年下の女性教官に今日も叱っていただけた2

第6話 女性教官を裏切らせていただいた③

「おそらくリリアは、この島からの脱出を計画しているわ」

 俺が足枷を外した後、エヴァンジェシカ様は一緒に食事していた他の男たちを立ち去らせ、2人きりになったところでそう告げた。


「リリアさんが? そうなんですか?」

「まず間違いないわね。だってリリアは、他人の言いなりになるような女性じゃない。そう思わない?」

「そ、そうですね……」

 返答に困った。俺も何となくそんな予感はしているが、脱出計画なんて聞かされていないし……。

「その様子だと、石コロは脱出計画を聞かされていないのね?」

 核心を突かれ、俺は素直に頷いた。


「石コロに内緒で準備するメリットはないわ。計画を漏らすと警戒されているか、計画内容を記憶から消されているかのどっちかね。おそらく後者じゃないかしら」

「さぁ……。俺からは何とも……」

「単刀直入に聞くわ。石コロはこの島をどう思っている?」

「楽園です」

「そうでしょう? しかもこの島の女性はみんな、男性としての魅力が一番あるのは石コロだと思っている。その上、女性側が望めば、一夫多妻だって認められるの。そんなの、島の外ではあり得ないことでしょう?」

「そうですね。夢のような状況です」


「でもリリアが島を出ていくとしたら、石コロの意思は無視して、無理やり同行させられるでしょう?」

「そうでしょうね……。命令されたら逆らえないですし……」

「リリアさえいなければ、石コロはこの島の女性を独占できる。少なくとも、エルミノーラたち3人は石コロのもの。それに今後、若い女性が漂流してくる可能性もある。島に残った方が美味しい思いができると思わない?」

「ゴクリ……!」


「というわけで、石コロに命じるわ。リリアの下を去り、ワタシの奴隷になりなさい」

「――っ!!」

「それから、最初のミッションを与えるわ。リリアから脱出計画の内容を聞き出し、ワタシに報告するのよ」

「い、いや、でも、リリアさんを裏切るっていうのは……」


 逡巡しながら答えると、エヴァンジェシカ様はにこやかに笑った。

「安心しなさい。ワタシは脱出の証拠を掴んで、計画を阻止したいだけ。リリアを酷い目に遭わせたりはしないわ」


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 俺は2人の胸を交互に見つめながら、リリアさんに質問する。

「それで、島から脱出するって、具体的にどういう手はずになっているんですか?」

「まず、この島を調査したところ、勇者訓練校がある本土と地続きではなく、離島であることがわかりました。海には魔物がいるので、泳いで渡ることは難しい。そこでレオンさんに舟を造ってもらい、南の海岸に隠してもらっています」

「えっ? 俺が舟を造ったんですか?」

「そうです。もっとも、毎日記憶を消しているので、何も覚えていないと思いますが」

「なんで俺の記憶を……?」

「わたしも望んで消しているわけではないです。ただ、毎回お風呂で起きたことをすべて忘れさせているから、ついでに忘れてしまうんです」

「ついでに……」

「そうです。おかげで、お風呂に来る度に脱出計画を一から説明する必要があって、面倒なんですからね」

「そんな苦情を言われても……」

 どうやら記憶消去というのは、そこまで細かく内容を指定できるわけではないらしい。


「ちなみに、海岸には脱走者を捕まえるための罠が仕掛けられているんですよね? リリアさんたちが最初に落ちた落とし穴みたいな……。ああいう罠の位置とか数とかはわかっているんですか?」

「それもレオンさんが調査済みです。エヴァンジェシカさんたちに悟られぬよう、舟周辺の罠だけを解除したということでした」

「それも俺が……」

 自分の才能が怖い。


「ていうかこの脱出計画、もしかしてほぼ全部を俺1人で準備したんですか……?」

「そうですね。レオンさんはよく働いてくれました」

 リリアさんは冷笑を浮かべながら、お湯の中で立ち上がった。

 少し透けたタオルが肌に張り付いているのを見て、期待が高まる。


「まさか、ご褒美に裸を見せてくれるんですか?」

「何バカなことを言っているんですか。わたしはフィオナさんのような恥知らずではありません」

「いや、ウチも恥ずかしくないわけじゃないから。ただ、温泉ってバスタオルなしの方がリラックスできるし、どうせレオンっちは全部忘れるから外してるだけ。……あと、レオンっちは彼ピ(仮)だから、一時的になら見られてもいいかなって……」

 恥ずかしそうに弁解するフィオナさん。正直、「見られてもいい」と言われたのは、ものすごく嬉しかった。


 ところで、シエラさんが当然のように全裸なのはなぜなのだろうか? 2人とも言及しないということは、やはりママだからか?

「さて、そろそろ上がりましょう」

 リリアさんが俺を見下ろしながら言った。


「レオンさんが服を着たら、いったんここでの記憶を消した後、あらためて脱出計画を話します」

「わ、わかりました」

 俺は肥大化した股間を隠して立ち上がり、脱いだ服がある方向に向かって歩き出す――


「ちょっと待って」

 一歩踏み出したところで、リリアさんに呼び止められた。

「リリアせんせー、どうかしたの?」

「おかしいです。レオンさんはいつも、最後まで温泉の中にいて、わたしたちが上がるところを舐め回すように見つめています。わたしたちにどう思われるかなど気にせず、1秒でも長く女性の裸体を鑑賞したいという気色悪さを発揮しているんです。なのに今日は、最初にお風呂を出た……」

 マズい。リリアさんが俺の性質を理解しすぎている。


「まさかレオンさん――」

「あああああああーっ!!」

 俺は全力で叫びつつ両手で耳を塞ぎ、走り出した。

 エヴァンジェシカ様から言われていたのだ。「脱出計画の内容を聞いたら、両耳を塞ぎつつ、大声を上げながら逃げてきなさい。そうすればリリアの命令は聞こえなくなり、記憶を失わないで済むわ」と。


 リリアさんが慌てた様子で追いかけようとしている。両手を耳に当てたままでは服を拾うことすらできないし、このまま逃げるしかなさそうだ。

 全裸で島の女性と遭遇するリスクはあるが、この素晴らしい記憶を守るためなら、安いものだ。

 もっとも、リリアさんはバスタオル1枚だし、シエラさんとフィオナさんに至っては完全な全裸。すぐに追ってこられるとは思えないし、ある程度引き離したところで立ち止まり、葉っぱでパンツを作ることにしよう。


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