ビートのディシプリン SIDE1
幕間 interphase
「そういえば、昔の君によく似た少女を一人知っているよ」
人里離れた山小屋で、二人が話している。
「へえ? 僕みたいな変な人間が他にもいるとは信じられないな」
彼がそう言うと、男は笑って、
「そういう意味じゃない。彼女は別に周りから変人だとか思われてはいないよ。ごく普通の人だと認められているし、本人もそうだと思っている。だが──」
「実は違う、と」
「そうだ。彼女は自分ができることをよく知らないんだよ。自分がなんとなくしていること、それがどんなに特殊で、そして──巨大なものであるか」
「僕は別に大きくもないけどな。でもその彼女はそんな大きなことをしていて、それで気が付かないってことがあるのかな?」
「巨大なことと言うのは、それが真に巨大なことであればあるほど端からは把握できないものさ。君の才能のようにね。ましてやそれが、自分よりも他人に対してより大きな意味を持つものだとなおさら、自身にはぴんと来ないものだ」
「へええ?」
彼は首をかしげたが、すぐに、
「その彼女の〝才能〟っていうのは具体的にどういうものなんだい」
と好奇心で大きくなった眼で質問してきた。
「彼女がそれをどう捉えているのかは知らないが──私なりの言葉で言うと、それは〝人の心の中の花を咲かせることができる〟というようなものだ」
「仁の能力に似ている?」
「いいや。私には欠落が見えるだけだ。だが彼女はどうやら、人の心の中の迷いそのものを感じることができるらしい──しかし自分ではそれがどういう意味を持つのか気がついていない」
「いつか、気がつくときが来るのかな」
「さて。このまま、自分は普通だと思いながら生きていくのが幸せなのかも知れない。だが、その彼女も、たとえば同じように己が



