青春2周目の俺がやり直す、ぼっちな彼女との陽キャな夏

幕間①『向日葵と、君と』

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 彼女と僕が初めて出会ったのは、中学二年に上がって二ヶ月ほどがった頃のことだった。

 確か昼休みにクラスにいたくなくて、適当な避難場所を探していた時だったと思う。

 校内の人のいないところを探して歩いていて、ふと迷いこんだのだ。

 校舎裏の、花壇が立ち並ぶ一角。

 こんな場所があったのかと驚いた。

 静かで、人の気配がなくて、だけど色鮮やかなその場所は、まるで周りから切り離されているかのように思えた。


向日葵ひまわり、好きなのかな?」

「!」


 飛び上がって驚いた。

 人がいたとは思わなかった。

 振り返ると、そこには向日葵ひまわりの陰に隠れるようにしてたたずむ、一人の女子の姿があった。

 向日葵ひまわりの黄色に映える色素の薄い髪。

 夏の日差しの下にあってなお陶磁器のように白い肌。

 吸いこまれていきそうなはく色の瞳。

 その人形のように整った顔には、見覚えがあった。

 確か……


みや……?」


 俺の問いに、にっこりとうなずく。


「同じクラスの、ふじくんだよね?」

「あ、うん。そうだけど……」


 思わず言葉に詰まる。

 みやとは同じクラスとはいえほとんど話したことがない。

 いやそれを言ってしまえば、クラスメイトで親しく話したことがある相手なんて、一人もいないわけなんだけれど。


「ええと、どうしてみやはここに……?」

「わたしは園芸部員だから。ふじくんこそ、どうしてこんなところに? ここはほとんど人は来ないのに」

「え、僕は……何となく」


 本当の理由はどうしてか言いたくなくて、僕はそう答えた。

 濁した声から何かを察してくれたのか、みやもそれについてはそれ以上は追及してこなかった。


向日葵ひまわり、好きなの?」

「え?」


 さっき投げかけてきた質問を、みやは再び口にした。


「じっと見てたから、そうなのかと思って」

「……別に、特に好きなわけじゃない。でも……」

「?」

「この場所は……少しいい、かも」


 それは僕の正直な気持ちだった。

 ここは静かで、穏やかで、どこか居心地がいい。

 それに向日葵ひまわりは……モチーフにするくらいには、好きだ。

 その言葉に、みやは声を上げて笑った。


「そうなんだ! そう言ってくれるとうれしいな。わたしもここは好きだから」


 それは向日葵ひまわりのような笑顔だった。

 彼女のすぐ後ろで咲く、大輪の花々に負けないほどの明るくてぐで元気な笑い顔。

 気づいたら、僕はこう口にしていた。


「あ、あのさ……」

「?」

「えっと、また来ても……いいかな?」


 それはたぶん、せいいっぱいの勇気を振り絞って言ったものだったと思う。

 その僕の言葉に。

 みやは再び笑みを浮かべると、大きくうなずいた。


「うん、向日葵ひまわりみたいに素敵な提案! いつでも来て! 待ってるから」



 ──これが僕と、みやずみの、初めての出会いだった。