げば!」

 フィオナさんはヤケクソ気味に叫んだ。

 事情を知っている俺からすると怪しすぎる行動なのだが、エヴァンジェシカさんはそこまで不審がっていないようだ。


 そしてフィオナさんは覚悟を決めたらしく、すぐ近くで待機している俺の目の前で服を脱ぎ始めた。

 目の前の光景が信じられなかった。クラスメイトの可愛い女の子が、どんどん全裸に近づいていっているのだ。

 一応俺はフィオナさんの彼ピ(仮)という存在だが、これまで恋人らしいことはほとんどしていないし……。


 などと考えている間に、フィオナさんは下着姿になった。そしてこちらに背を向けた後、ブラジャーを外し、大きな胸を露わにする。

 さらに、パンツも脱ぎ始めてしまった。


 ほぼ真っ暗なので色も形もわからないが、素っ裸のフィオナさんがすぐ傍にいるという事実だけで、この上なく興奮してしまう。

 脱衣を終えたフィオナさんは、手早くバスタオルを巻いた後、すぐさまお湯の中に身を沈めた。


「……これでいいんでしょ?」

「なんで怒っているの? 女同士なんだから別にいいと言っていたのはフィオナじゃない」

「…………」

 フィオナさんは押し黙った。たぶんだが、今俺の方を睨みつけている気がする。


「それで、話とは何なのですか?」

「……えっと、ちょっと言いにくいことなんだけどね……」

 フィオナさんははぐらかしつつ、温泉の中でゆっくりと移動していく。


 やがて、エヴァンジェシカさんの服が置いてある場所と、ちょうど反対側に陣取った。当然、俺が近づきやすくするためだろう。

 俺は意を決し、匍匐前進で温泉に近づいていく。音を立てないよう慎重に、しかしなるべく急がなければならない。


「……ウチさ、レオンっちのことが大好きなんだよね」

「――っ!?」

 思わず吹き出しそうになった。

 フィオナさん、いきなり何を言い出すんだ……!?

 だが数秒経ったところで、今のはエヴァンジェシカさんの注意を引くための嘘話なんだと気がついた。


「レオンっちって、メチャクチャ強いじゃん? ちょっとエッチなところもあるけど、男子って感じで可愛いし。むしろエロで釣れば何でもやってくれそうで、悪くないかなって思うこともあってさ」

 ……嘘話、なんだよな?

 俺への評価が、やけに具体的なんだが……。


「……なんで急にノロケ話をし始めたんですか?」

「ああ、ごめん。今のはウチがどれだけレオンっちのことを想っているか知ってほしかっただけで、本題はここから。この島ではさ、1人の男を複数の女性でシェアすることもあるんだよね?」

「その通りよ」

「でも、ウチはレオンっちをウチだけのものにしたいの。他の人には一秒たりとも渡したくない。できることなら異性と会話しないでほしいし、何なら視界にも入れないでほしい。ていうかレオンっちは普通に浮気しそうだから、もはや家に監禁しておきたいレベル」

 なんかだいぶヤバいことを言い出した。

 これが嘘話で良かったぜ……。


「残念だけど、交尾する男を自由に選択できるというのは、この島における決まり事なのよ。自由を尊重するのが、ワタシのモットーだから」

「でもそれって、レオンっちを独占したいっていうウチの自由を侵害してない?」

「それは自由ではなく、強欲よ。目指すべきは島に暮らす女性の最大多数の最大幸福だと思わない?」

「ぜんぜん思わない」

「意見の相違ね。でも、この島に暮らすかぎり、ルールには従ってもらうわ」


 エヴァンジェシカさんがそう宣告したところで、ようやく俺は彼女の衣服に手が届くところまで進んできた。

 すぐさま服を漁り、鍵を探す。


 だが――

「これ以上の問答は無用。ワタシは上がらせてもらいます」

 突然、エヴァンジェシカさんが立ち上がってしまった。