陰キャの俺が席替えでS級美少女に囲まれたら秘密の関係が始まった。

一章「席替えから始まる学園生活」 ①

 今日は朝からやけにいやな予感がしていた。

 目が覚めたと思ったら急にかなしばりにってしまい30分のロス。

 たまたまやってたテレビのうらないは、俺の射手座がダントツの最下位。

 家を出た時間的に、朝のHRに間に合わない可能性もある。

 ただでさえ俺はクラス内でいんキャオタクとして通っているのに、こくなんてしたらさらに立場がなくなる。


「もう朝のHRが始まったかな? だとしたらかなりヤバいぞ!」


 クラス担任の山田は、常に竹刀しないを持ち歩いている時代さくの暴力教師であり、もしこくなんかして彼のげきりんれたら……ただじゃ済まないだろうな。

 俺は本気であせりながら、自分の教室である2年B組の教室に飛び込む。

 すると──教室では席を移動するクラスメイトの姿があった。

 スクランブル交差点を行き来するひとだかりのように、それぞれちがう方向へ行ったり来たり。

 クラスメイトはみな、自分の机の中に入っていたものを取り出し、かかえながら移動している。


「このクラスになって初めてだよねー」

「うんうん。山田先生厳しいからなんてしないと思ってたし」


 せ、席、え……?


「それもこれも委員長のくろたのんでくれたおかげだよな」


 クラス内を移動するクラスメイトの会話を聞く限り、どうやら学級委員長のくろが担任の山田を説得して席えを行ったらしい。

 ちゆうせんすでに終わっているようで、それぞれが黒板に書かれている席へ移動しているみたいだ。

 前黒板には白のチョークでれいに名前が書かれており、俺、いずみりようの名前もしっかりあった。

 席えなんていんキャの俺にとって全くうれしいイベントじゃない。

 俺みたいないんキャは、好きな相手ととなりになりたいとか友達と近い席になりたい、なんて感情を持ち合わせていないからだ。そもそもぼっちだし。

 さてと、俺の席は……って、ん?


「う、うそ……だろ」


 黒板に書かれた俺、『いずみりよう』の名前の周りを見て、俺はぜんとする。

 ひだりどなりの席にはいち

 みぎどなりの席はくろ

 さらに、前の席にはやまあい……だと!?

 左右と前方、俺の周りの席にいたのは、だったのだ。

 2年B組のクラスカーストトップに君臨するS級美少女──いちくろやまあい。彼女たちは常にいつしよに行動している美少女三人衆である。

 明るいくりいろかみのギャルっぽい見た目をしたいちと、くろかみせいで2年B組の学級委員長も務めるさいしよくけんくろ、そして甘えた声をしたばくにゆういもうとけい美少女のやまあい

 この三人は、クラス内だけでなく高校全体で見てもひときわ目立つ存在であり、だれもが認めるS級美少女である。

 クラスカーストトップの彼女たちに対し、クラスカースト最底辺といっても過言ではない俺は、これまで話したこともなければ、目が合ったことすらない。

 そんな彼女たちに席を囲まれてしまった目の前の現実を受け入れられず、前黒板に書いてある自分の席を何度もかくにんする。

 しかし何度見たところで俺の名前にちがいはなく、俺の名前はこのクラスの『美少女三人衆』に囲まれていた。

 こ、これは……どう考えても最悪の席じゃないか!

 あの三人は何もしていなくても周りの視線を集めるほどのぼうと存在感があるし、だれもが認めるクラスの中心。

 そんな中心である三人に囲まれた席なんて……ごくでしかない。

 俺はひっそりと、教室のすみの席でラノベを読みながら、ニヤニヤしていたいんだ。

 それなのにこんな席じゃ、落ち着いて本も読めないだろ!

 俺はどうようかくせないものの、早く席を移動しないと今の俺の席に座る人が困るため、とりあえず荷物をかかえ、ごくの席へと移動する。

 俺が移動した時には、すでに目の前の席にやまあいが座っていた。

 やまは『カワイイ』のごんと言われるほど、何から何まで〝わいい〟大人気の女子生徒。

 明るいかみ色のツインテールも、まん丸で大きなひとみとそのアヒル口も、あざとさを感じさせる。

 また、クラス男子たちがやまに対して熱視線を送るのはただわいいというだけではなく……そのも一つの理由だろう。

 こしは細いのに胸と太ももがムチッとしているのはグラドル並みに反則のスタイルだと思う。


あいおはよ」

「あっ、じゃん。おはよ〜」


 すると今度は美少女三人衆の二人目、いちが登校してきた。

 いちは俺のひだりどなりの席に荷物を置いて座る。


「あたしらの席近いね?」

「だよねー? ちゃんが近くにしてくれたのかな?」

「じゃなきゃこんなにあたしら近くならないっしょ? ま、どっちでもいいけど」


 いや、こつちからしたらいいめいわくなんだが……!


「今日ののネイルめっちゃぇ。トップコート変えたの? それともオイルかな?」

「別に大したことしてないし」


 いちはクールに言うと自分のスマホに目を落とした。

 いちはそのするどい目つきととがった性格がとくちよう的なダウナーなギャル。

 やまちがってわいいというよりも美人顔で、胸はもちろん太ももがハンパなくデカい。

 二次元のギャルはそこそこ好きな俺だが、現実のギャルは大の苦手だ。

 理由はシンプル。この世界にはなんて存在しないからだ。

 きっといちは俺みたいなオタクのことをけいべつしてるだろうし、極力関わりたくはない。

 オタクにやさしいギャルなんて空想上の生き物だからな。


「てかちゃんおそいね? おトイレかな?」

「どうだろ。あ、山田が来たよあい。前向かないと」


 いちが言ったしゆんかんろうから担任教師の山田が現れ、続いて委員長のくろも教室に入ってきた。


「全員席に着け」