学園キノ
キノの旅第四部・学園編第一話 「キノ颯爽登場!」─Here Comes KINO─ ④
その
「女神を無視するからですよ、まったく」
ハンカチで涙をぬぐった女神が、実に偉そうに言った。女神はしばらく、〝最近の人間は神様を
「あなた方には、意志に関係なく
「うん分かった。──で、こっちは?」
「うひゃあ!」
エルメスの質問に
「な、なんでです?
「モトラドには効かなかったみたいだね」
エルメスが特別なんでもないことのように返し、女神はいたくプライドを傷つけられたのか、急にキッと
「では! あなたは全然いらないので、今ここでスクラップにでもなってもらいます!」
「それは困るなー」
エルメスは、ちっとも困っていない口振りで言った。
「できればストラップがいい」
* * *
さて朝のHRと一時間目の間に教室に滑り込んだ
四時間目が先生の
「まだ
とまあお約束の言葉を残して先生が去った後、教室は三秒で無政府状態に陥ります。
木乃はここぞとばかりに、廊下を
まだあまり生徒がいない学食で、冷やしタヌキうどん大盛りを前にして、
「しあわせー。いただきます」
木乃は手を合わせてから、食べ始めました。
食べ終わりました。相変わらず早いです。
木乃は混み出す前に学食から出て、片手に学食の売店で買ったおやつ入りビニール袋を提げ、片手にストローが刺さった紙パックのオレンジジュースというお
晴れ渡った
「うん。
木乃は、
早く授業が終わって早く食べ終わったので、
「お昼休み、ひははなー」
「教室帰っても
「誰かいると
エルメスがぼやきました。そこで木乃は少し考え、ハタと思いつきました。
「じゃあ──」
この学園の校舎は、L字型をしていて四階建てです。一部斜面に触れているので二階部分に出入り口があるため三階建てと勘違いできる部分もありますがそれはさておきます。
そしてL字の長い方には屋上があります。そしてこの屋上は、あまり生徒に人気のある場所ではありません。
ダラダラと連なる緑の丘と、その下だけまるで木々を蒸発させながら遠くへ消えていく高圧
まあ
「禁止されてないからでしょ。校則で禁止したら、みんな来たがるよ」
四階からの階段を登る木乃にエルメスが言って、木乃はそれでも誰かいたら困るから喋らないで、と小声で
階段をほぼ登り終えて、屋上へ出るための
「あれ? 誰かいるのかな?」
両開きの扉の一枚が大きく開いていることに気がつき、木乃がややがっかりします。誰かいるとのんびりひっくり返っておやつを食べたり、エルメスと
木乃は別に悪いことをしているわけではありませんが、こっそりと足音を立てずに、掃除道具入れのロッカーの
閉まっている鉄扉の脇から木乃の頭が横にぬっと突き出て、大きな目がぱちくりしながら屋上を眺めます。風が吹いて、垂れていた黒い髪を揺らしました。
「そういうことになるな」
声が聞こえました。相変わらずよく通る声です。風に乗って来たので実際の出所以上に近くから発せられたように聞こえ、木乃が
扉から十メートルほど
一人は木乃と同じセーラー服の女子で、
もう一人は、腰に刀を下げた男子生徒でした。ちなみにこの学園に、
「どうしてもだめなんですか! 私──入学したときから!」
せっぱ詰まった声で言うので、状況はもう知れました。モテモテ静様に下級生必死の告白の図です。
一方静はそんな相手を前にして、毛嫌いというほどではありませんが、ほとんど感心がなさそうな顔です。もう話は終わったから解放してほしいと、口には出していませんが雰囲気には出ています。
双方無言の五秒が過ぎました。
「悪いが、そんな
静がぼそっと言いました。この刀男の運は生まれつき極悪なのか、そのタイミングは最悪でした。
今静が言ったのは、〝私に誰かと付き合う時間はない〟という先ほどからの会話全体を統括しての〝お断り〟の言葉でしたが、女子生徒が勇気を振り絞って再び何か言おうとしたときにそれを押さえる形で言ってしまったものですから、しかもその内容が、〝もう一度、どれほどに私が
「!」
静はそれを見てそれなりに少し驚いたようでしたが、だからといってフォローをしたり
彼女は
「!」



