エイム・タップ・シンデレラ 未熟な天才ゲーマーと会社を追われた秀才コーチは世界を目指す
エイム・タップ・シンデレラ 未熟な天才ゲーマーと会社を追われた秀才コーチは世界を目指す ⑧
そこでふと、会場で出会った
興味があったら連絡してよ、か。
***
指定された住所に到着した
中目黒の駅から徒歩五分程度の好立地。一階はガラス張りになっていて、いかにも今風のオフィスだ。入り口は二階にあるようで、
少し待っていると、迎えにきたのは
「すみませんね、わざわざ来てもらって。オフィスを見てほしかったんだ」
「こちらこそ突然ご連絡してすみませんでした。素敵なところですね」
「もともと広告代理店が使っていたんだよ。色々あって放置されているところを貸してもらえてさ。たいして広くないけど、スタッフとヴェインストライクチームだけなら余裕だと思う」
「それで、マネージャー志望ってことでいいんですかね」
「まずは話を聞かせてもらえればと思いまして」
「なるほど。今の職場に居づらくなった?」
自分の名前を検索すれば出てくるレベルのニュースだ。知っているのも当然だろう。
一息ついて、気持ちを落ち着かせる。
「はい、それもあります」
「あの件については同情するよ。まあ、運が悪かったね。でもこっちとしては運が良かった。半分勢いで名刺を渡したけど、
「端的に言うと、うちのチームの経営をしてもらいたいと思っている」
「経営?」
「選手の獲得から、チーム運営、プロモーションまで任せたい」
「えっと、どうして私なんでしょうか。畑違いですし、全く経験がない人間に」
「eスポーツチームを運営した経験なんて、持っている人間の方が少ないよ。重要なのは意欲と地力だ」
「意欲と地力、ですか」
「こっちだって、来てもらえるなんて思ってなかったからね。君の方はエリートコースから軽々と外れられるタイプじゃなさそうに見えたしさ。でも、こちらでの待遇は悪くないと思うよ。少なくとも初年度は前職と同等の給料を保証しよう」
意外な提案に思わず「え」と声が漏れる。
「ゲームチームのマネージャーごときに、って? そんな甘い仕事じゃないよ。実際、他のチームも有能な人材には金を払ってる。逆に言うと、うまくいけばそれだけの金を稼げるマーケットってことだ」
「すみません、正直意外でした」
「謝らなくてもいいさ。ただ、もちろんリターンだけじゃない。結果は出してもらう必要がある。最低でも世界大会には出てもらいたい。理想としては、日本最高のチームを作ってほしい」
日本最高のチーム。
「まあ、もしチームが潰れても、僕の会社の研究部門を紹介してあげるよ」
「ほんとですか」
思わず声が漏れる。
「こっちは本当に
「いえ、そんなことは。でも、本当にどうしてそんな待遇で」
「評価しているって考えてほしいね。どうだろう。冷やかし半分だったけど、意外に
どう返事を返すか迷う
君の方は。
「もしかして、妹の、
顔を上げた
「ご家族のことはこの前のイベントの時から気づいていたよ。ネット上では全く話題になってなかったみたいだけどね。僕はたまたま、
「父のことも、ご存じなんですね。妹とは、今はほとんど連絡も取っていないです」
「そうなのか。あの事件がきっかけかい」
やはり、あの事件のことも知っていたのか。
父は世界大会でミスをしてから、そのまま負けてしまった。
チート疑惑の話もどこかから漏れて、根も葉もない
「妹さんとは一緒に暮らしてなかったの? もちろん、話したくなかったらいいけど」
「いえ、大丈夫です。両親は離婚しましたが、父が収入を失ったので、私たちの親権は母に移りました。でも、
「けど、
「はい、働きながらゲームを続けていましたが、
「なるほどね。そこから姉妹の運命が分かれたってわけだ」
「……やっぱり、妹のことがあるから私に声をかけてくれたんですか?」
「『魔王の姉』のブランドに興味がないと言ったら
そこで
誰にも興味を持たれなかった自分と対照的に、何千人もの観客の注目を集めていた
会社で
そして今も、結局は
「この場で決めなくてもいいよ。誰か信頼できる人に相談したらいいんじゃないかな」
信頼できる人。
母に相談したら卒倒するのは間違いないだろう。大学時代は研究しかしておらず、会社に入ってからも仕事だけだ。相談できるほど親しい人は、
なおも黙っている
「それこそ、妹さんに相談してみれば?」
***
土曜日の昼間、新宿にあるホテルのラウンジの一角。
そこに座るべき人物との会話を頭の中でシミュレートしていると、知っている姿が目に入った。向こうも気づいたようで、
「



