陰キャの俺が席替えでS級美少女に囲まれたら秘密の関係が始まった。

二章「秘密を知って動き出す」 ①

 ──翌日。


「んん……? もう、朝か」


 俺はカーテンから差し込む朝日で目が覚めた。

 ふう、今日はかなしばりにわなかったのでこくはしないだろう。

 それにしても昨日はとんでもない一日だったな。

 昨日は席えで、クラスカーストトップの美少女三人に囲まれたり、美少女グループのデカパイ担当・やまあいの過去まで知ってしまったりと散々だったからな。

 やまはただのデカパイ美少女だと思っていたが……まさかあんなに苦労していたとは。

 人は見かけで判断してはいけないってことか。


「ちょっとりようー! 早く朝ご飯食べないと姉ちゃんがあんたの分も食べちゃうよー」

「はいはい」


 姉にかされて俺は朝食へ向かうのだった。


☆☆


 ゆうな朝食を済ませてから高校にやってきた俺は、自分の席に座ってバッグからラノベを取り出す。

 昨日やまのおかげで買えた念願の『おぱ吸い』しよせき版。

 しよせき版はどこまでエロびようしやがあるのか非常に楽しみだな。


「ったく、なんであんなオタクが……」

「だよな、席えした意味ねーよ」

「あいつオタクだし二次元にしか興味ないだろ? ほんとわってしいよなぁ」


 俺が一人でラノベを読もうとしていたら、どこからかしつに満ちたかげぐちが聞こえてきた。

 どうやらクラスメイトの男子がわざと俺に聞こえるように言っているようだな。

 はぁ……こうなるからあの美少女三人と近い席になるのはめいわくなんだよ。

 そりゃばくにゆう美女とダウナーギャルとくろかみせいに囲まれてる俺の席は、他の男子にとってはすいぜんものかもしれない。

 しかし、オタクいんキャの俺にとっては最悪の席だ。

 百歩ゆずってやまデカパイを性的に見ていたことは認めるが、そもそも俺はあの三人と親しい関係になりたいとはあまり思っていない。

 下手にあの美少女たちにかんしようしたら、俺のへいおんな高校生活が失われるからだ。

 さて、周りのそうおんは無視してラノベにもどるとしよう。

 ほうほう……やっぱ主人公が女性ぼうけんしやたちのおっぱい吸ってチートスキルうばいまくるシーンは圧巻だな。エロさ100点。シコ●ティも100点。うん満点合格だ。

 なんて考えながら鼻の下をばしていると、俺の席の前にひとかげが……ん?


「……あんた、たしかいずみだっけ」


 ラノベをじっくり読んでいると、いつの間にか目の前にいちがいた。

 ……は? いち!?

 制服のブレザーを着くずしてみぎかたのワイシャツだけしゆつさせながら、かたにバッグをぶら下げて持つダウナーギャル。

 うすピンク色のわく的なくちびるこうたくのあるネイルと、相変わらず目立つ明るいくりいろかみ


「あんたの名前はいずみなのかって、聞いてんの」

「え、あ、はっ、はいっ」

「……っ」

「あの、いち……?」


 いちは俺の手元にあるライトノベルに目を向けると、ジトッと目を細めた。

 な、なんだなんだ?


「……覚えたから」


 いちはボソッとつぶやくと、俺のひだりどなりにある自分の席に座る。

 お、覚えた……って、どういう意味だ!?

 よくヤンキーが言ってる『お前の顔覚えたからな?』みたいなヤツか?

 やべぇ……さっそくいちからきらわれてるじゃねえか。

 やはりオタクにやさしいギャルは存在しない。

 ただやまはまぁ……オタクにやさしいギャルというよりだれにもやさしいばくにゆうギャルみたいなものだから例外だな。

 ん? そういややまといえば……俺、何か忘れているような…………あっ。

 そうだ。今日の昼はやまいつしよにランチだった。


「おはよーー? あっ」


 いちに朝のあいさつをしたやまは、次に俺の方を見ると、何も言わずに俺の方へ右目でウインクしてくる。


「ちょいあい、なんでウインクしたん?」

「あ、いや、なんとなく? 今日もあいわいいっしょ?」


 あせり気味にやま

 お、おいおいおいおい! なんか裏で付き合ってるカップルみたいじゃねえか!

 もしも俺が、かんちがいんキャオタクだったらいつしゆんちていたが……ふっ、全然だいじようだ。心臓のどうが激しくなるくらいで済んだな。

 ったく、この調子だとランチはもっとやばいことが待ってそうだな……。


☆☆


「カツカレー特盛! ルーだくだくで!」


 4限しゆうりよう後に昼休みに入り、昨日わした約束通り、やまと学食に来た俺は全くえんりよのないやまにカツカレー特盛(1000円)をおごらされていた。

 約束をしてしまった以上、俺は文句を言わない。というか言えない。

 いくらオタクいんキャな俺でも男としてのプライドがあるんだ。

 というか、うちの学食のカツカレー特盛ってかなりの量だと思うが。

 そう思った矢先、受け取り口から出てきた特盛のカツカレーは、大盛の白米に8切れの分厚いカツと、こうばしいカレーがあふれるスレスレまで注がれていた。

 見た目からしてかなりボリューミーで、見てるだけで腹がいっぱいになる。

 今日は俺(残金的にも)おにぎり1個でいいや……。

 俺とやまおのおの昼食を持って二人席に向かい合って座った。

 やまあいとランチ。こんなイベントが起きるなんて、過去の自分に言っても信じないだろう。

 こうやってやまと向かい合うのは昨日以来2回目だが、何度見てもやまの顔面へん値は東大合格レベルだし、胸に関してはハーバード首席レベルだ(断定)。

 それにいんキャの俺は、女子とのランチなんて中学の給食以来だ。

 とにかくきんちようがヤバい……。

 食事のマナーにはより一層気をつかわねばならぬ。


「今日はおごってくれてあんがとね? あと、結構高めのメニューたのんでごめんね?」

「別に、昨日のお礼だから……」

りようはおにぎり1個でいいの?」

「俺、少食なんで」


 残金的におにぎり1個でまんしなければならないんだが、それは言わないでおこう。


りようってりちだね」

りち? 俺が?」