アリソン
第一章 「アリソンとヴィル」 ⑦
「お金にはとても換えられない。価値がありすぎてな。ただ……」
「ただ?」
二人と会話を見聞きしながら、
「うん。おいしい」
ヴィルがのんびりとお茶を飲んで小さくつぶやいた。
「ただなあ」
老人はアリソンを
「その宝は、ロクシェとスー・ベー・イルの間の戦争を終わらせることができる。それだけの価値のある宝だ」
老人はそう言った。ヴィルが老人を見た。
「どうだ、
誇らしげに老人が言った。
「それが本当なら、凄いわね。でも、どうやって知ったの?」
アリソンが
「
アリソンが
「ナントカ
「ああ。そしてわしはその隊員の一人だった。作戦の帰りに、本当に偶然に宝を見つけた。そりゃあ驚いたよ。しかしとても持って帰れるようなものではなかったから、全員で秘密を守ることにして、その場に残してきた」
「マクミラン中佐以外は、全員
ヴィルが発言する。老人は、
「それは陸軍がついた
「……それが本当なら、僕が教師に教えられてきたのは〝いいかげんなこと〟になります」
ヴィルの言葉を聞いて、老人はにやりと笑った。
「歴史とは、常にいいかげんなものだよ。重要なのは〝真実をどうやって伝えるか〟ではなく、〝何を自分達の都合のいいように伝えるか〟だからね」
「…………」
「じゃあ、なんでその宝を発表しないの?」
アリソンが聞いて、
「んー……、宝があまりにも凄すぎてな。みんな恐れをなしてしまったんだな。それに……、ほら、発表だけじゃ信じてもらえないだろう。何か
老人の歯切れが急に悪くなる。
「じゃあ、なんで取りに行かなかったの?」
「そりゃあ……、戦中や戦後すぐは、混乱していたからなあ。おまけに、宝のあるところはスー・ベー・イルの
「今は?」
「……
「おもしろいわ。──本当に、あるの? そこに行ったら、絶対に
「ああ」
老人は
「発見者は英雄になれる?」
「間違いないな」
「ふーん……」
そうつぶやいて、アリソンは考え込む。
「信じるかい?」
老人が聞いた。ヴィルは
「信じてもいいわ」
「おお。それは
老人は顔をほころばせて、ポットに手をかける。アリソンは左手を振って、
「お茶はもういいわ。それより──」
「ん?」
「信じるから、その場所を教えて。わたしがお
老人の手が止まった。
「…………。し、しかしなあ、サイドカーでは行けないな」
「それなら心配ないわ」
アリソンはそう言うと、
「これを見て」
アリソンが突き出して広げて見せたジャケットには、
老人は、
「これは、驚いた……。お嬢さんは軍人さんだったのか」
「空軍よ。わたしの
「アリソン……。そんなことをして大丈夫なの?」
ヴィルが聞いた。アリソンはヴィルを見て、当たり前のように言う。
「ううん」
「〝ううん〟って……」
「間違いなく
アリソンが顔を向けると、老人はまだジャケットを見ていた。
「驚いたなあ。お嬢さんのような軍人がいるとはなあ……。時代は変わったもんだ。ちょっとよろしいか?」
老人はアリソンのジャケットに手を伸ばした。アリソンから受け取ると、セロンの
「〝おお。親知らずの小鳥は
小さくつぶやいた。
「ん? ──どう、行かない?」
アリソンが身を乗り出して
老人は、アリソンにジャケットを返した。小さく何度か
「うん。君達は楽しいな。教えてみるのも、おもしろいかもしれないな」
そして一度



